目次
前日・当日に実力を落とさない行動術
プロローグ:試験当日の朝、ワトソンは答え合わせをしたくなる
坂戸市ベイカー街221Bの部屋で。
試験当日の朝。
ベイカー街221Bの窓の外には、まだ薄い朝の光が残っていた。
ワトソン博士は、鞄を持ち、落ち着かない様子で部屋を歩き回っている。
ワトソン
「ホームズ、受験票は入れた。筆記具もある。経路も確認した。だが、やはり不安だ。会場に着いたら、最後に白書の要点を見直すべきだろうか」
シャーロック・ホームズ
「見直すなら、答案の型だけにしたまえ」
ワトソン
「それだけでいいのか?」
ホームズ
「それだけでいい。試験当日の朝に新しい知識を入れると、問題文を読んだときに余計な雑音になる」
ワトソン
「雑音?」
ホームズ
「そうだ。覚えたばかりの用語が頭に残り、設問と関係なく使いたくなる。すると、問題文の証拠を見落とす」
ワトソン
「前にも聞いたな。事件現場を見ずに、過去の事件と同じだと思い込む」
ホームズ
「まさにそれだ。試験当日の朝に必要なのは、知識の追加ではない。観察力の維持である」
第1章:会場に早く着くのは、安心のためではなく余白のためである
ホームズ
「当日の最初の行動は、会場に早めに着くことだ」
ワトソン
「それは当然だな」
ホームズ
「当然のようで、実行できない者がいる。電車の遅延、道に迷う、受付場所が分からない、トイレが混む。こうした小さな乱れが、試験前の集中力を削る」
会場には、余裕を持って到着する。
ただし、早く着きすぎて疲れる必要はない。
到着後は、席、トイレ、時計の位置、室温、机の状態を確認する。
ワトソン
「室温や机まで確認するのか?」
ホームズ
「もちろんだ。寒ければ上着を使う。机ががたつくなら、試験前に対処する。小さな不快感は、試験中に大きくなる」
試験本番は、精神力だけで乗り切るものではない。
外乱を減らすことが重要である。
【当日朝の確認】
会場到着。
トイレの場所。
座席。
時計。
筆記具。
受験票。
上着。
飲み物。
机の状態。
周囲の騒音。
ホームズ
「これらは地味だ。だが、地味な確認が本番の安定につながる」
ワトソン
「技術士の現場管理と同じだな」
ホームズ
「そうだ。現場も試験も、段取りで事故を減らす」
第2章:試験開始直前に見るものは、知識ではなく手順である
ワトソン
「試験開始直前には何を見ればいい?」
ホームズ
「手順だ。問題文を読んだら何を見るか。答案をどう組むか。最後に何を確認するか。それだけでよい」
試験開始直前に確認する手順は、次の通りである。
1 問題文の対象を確認する。
2 立場を確認する。
3 制約条件を確認する。
4 設問要求を確認する。
5 数の指定を確認する。
6 答案構成を簡単にメモする。
7 課題、解決策、リスク、評価、倫理をつなげる。
ワトソン
「これは、前の記事の最初の10分と同じだな」
ホームズ
「そうだ。試験当日は、学んだことを増やす日ではない。学んだ手順を実行する日だ」
ワトソン
「開始前に、白書のキーワードを見るより、この手順を見た方がよいのか」
ホームズ
「その方がよい。キーワードは、問題文に合わなければ使えない。だが、手順はどの問題にも使える」
【開始直前の合言葉】
問題文を読む。
条件を拾う。
構成を決める。
設問に答える。
最後に見直す。
ホームズ
「これで十分だ」
第3章:休憩時間に答え合わせをしてはいけない
ワトソン
「試験が始まった後の注意点は?」
ホームズ
「休憩時間に答え合わせをしないことだ」
ワトソン
「なぜだ。気になるではないか」
ホームズ
「気になるから危険なのだ。終わった問題の答え合わせをしても、点数は上がらない。むしろ、次の科目の集中力を下げる」
試験中に避けるべき行動は、次の通りである。
終わった問題の正誤を調べる。
他の受験生と出来を話す。
SNSを見る。
掲示板を見る。
難しかった問題を引きずる。
昼休みに新しい論点を詰め込む。
ワトソン
「だが、他の受験生が『あの問題はこうだった』と話していたら気になる」
ホームズ
「聞かないことだ。試験会場の噂は、証拠能力が低い」
ワトソン
「証拠能力が低い?」
ホームズ
「そうだ。疲れた受験生の記憶、曖昧な問題文、断片的な知識。それらを聞いても、君の次の答案には役立たない。むしろ不安を増やすだけだ」
休憩時間にやるべきことは、単純でよい。
水分を取る。
軽く食べる。
トイレに行く。
目を休める。
次の科目の手順を確認する。
終わった問題を忘れる。
ホームズ
「試験中は、すでに終わった事件を追わない。次の事件現場に集中する」
ワトソン
「名探偵らしいな」
ホームズ
「探偵でなくても同じだ。次の答案に集中できる者が、最後まで崩れにくい」
第4章:本番で崩れそうになった時の戻り方
ワトソン
「それでも、本番で頭が真っ白になることはあるだろう」
ホームズ
「ある。問題は、真っ白になったことではない。そこから戻れるかだ」
本番で崩れそうになったときは、深く考えすぎない。
まず、問題文に戻る。
そして、次の4つを確認する。
何について問われているか。
どの立場で答えるか。
何をいくつ書くか。
最後に何を求められているか。
ワトソン
「問題文に戻るのか」
ホームズ
「そうだ。焦ったときほど、答案用紙ではなく問題文を見る。事件現場に戻るのだ」
たとえば、課題が思いつかない場合は、制約条件を見る。
人が足りない。
予算が足りない。
時間がない。
情報が分散している。
関係者が多い。
安全と効率が相反している。
環境と経済性が相反している。
これらは、課題の入口になる。
