【技術士試験】ホームズの推理:技術士二次試験にはどう挑めばよいのか?

―勉強時間・過去問・論文対策を一本の学習計画につなげる

~坂戸市、ベイカー街221B。前回の続きホームズの机には、一本の線が引かれていた~

11月 → 7月

ワトソンはその線を見ながら言った。

ワトソン博士

「ホームズ、技術士二次試験が何を試しているのかは分かった。

では、次は勉強法だな。

過去問を解く。

参考書を読む。

模範解答を覚える。

毎日2時間勉強する。

そんなところだろう?」

ホームズはパイプを置いた。

シャーロック・ホームズ

「君はまた、順番を間違えようとしている」

ワトソン

「またかい?」

ホームズ

「勉強法とは、試験が要求する能力を身につけるための手段だ。

手段を先に決めるのではない。

ゴールから逆算するんだよ」

技術士二次試験の勉強では、情報を集めすぎる人が多い。

参考書を読む。

白書を読む。

キーワードを集める。

模範解答を読む。

もちろん、どれも必要になる。

しかし、それらをバラバラに行っても、必ずしも答案を書く力にはならない。

必要なのは、

「試験日に何ができればよいのか」から逆算して、学習全体を組み立てること

である。

1.技術士二次試験の勉強は「知識」と「答案」を分けてはいけない

技術士二次試験では、専門知識が必要である。

しかし、前編で見たように、専門知識だけでは合格答案にならない。

だから、

「まず知識を完璧にして、それから論文を書こう」

という勉強法には問題がある。

知識を完璧にしてから答案を書こうとすると、いつまでたっても答案練習を始められないからである。

ワトソン

「確かに、知らないことはいくらでも出てくるな」

ホームズ

「そうだ。知識には終点がない。しかし試験日には終点がある」

そこで必要なのが、

インプットとアウトプットを並行させること

である。

例えば過去問を一題読む。

まず自分なりに課題を考える。

解決策を考える。

その途中で知識が足りないことに気づく。

そこで調べる。

調べた知識を使って骨子を修正する。

この流れなら、

「何のために調べるのか」

が明確になる。

知識収集が目的ではなく、

答案を作るために必要な知識を集める

という学習になる。

2.最初にやるべきなのは「過去問を解くこと」ではない

技術士試験対策と聞くと、

「まず過去問を解きましょう」

と言われることが多い。

しかし、私は少し違う。

最初に行うべきなのは、

過去問を分析すること

である。

いきなり1800字を書く必要はない。

まず問題文を見る。

何について聞いているか。

何個答える必要があるか。

観点は必要か。

課題なのか、問題点なのか。

解決策はいくつ必要か。

リスクまで求められているか。

関係者調整まで必要か。

こうして設問を分解する。

これは非常に重要である。

例えば、

「3つの課題を抽出せよ」

と書いてあるなら3つ必要になる。

「最も重要なものを1つ選べ」

とあるなら、3つのうち1つを選ばなければならない。

「複数の解決策を示せ」

なら、1案だけでは設問要求を満たさない。

ホームズ

「問題文は試験委員から渡された証拠品だ。

読み飛ばしてはいけない」

過去問の目的は、

「昔の問題を覚えること」

ではない。

出題者がどのような思考を求めているのかを読むこと

である。

3.過去問は何年分やればよいのか

ワトソン

「では過去問は何年分見ればいい?」

この質問もよくある。

しかし、単純に、

「5年分」

「10年分」

と年数だけで決める必要はない。

まず直近の数年分を重点的に見る。

理由は、出題形式や評価される能力、社会的背景が時代とともに変化するからである。

特に令和8年度からは、改訂されたコンピテンシーが適用されている。

したがって、古い問題から勉強を始めるより、

現在の試験に近い問題から構造を理解する

方が合理的である。

そのうえで過去へさかのぼる。

すると、

繰り返し出ているテーマ。

形を変えて問われているテーマ。

