【技術士試験】ホームズの推理:ホームズは試験前夜に推理しない(前編)

前日・当日に実力を落とさない行動術

プロローグ:試験前夜、ワトソンは祈り始めた

坂戸市ベイカー街221B

試験前夜の部屋には、奇妙な緊張が漂っていた。
机の上には、技術士試験の問題集、過去問、白書のコピー、模擬答案、赤ペンの添削結果が山のように積まれている。

ワトソン博士は、その山を前にして頭を抱えていた。

ワトソン
「ホームズ、いよいよ明日だ。だが、まだ不安だ。国土強靱化も、DXも、アセットマネジメントも、カーボンニュートラルも、流域治水も、全部もう一度見直した方がいいだろうか」

シャーロック・ホームズ
「やめたまえ、ワトソン君」

ワトソン
「しかし、明日出るかもしれない」

ホームズ
「明日出るかもしれないものを、前夜にすべて追いかけることは不可能だ。君がいまやろうとしているのは推理ではない。不安の処理である」

ワトソン
「不安の処理……。たしかにそうかもしれない。では、もう祈るしかないのか。日本には『人事を尽くして天命を待つ』という言葉がある。英語にも似た表現があるだろう。たとえば、“Do your best and let fate take its course.” や “Man proposes, God disposes.” だ。最善を尽くしたら、あとは神や運命に委ねる、ということだな」

ホームズ
「ワトソン君、君が祈るのは自由だ。だが、私に神を持ち出さないでくれたまえ。私は神に答案の採点を委ねる趣味はない」

ワトソン
「相変わらずだな、ホームズ」

ホームズ
「私ならこう言う。制御できるものを制御し、制御できないものは切り離す。試験前夜に必要なのは信仰ではない。行動の整理だ」

ワトソン
「では、『人事を尽くして天命を待つ』を、君ならどう言い換える?」

ホームズ
「『準備できることは済ませ、結果への執着で判断力を乱すな』だ」

ワトソン
「詩情はないが、実に君らしい」

ホームズ
「詩情で合格する試験ではない。試験前日に必要なのは、新しい推理ではない。明日、持っている力を落とさずに出すことだ」

第1章:試験前夜に新しい推理をしてはいけない

ホームズ
「まず、試験前夜にやってはいけないことを明確にしよう」

ワトソン
「やってはいけないこと?」

ホームズ
「第1に、新しい論点を追わないことだ」

試験前夜に、新しい白書、新しいキーワード、新しい想定問題を追いかける受験生がいる。
気持ちは分かる。
知らないことが出たらどうしよう。
準備していないテーマが出たらどうしよう。
そう思うと、机の上にある資料をもう一度開きたくなる。

しかし、前夜に新しい知識を入れることには、危険がある。

第1に、記憶が浅い。
第2に、答案の軸がぶれる。
第3に、睡眠時間が削られる。
第4に、不安が増える。
第5に、本番で準備した言葉を無理に使いたくなる。

ワトソン
「知識を入れるほど安心するのではないか?」

ホームズ
「一時的には安心する。だが、本番では逆効果になることがある。覚えたばかりの言葉は、使いたくなる。すると、問題文よりも自分の暗記を優先してしまう」

たとえば、問題文は「老朽化施設の維持管理における課題」を問うている。
しかし、前夜に生成AIの記事を読んだ受験生は、答案に無理に生成AIを入れる。

【悪い例】
老朽化施設の維持管理では、生成AIを活用して業務を効率化することが重要である。AIにより点検、診断、補修を高度化し、関係者と連携して推進する。

ホームズ
「これは、問題文に答えているようで答えていない。何の点検情報を使うのか。AIの出力を誰が確認するのか。誤判定リスクをどう抑えるのか。そこがない」

【改善例】
老朽化施設の維持管理では、点検結果を補修優先順位に反映できる仕組みを構築することが課題である。点検結果、健全度、利用者数、代替路の有無を施設台帳に整理し、リスクの高い施設から補修対象を選定する。AI等を用いる場合でも、出力結果は担当技術者が現地状況と照合し、誤判定を防ぐ。

ワトソン
「前夜に覚えた言葉より、問題文に合わせた構成が重要なのだな」

ホームズ
「その通りだ。試験前夜にするべきことは、知識を増やすことではない。明日使う判断手順を整えることだ」

第2章:前夜に確認するのは、知識ではなく型である

ワトソン
「では、前夜に何を確認すればよい?」

ホームズ
「型だ。答案の型、問題文の読み方、最後の見直し手順である」

前夜に確認すべきことは多くない。
むしろ、少ない方がよい。

たとえば、次の4つで十分である。

1 問題文を読むときは、対象、立場、制約、設問要求を拾う。
2 課題は、解決できる粒度にする。
3 解決策は、何を、どうするまで書く。
4 リスク、評価、倫理を最後の飾りにしない。