【戻り方の例】
人が足りない → 少人数でも品質を確保する体制が課題。
予算が足りない → 更新優先順位の明確化が課題。
情報が分散している → 情報を一元管理し判断に使う仕組みが課題。
関係者が多い → 合意形成と役割分担が課題。
安全と効率が相反する → 安全を優先しつつ施工方法を調整することが課題。
ホームズ
「困ったら、制約条件から課題を作る。これは実用的だ」
ワトソン
「白紙を避ける方法にもなるな」
ホームズ
「その通りだ。白紙は避ける。完璧でなくても、設問に沿って構成を作る」
第5章:試験当日に使うべき短いチェック
ホームズ
「試験当日は、長いチェックリストは使えない。短いものに限る」
ワトソン
「どのくらい短く?」
ホームズ
「次の7つでよい」
1 設問に答えているか。
2 課題は具体的か。
3 解決策は行動になっているか。
4 リスクは事故後対応だけになっていないか。
5 評価は指標と改善につながっているか。
6 倫理は公衆の安全・福利に接続しているか。
7 番号と見出しはずれていないか。
ワトソン
「これは前回の記事の7つの鑑識ポイントだな」
ホームズ
「そうだ。当日は新しいことを使わない。すでに決めたものを使う」
試験終了前の数分で、全文を完璧に直すことはできない。
だが、明らかな減点を減らすことはできる。
「課題」と書くべきところに背景だけを書いていないか。
「解決策」が一般論で終わっていないか。
「リスク」が事故後対応だけになっていないか。
「倫理」が最後の飾りになっていないか。
これだけを見るだけでも、答案は崩れにくくなる。
エピローグ:ホームズは試験前夜に推理しない
試験が終わった後、ワトソン博士はベイカー街に戻ってきた。
疲れてはいたが、表情は落ち着いていた。
ワトソン
「ホームズ、完璧ではなかった。だが、最後まで書けた。問題文に戻り、構成を作り、リスクと倫理まで書いた」
ホームズ
「それでよい。試験本番で完璧を求めすぎると、答案は崩れる。重要なのは、最後まで技術者としての判断を示すことだ」
ワトソン
「前夜に無理に勉強しなかったのがよかったのかもしれない」
ホームズ
「当然だ。試験前夜に推理を始める者は、当日に観察力を失う」
ワトソン
「人事を尽くして天命を待つ、か」
ホームズ
「君がそう言いたいなら止めない。だが、私の言葉ではこうだ。制御できることを制御し、制御できない結果を今の自分から切り離す」
ワトソン
「神ではなく、観察と論理か」
ホームズ
「その通りだ。私は神を持ち出さない。答案を救うのは祈りではなく、問題文を読む目と、論理を組み立てる手である」
ワトソン
「では、試験前夜にすべきことを一言で言うなら?」
ホームズ
「明日の自分を壊すな」
ワトソン
「当日にすべきことは?」
ホームズ
「問題文に戻れ」
ワトソン
「そして、終わった問題は?」
ホームズ
「忘れろ。次の答案に集中したまえ」
窓の外では、夜の街に静かな灯りがともっていた。
ワトソンは、机の上の問題集を閉じた。
そして、翌日のために鞄を整えた。
受験票。
筆記具。
時計。
昼食。
飲み物。
上着。
そして、短いチェックリスト。
それで十分だった。
ホームズ
「試験前夜に、名探偵は新しい推理をしない。事件当日に必要なのは、疲れ切った頭ではなく、冷静な観察力だ」
ワトソン
「明日の答案用紙が事件現場だな」
ホームズ
「そうだ。そして君は、すでに必要な道具を持っている」
まとめ:前日・当日に実力を落とさない行動術
試験前日は、実力を上げる日ではない。
実力を落とさない日である。
やるべきことは、次の通りである。
新しい論点を追わない。
答案の型を軽く確認する。
持ち物を整える。
会場までの経路を確認する。
睡眠を削らない。
当日は早めに会場へ行く。
休憩時間に答え合わせをしない。
本番で焦ったら問題文に戻る。
最後は短いチェックリストで見直す。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がある。
英語で言えば、“Do your best and let fate take its course.” が近い。
また、“Heaven helps those who help themselves.” という表現もある。
だが、ホームズなら神にも天にも頼らない。
彼はこう言う。
制御できることを制御せよ。
制御できないことに、判断力を奪わせるな。
試験前夜に必要なのは、祈りではない。
不安に負けて新しい知識を追いかけることでもない。
必要なのは、明日の自分を壊さないこと。
そして当日、問題文に戻ること。
技術士試験の答案は、最後まで冷静な技術者の判断を求めている。
だからこそ、前日と当日は、余計なことをしない勇気が必要である。

私(匠)は『日本シャーロック・ホームズ・クラブ』の正式会員です。
「日本シャーロック・ホームズ・クラブ(JSHC)」は、1977年に設立された日本最大級のシャーロック・ホームズ愛好家(シャーロキアン)の親睦団体です。全国に約700名の会員を擁し、専門的な研究からファンの交流まで幅広い活動を行っています。
【主な活動と特徴】
・イベントの開催: 毎年春と秋の「全国大会」のほか、東京や軽井沢でのセミナー、月例会などを開催しています。
・出版物の発行: 機関誌『ホームズの世界』や研究書の出版、関連事典の制作協力などを行っています。
・入会のしやすさ: 論文の提出義務などはなく、ホームズを愛する気持ちがあれば誰でも気軽に参加できるウェルカムな雰囲気のクラブです。