時代とともに増えているテーマ。

が見えてくる。

大切なのは問題数ではない。

過去問から何を読み取ったか

である。

4.模範解答は「覚えるもの」ではない

ワトソンが一冊の答案集を取り出した。

ワトソン

「それなら、模範解答を何本か暗記しておけば安心じゃないか?」

ホームズはすぐに答えた。

ホームズ

「それは危険だね」

模範解答やA評価答案は有用である。

しかし、その使い方を間違えると逆効果になる。

技術士二次試験では、同じテーマでも設問条件が変わる。

例えば、

人口減少。

DX。

カーボンニュートラル。

防災。

人材不足。

こうしたテーマは繰り返し現れる。

しかし、

「課題を問う」

のか、

「解決策を問う」

のか、

「リスクを問う」

のか、

「関係者調整を問う」

のかで答案は変わる。

だから、

「人口減少ならこの答案」

と丸暗記すると危険である。

模範解答から学ぶべきなのは、

何を書いたかより、なぜその構成になっているか

である。

例えば、

課題と解決策が対応しているか。

最重要課題の選定理由は妥当か。

解決策に具体性があるか。

リスクは解決策から新たに生じるものになっているか。

文章量の配分は適切か。

こうした構造を見る。

ホームズ

「模範解答は答えではない。

優れた答案を書く人の思考を観察する資料だ」

5.答案を書く前に「骨子」を作る

技術士二次試験対策で重要になるのが、

骨子

である。

骨子とは、答案を書く前に、

何を書くか。

どの順番で書くか。

を整理した設計図である。

例えば課題を3つ求められているなら、

観点。

課題。

課題の説明。

を整理する。

最重要課題を決める。

その課題への解決策を複数考える。

リスクを考える。

必要なら倫理や持続可能性まで確認する。

ここまで整理してから文章にする。

骨子を作らず、いきなり答案を書き始めると、

途中で論理が変わる。

同じ内容を繰り返す。

課題と解決策がずれる。

後半の字数が足りなくなる。

といった問題が起こりやすい。

ワトソン

「つまり、書く前に推理を終わらせる?」

ホームズ

「少なくとも筋道は決めておくべきだね。

書きながら考えていては、本番では時間が足りない」

6.「観点」と「課題」を混同しない

骨子を作るとき、特に注意したいのが、

観点と課題の違い

である。

観点は、

「どの方向から問題を見るか」

である。

例えば、

人材の観点。

維持管理の観点。

防災の観点。

環境の観点。

これらはまだ抽象的で、そのままでは解決できない。

一方、課題は、

技術的に取り組むべき具体的な事項

である。

例えば、

「人材の観点から、少人数でも安定して維持管理できる体制を構築すること」

なら具体的な課題になる。

この区別は重要である。

観点をそのまま課題として書くと、

解決策がぼやける。

課題が具体的なら、解決策も具体的にできる。

そして、

課題。

解決策。

効果。

リスク。

という論理がつながる。

7.答案練習は「たくさん書けばよい」わけではない

ワトソン

「それなら毎日一本ずつ答案を書けばいいのか?」

ホームズ

「ただ書くだけなら、同じ間違いを繰り返すだけだ」

答案練習で重要なのは、

書く → 評価する → 修正する

という循環である。

例えば一本書いた。

すると、

課題が抽象的だった。

解決策が課題に対応していなかった。

専門用語を並べすぎた。

理由が弱かった。

設問(3)が短くなった。

といった問題が見つかる。

そこで次の答案では、

課題を具体化する。

解決策の因果関係を明確にする。

文字配分を変える。

この改善が必要になる。

同じレベルの答案を20本書くより、

一本ごとに弱点を修正しながら10本書く方が効果的な場合もある。

だから答案練習では、

本数より改善回数

を見る。

8.技術士二次試験の勉強時間は「時間」だけで考えない

ここで多くの受験者が気になる問題が出てくる。

どれくらい勉強すれば合格できるのか。

以前の記事でも扱ったが、