ホームズ
「この4つを確認しておけば、知らないテーマが出ても大きく崩れにくい」

ワトソン
「たしかに、個別テーマを覚えるより、本番で使える」

ホームズ
「そうだ。試験前夜は、武器を増やす時間ではない。武器の持ち方を確認する時間だ」

ワトソン
「武器の持ち方?」

ホームズ
「課題の書き方なら、こうだ」

【課題の型】
〇〇を△△できる仕組みを構築することが課題である。
理由は、□□の制約により、従来方法では対応できないためである。

【解決策の型】
〇〇について、△△の情報を収集・整理する。
その結果を基に、□□を判断する。
具体策として、◇◇を実施する。

【リスクの型】
一方で、〇〇により△△が生じるリスクがある。
対策として、事前に□□を確認し、◇◇により発生または影響を抑える。

【評価の型】
実施後は、〇〇、△△を指標として効果を確認する。
その結果を計画や手順に反映し、必要に応じて見直す。

【倫理の型】
〇〇を進める場合でも、公衆の安全・福利を優先する。
そのため、△△を確認し、必要に応じて□□を見直す。

ホームズ
「前夜は、これを眺める程度でよい。新しい答案を一から書く必要はない」

ワトソン
「一から書くのは駄目か?」

ホームズ
「駄目とは言わない。しかし、前夜に重い論文を書いて自信を失うくらいなら、過去の答案の見出しだけを確認した方がよい」

第3章:持ち物確認は、最も実務的なリスクマネジメントである

ワトソン
「試験前夜に、勉強以外でやるべきことは?」

ホームズ
「持ち物確認だ。これは立派なリスクマネジメントである」

ワトソン
「リスクマネジメント?」

ホームズ
「受験票を忘れる。筆記具が足りない。時計がない。会場までの経路を確認していない。昼食が合わず体調を崩す。こうしたリスクは、前夜に低減できる」

確認すべきものは、次の通りである。

受験票。
本人確認書類。
筆記具。
予備の筆記具。(定規も)
消しゴム。
時計。
昼食。
飲み物。
常備薬。
上着。
会場までの経路。
集合時刻。
乗換時間。
天候。
ブドウ糖。

ワトソン
「当たり前のことばかりだな」

ホームズ
「当たり前のことを当たり前に行う者が、本番で崩れにくい。技術士試験は、特別な才能を競うだけの試験ではない。制約条件下で安定して成果を出す試験でもある」

ワトソン
「持ち物確認も、答案と同じで段取りなのだな」

ホームズ
「その通りだ。前夜にできるリスク低減策を、当日の朝に残してはいけない」

第4章:睡眠を削るのは、最後の自滅である

ワトソン
「だが、前夜にもう少し勉強したい気持ちは残る」

ホームズ
「それが最大の罠だ。睡眠を削るな」

試験前夜に睡眠を削ると、翌日の読解力、集中力、判断力が落ちる。
技術士試験では、問題文を読み解き、条件を整理し、論理的に答案を構成する必要がある。
つまり、単純な暗記再生ではない。

ワトソン
「知識を増やしても、判断力が落ちれば意味がない」

ホームズ
「そうだ。試験前夜の徹夜は、推理力を自分で鈍らせる行為である」

試験本番で必要なのは、完璧な記憶ではない。
問題文を読む力。
設問要求を外さない力。
課題と解決策を対応させる力。
リスクと評価と倫理を最後までつなぐ力。

これらは、疲労に弱い。

【前夜にやるべき行動】
重い勉強はしない。
持ち物をまとめる。
会場までの経路を確認する。
軽く答案の型を見る。
入浴や軽いストレッチで体を緩める。
就寝時刻を決める。
眠れなくても横になる。

ワトソン
「眠れなかったらどうする?」

ホームズ
「眠れないことに焦る必要はない。横になって目を閉じ、体を休めるだけでもよい。『眠らなければならない』と自分を追い詰める方が悪い」

ワトソン
「前夜は、推理ではなく整備の日か」

ホームズ
「その通りだ。名探偵も、事件の前夜に無駄な推理で自分を消耗させることはない。必要な資料を確認し、道具を整え、眠る」

前編のまとめ:前日は、答案力を増やす日ではなく、落とさない日である

ワトソン
「前編で分かった。試験前日は、勉強を積み増す日ではないのだな」

ホームズ
「そうだ。前日は、実力を上げる日ではなく、実力を落とさない日である」

試験前日にやるべきことは、次の通りである。

新しい論点を追わない。
答案の型を軽く確認する。
持ち物を整える。
会場までの経路を確認する。
睡眠を削らない。
結果への不安で判断力を乱さない。

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がある。
英語では “Do your best and let fate take its course.” という表現が近い。
あるいは “Man proposes, God disposes.” という言い方もある。

