【技術士試験】ホームズの書斎講義:理工系の文章術で合格を射抜く(前編)

~「書く前」に勝負は決まっている。試験委員という「読者」を攻略せよ~

プロローグ:ベイカー街に届いた「図解」のバイブル

~坂戸市、ベイカー街221B。ホームズは拡大鏡を置き、一冊の青い本を手に取った~

ワトソン博士
「ホームズ、また技術士試験の受験生から相談だよ。
『知識はある、現場経験も豊富だ。だが、試験の解答用紙を前にすると、どうしても文章が支離滅裂になり、時間が足りなくなる』と。
おまけに、図表を入れても良いとは言え、実際にはマスの制限や作図の時間を考えると、文章だけで勝負せざるを得ないのが現実だ。
この『福地健太郎氏の本』が役に立つと言うが、タイトルに『図解でわかる』とある。図が描けない受験生に、本当に意味があるのかい?」

シャーロック・ホームズ
(パイプをくゆらせながら、不敵に笑う)
「ワトソン君、君は相変わらず表層しか見ていないな。
この本の真価は『絵を描くこと』にあるのではない。『情報を構造化し、読み手の脳に最短距離で論理を叩き込むこと』にある。 図を描く時間がないからこそ、『図のように読める文章』を書く技術が必要なのだよ。
さあ、この『理工系のためのよい文章の書き方』という名著を解剖し、技術士試験を突破するための『戦略的記述法』を抽出してみようじゃないか」

第1章:試験委員という「読者」をプロファイリングせよ

ホームズ
「まず、著者の福地氏は冒頭で最も重要な問いを投げかけている」

【引用】
「文章は、書いただけでは完成しません。読者がそれを読み、内容を正しく理解したときに初めて、文章はその役割を果たしたことになります。したがって、よい文章を書くための第一歩は、『読者が誰か』を想定することです。」(福地健太郎『理工系のためのよい文章の書き方』より要約)

ワトソン
「読者……。技術士試験なら、採点をする試験委員だね」

ホームズ
「その通りだ。だがワトソン君、君は試験委員がどんな状況で君の解答を読むか想像したことがあるかい?
彼らは何百枚、何千枚という膨大な答案を、限られた時間で採点しなければならない。
疲労し、集中力が途切れかけた彼らが求めているのは、君の『文学的な表現』や『熱意』ではない。
『この受験者はコンピテンシー(資質能力)を備えているか?』という問いに対する、明確な証拠(エビデンス)だけなのだよ」

ワトソン
「つまり、読ませる努力を強いる文章は、その時点で『不合格』ということか」

ホームズ
「ご名答。試験委員という読者に『探させない』こと。
『ここに課題があります』『ここに解決策があります』『これがリスクへの対応です』。
読者の目線が止まることなく、スムーズに流れるように情報を配置する。これがこの本が説く『理工系の親切心』の本質だ」

第2章:図を描かずに「図解」する~構造化の魔術~

ワトソン
「ホームズ、受験生が一番悩んでいるのは『時間とスペース』だ。
図表を描けば分かりやすくなるのは分かっているが、試験会場で定規を振り回す余裕はない。文章だけでどうやって『図のように』見せるんだ?」

ホームズ
「福地氏は、よい文章の条件として『構造の明快さ』を挙げている。
図表のメリットは何だ? それは情報の『包含関係』や『因果関係』が一目で分かることだ。
これを文章で再現するには、『見出し(章立て)』と『箇条書き』の徹底的な活用に尽きる」

【引用】
「文章を構造化するとは、内容のまとまり(パラグラフ)ごとに役割を与え、それらを論理的な順序で並べることです。見出しをつけることは、読者に対して『今からこの話をしますよ』という地図を渡す行為なのです。」(福地健太郎『理工系のためのよい文章の書き方』より要約)

ワトソン
「なるほど。技術士試験の解答で、いきなり文章を書き始めるのではなく、
1.課題の抽出
(1)〇〇の観点からの課題
(2)△△の観点からの課題
……という風に、階層構造を作るわけだね」

ホームズ
「そうだ。これは単なるレイアウトの問題ではない。
『私は物事を構造的に把握し、整理する能力(問題解決・マネジメントのコンピテンシー)を持っている』という強烈なアピールになるのだ。
マス目の制限があるからこそ、接続詞でダラダラと繋ぐのではなく、短い見出しで情報を分断・整理する。
これが、図を描かずに『図解』された文章を書くための極意だ」

第3章:「アウトライン」こそが最短ルートである

ワトソン
「でもホームズ、制限時間は厳しい。構成を考えている暇があったら、一文字でも多く書き進めた方がいいんじゃないか?」

ホームズ
「(深くため息をつき)……ワトソン君、君は現場で設計図なしに建物を建てるのかい?
福地氏は、執筆時間の配分についてこう述べている」

【引用】
「書く作業の8割は、書く前の『準備』で決まります。アウトライン(骨子)を組み立てることに時間を割けば、実際の執筆で迷うことがなくなり、結果として全体の時間は短縮されます。文章の矛盾も防げます。」(福地健太郎『理工系のためのよい文章の書き方』より要約)

ホームズ
「技術士試験においても同じだ。最初の10分から15分、あるいはそれ以上を費やしてでも、問題用紙の余白に完璧なアウトラインを作るべきだ。
課題は何か? 解決策は? リスクは? 倫理的配慮は?
これらをコンピテンシーの評価項目にマッピングしながら配置する。
この『設計図』さえあれば、あとはマス目を埋めるだけの単純作業になる。
迷いながら書く文章は、必ず主述がねじれ、論理が飛躍する。それが一番のタイムロスなのだよ」

エピローグ(前編のまとめ):技術士の文章は「論理の結晶」

ワトソン
「分かってきたよ。この本は『絵の描き方』を教えているのではなく、『論理の組み立て方』を教えているんだね。
そして、その組み立てを見える化することが、試験委員への最大のサービスになるんだ」

ホームズ
「その通り。
前編の結論だ。技術士試験の答案は、君の頭の中にある『専門的学識』を、『構造化』というフィルターを通して、試験委員の脳へ転送するプロセスだ。

後編では、いよいよペンを動かす際の『記述のテクニック』に踏み込もう。
『正確・簡潔・明快』。
この理工系文章の三大原則を使い、いかにして『コンピテンシー』を文中に埋め込んでいくか。
その具体的な術(タクティクス)を伝授しようじゃないか」

(後編へ続く)

この記事を書いた人

匠 習作

代表:匠 習作(たくみ しゅうさく・本名は菊地孝仁)
開講10年の歴史/総受講者数650名以上/web授業の先駆者

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