「500時間あれば合格」

「600時間必要」

と一律に決めることはできない。

実務経験。

専門知識。

文章力。

過去の受験経験。

選択科目。

によって必要時間は変わる。

だから私は、

総時間だけではなく、

その時間で何を完成させたか

を見ることを勧めたい。

例えば、

今週12時間勉強した。

だけでは分からない。

それより、

過去問を3題分析した。

骨子を5本作った。

答案を2本書いた。

添削された答案を2本修正した。

という方が、進捗を把握しやすい。

ホームズ

「時間は投入した資源だ。

成果ではない」

9.11月から7月までを一つの工程として考える

技術士二次試験対策では、学習期間を工程として考えると分かりやすい。

例えば前年11月から始めるなら、

11~12月:試験を知る

試験制度。

コンピテンシー。

過去問。

出題傾向。

自分の答案能力。

まず現在地を確認する。

1~3月:考える力を作る

頻出テーマを調べる。

課題を考える。

解決策を考える。

骨子を作る。

この時期は、知識収集と骨子作成を組み合わせる。

4~5月:答案を書く

ここから文章化を本格化する。

時間を掛けてもよいので、

筋の通った答案を書く。

添削を受けたら修正する。

6月:時間を制限する

本番を意識する。

骨子作成時間。

答案作成時間。

見直し時間。

を確認する。

7月:実力を再現する

新しい知識を大量に増やすより、

これまで身につけたものを本番で出せるようにする。

この時期には、

本番形式で複数答案を書く練習

も重要になる。

10.本番対策では「9枚を書く力」も必要になる

技術士二次試験では、一般部門の場合、長時間にわたって記述を続ける。

知識だけでなく、

集中力。

時間配分。

手書きの持久力。

も必要になる。

以前、会場を借りて模擬試験を行っていたとき、試験後半になると明らかに疲れる受講者がいた。

そして答案を見ると、

前半は丁寧なのに後半になるほど説明が雑になる。

字が乱れる。

論理が飛ぶ。

設問への対応が弱くなる。

といった変化が見られることがあった。

本番では、

「知っていること」

と、

「最後まで書けること」

は別である。

だから試験直前には、

本番に近い時間と分量で答案を書く

必要がある。

11.独学で合格できるのか

知識が正しいかどうかだけでなく、

論理構成。

設問対応。

課題設定。

解決策とのつながり。

文章表現。

なども評価対象になる。

自分では、

「よく書けた」

と思っていても、

第三者には意図が伝わらないことがある。

これは珍しくない。

だから独学の場合でも、

過去の合格答案と比較する。

第三者に読んでもらう。

添削を受ける。

といった客観的な確認手段を持つ方がよい。

重要なのは、

通信講座を使うかどうかではない。

自分の答案を外から評価する仕組みを持っているか

である。

12.合格する人は「勉強法」を途中で修正する

技術士試験対策では、

最初に立てた計画どおりにすべて進むことは少ない。

仕事が忙しくなる。

予想以上に答案が書けない。

専門知識が不足している。

過去問分析に時間が掛かる。

そうしたことが起きる。

そこで必要なのが、

学習計画そのものを評価して修正すること

である。

例えば、

白書を読む時間が長すぎた。

なら減らす。

答案を書き始めるのが遅れた。

ならアウトプット比率を上げる。

毎週5本書く計画が続かない。

なら3本にして修正まで行う。

重要なのは、

計画を守ることではない。

合格できる状態に近づくこと

である。

ホームズ

「計画に人間を合わせる必要はない。

目的に合わせて計画を変えるんだ」

13.最後に必要なのは「自分の型」である

試験直前になったら、

新しい勉強法を探し続ける必要はない。

問題文を読む。

設問を分解する。

骨子を作る。

課題を確認する。

解決策との対応を見る。

文章を書く。

見直す。

この一連の流れを、

自分の型

にする。

例えば、