だが、ホームズは神に委ねない。
彼は、神ではなく証拠を見る。

ホームズ
「私ならこう言う。やるべきことを終えたら、あとは結果への執着を切り離せ。明日の答案に必要なのは祈りではない。冷静な観察である」

ワトソン
「君らしいな」

ホームズ
「人事を尽くすとは、最後まで不安に振り回されることではない。制御できることをやり切ることだ。天命を待つとは、制御できない結果を、今夜の自分に背負わせないことだ」

ワトソン
「つまり、前夜にできる最善は、明日の自分を壊さないことか」

ホームズ
「その通りだ」

(後編へ続く)

私(匠)は『日本シャーロック・ホームズ・クラブ』の正式会員です。
「日本シャーロック・ホームズ・クラブ(JSHC)」は、1977年に設立された日本最大級のシャーロック・ホームズ愛好家(シャーロキアン)の親睦団体です。全国に約700名の会員を擁し、専門的な研究からファンの交流まで幅広い活動を行っています。

【主な活動と特徴】
・イベントの開催: 毎年春と秋の「全国大会」のほか、東京や軽井沢でのセミナー、月例会などを開催しています。
・出版物の発行: 機関誌『ホームズの世界』や研究書の出版、関連事典の制作協力などを行っています。
・入会のしやすさ: 論文の提出義務などはなく、ホームズを愛する気持ちがあれば誰でも気軽に参加できるウェルカムな雰囲気のクラブです。

この記事を書いた人

匠 習作

代表:匠 習作(たくみ しゅうさく・本名は菊地孝仁)
開講10年の歴史/総受講者数650名以上/web授業の先駆者

皆さん、こんにちは!「ロックオン講座」主宰の匠習作です。
HPをご覧いただきありがとうございます。
技術士二次試験は“論理的な思考能力”を鍛えて挑む必要がありますので
無事一次試験を突破された方でも、難しいなと感じる方が多くいらっしゃると思います。

とはいえ、働きながら十分な勉強時間を確保することは非常に大変なことです。
私自身、新卒から23年間医療機器メーカー勤務の会社員をしながら、懸命に勉強をしていた一人です。
この実体験を活かして、技術士試験の合格を目指す方々をサポートし、合格へと導きたい。少しでも役立つヒントや情報を提供したい。そう考えたことが本講座の始まりです。

■当講座のポイント
・質問回数無制限
zoomまたはchatwork(メールも可)にて、いつでも何度でも受け付けます。
・スピード添削
提出後概ね1日以内、ご本人が書いたことを忘れないうちにお返しすることができます。
論述の上達には添削が不可欠です。ここをしっかりこなせるかが合格への肝になります。
・開校当初からのweb授業とオリジナルテキスト
70を超える動画や200を超えるPDF資料、過去問12年分の解説集等々を提供します。
検索しやすいように整理され、自由にダウンロードして参照することができます。
・イチから教える“論作文”
私は自分が受験したとき大手講座で「技術士の解答ではない」と一言いわれ、どう改善すればよいか分からず困った経験があります。最初に書いた解答でした。
当講座では、主語と述語の関係から論理の展開まで、丁寧に細かく解説しますのでご安心ください。また、良いところは良いと褒めるようにしています。

■こんな方におすすめ
・仕事があるので対面授業には通えない、web授業でマイペースに勉強がしたい方
・とはいえ、続けられるかが不安、定期的にオンライン授業も受けたい方
・モチベーションを保つため、資格後のキャリアについても考えていきたい方
・論作文に苦手意識のある方
・他社の講座が合わずドロップアウトした方

Web授業×zoomライブ講座×24h質問対応にて、あなたをサポートします。

2013年に技術士講座を開講し、今年で10年目になりました。
総受講者数は600名を超え、多くの方が技術士試験に合格し、各分野で活躍されています。
各分野のテクノロジー産業のスペシャリストであり、産業分野において最高峰の資格といえる「技術士資格」は皆さんのキャリアにおいて大きな力となり、令和を生きるための強い武器となるでしょう。
長い歴史と実績のある、当社「ロックオン講座」を受講してみませんか?
初回zoom相談はいつでも無料です。是非お声掛けください。

匠習作のYouTubeチャンネルは、以下です。
https://www.youtube.com/channel/UCrbmFXXZvrb1a-nbQm-MOig

カテゴリー