最初の10分で問題文を分析する。

次に骨子を作る。

各設問への文字数を決める。

その後に書く。

こうした手順を決めておけば、本番でも迷いにくい。

技術士二次試験は、

「本番で突然すばらしい答案を書く試験」

ではない。

練習してきた思考と手順を、本番でも再現する試験

である。

エピローグ:合格までの道は一本ではない

ワトソンは、ホームズが描いた11月から7月までの線を見つめた。

ワトソン

「最初は、勉強時間を増やせばいいと思っていた」

ホームズ

「多くの人がそう考える」

ワトソン

「でも実際には、

過去問を分析する。

骨子を作る。

答案を書く。

修正する。

そして本番形式で再現する。

全部がつながっているんだな」

ホームズ

「そうだ。

技術士二次試験の勉強は、知識を蓄積する作業ではない。

技術者として考え、それを答案として表現する能力を作る工程なのだ」

ワトソンは最後に尋ねた。

ワトソン

「では、合格に一番必要なものは何だ?」

ホームズは少し考えた。

そして答えた。

ホームズ

「自分の弱点を正しく観察することだろうね」

知識が足りないなら知識を補う。

課題設定が弱いなら骨子を作る。

文章が弱いなら答案を書く。

時間が足りないなら時間内練習をする。

すべての受験者に同じ勉強法が必要なのではない。

自分に不足している能力を見つけ、その能力を鍛える。

それが、技術士二次試験対策の基本である。

技術士二次試験対策は「一本の線」で考える

最後に整理しておこう。

技術士二次試験対策では、

試験を知る
→ 過去問を分析する
→ 必要な知識を整理する
→ 骨子を作る
→ 答案を書く
→ 評価・修正する
→ 時間内で再現する

という流れを作る。

そして個別の疑問については、

「技術士試験はなぜ難しいのか」

「技術士二次試験には何時間の勉強が必要なのか」

「過去問はどう使うのか」

「模範解答はどう読むのか」

「論文はどう書くのか」

「試験時間をどう配分するのか」

と、一つずつ掘り下げていけばよい。

このブログでも、それぞれを詳しく解説していく。

技術士二次試験は確かに簡単ではない。

しかし、

何を求められているのかを理解し、必要な能力を一つずつ鍛えていけば、対策できる試験である。

闇雲に勉強する必要はない。

試験日から逆算し、自分の弱点から逆算する。

そこから、合格への道筋が見えてくる。

【情報源】
公益社団法人日本技術士会「令和8年度技術士第二次試験 実施案内」
https://www.engineer.or.jp/c_topics/011/011631.html

公益社団法人日本技術士会「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)に関する質問」
https://www.engineer.or.jp/c_topics/011/011634.html

私(匠)は『日本シャーロック・ホームズ・クラブ』の正式会員です。
「日本シャーロック・ホームズ・クラブ(JSHC)」は、1977年に設立された日本最大級のシャーロック・ホームズ愛好家(シャーロキアン)の親睦団体です。全国に約700名の会員を擁し、専門的な研究からファンの交流まで幅広い活動を行っています。

【主な活動と特徴】
・イベントの開催: 毎年春と秋の「全国大会」のほか、東京や軽井沢でのセミナー、月例会などを開催しています。
・出版物の発行: 機関誌『ホームズの世界』や研究書の出版、関連事典の制作協力などを行っています。
・入会のしやすさ: 論文の提出義務などはなく、ホームズを愛する気持ちがあれば誰でも気軽に参加できるウェルカムな雰囲気のクラブです。

この記事を書いた人

匠 習作

代表:匠 習作(たくみ しゅうさく・本名は菊地孝仁)
開講10年の歴史/総受講者数650名以上/web授業の先駆者

皆さん、こんにちは!「ロックオン講座」主宰の匠習作です。
HPをご覧いただきありがとうございます。
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