技術士二次試験必須問題のテーマ「DX導入」で考えておくべきこと

DX導入

DX導入では、これが課題になる

令和4年の技術士二次試験では、様々な部門で「DX」導入を題意にした問題が出題されました。
何問か見てみましょう。

令和4年建設部門:Ⅰ-1

Ⅰ-1
我が国では,技術革新や 「新たな日常」 の実現など社会経済情勢の激しい変化に対応し、業務そのものや組織, プロセス、 組織文化・風土を変革し、 競争上の優位性を確立するデジタルトランスフォーメーション (DX) の推進を図ることが焦眉の急を要する問題となっており、 これはインフラ分野においても当てはまるものである。
加えて、 インフラ分野ではデジタル社会到来以前に形成された既存の制度 運用が存在する中で、 デジタル社会の新たなニーズに的確に対応した施策を一層進めていくことが求められている。
このような状況下, インフラへの国民理解を促進しつつ安全・安心で豊かな生活を実現するため、以下の問いに答えよ。

(1) 社会資本の効率的な整備、 維持管理及び利活用に向けてデジタルトランスフォーメーション (DX) を推進するに当たり、 技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、 それぞれの観点を明記したうえで、 課題の内容を示せ。

令和4年度:航空・宇宙部門:Ⅰ-1

Ⅰ-1
近年, 航空・宇宙業界においても、 DX (デジタルトランスフォーメーション) 化の動きが進んでおり、 サービスや運航管理のみならず, 航空宇宙機の開発, 設計にもディープラーニングを代表とするAI(人工知能) の導入が進められている。

(1) AIを航空宇宙システムに導入する際に、 技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、 それぞれの観点を明記したうえで、 課題の内容を示せ。

令和4年度:船舶・海洋部門:Ⅰ-1

Ⅰ-1
現代の産業や社会はDX (Digital Transformation; デジタル技術とビジネスモデルを用いてプロセスや人戦略・組織を変化させること)を必要不可欠の取組として推進している。
造船業においても、国際競争力を保持し、継続的に発展していくため、AI/IoT/ICTのデジタル技術を取り入れてDXを推進し、造船業を効率化するとともにDX時代に対応した産業に転換する必要がある。
このような状況の中、造船業にDXを導入する際の課題と解決策について以下の問いに答えよ。

(1) 造船業へのDXの導入に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

令和4年度:金属部門:Ⅰ-1

Ⅰ-1
2018年、 経済産業省より示されたDX (デジタルトランスフォーメーション) 施策は、近年発達が著しいデジタル技術の利用推進によって、 我が国の産業力の維持・強化に革命的な変化をもたらすことを目指している。
産業界におけるDX推進は, 新しいビジネスモデル構築等の経営戦略、 製品・サービスの向上による国際競争力の強化などに留まらず、人材有効活用を含む働き方改革まで,その適用範囲は多岐にわたる。上記の状況を踏まえて, 以下の問いに答えよ。

(1) 金属関連産業に携わる技術者としての立場で、 DX推進を図るための技術的な課題を多面的な観点から3つ抽出し、 それぞれの観点を明記したうえで、 課題の内容を示せ。

令和4年度:上下水道部門:Ⅰ-1

Ⅰ-1
近年,、デジタル化が進み, 国では2021年9月1日にデジタル庁が発足するなど,デジタルトランスフォーメーション (以下「DX」という。) 社会の構築として,あらゆる分野で検討が開始されている。
インフラを支える上下水道事業においても、 人口減少による料金、 使用料収入の減少、技術者の不足や老朽化施設の増加など様々な課題を抱える中で安定的に事業を継続させるため、今後、 DXの活用について検討が求められる。
このような状況を踏まえ, 下記の問いに答えよ。

(1) 上下水道事業に共通するDXに関する状況を踏まえ、 技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、 それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

他に、衛生工学や森林、経営工学でも、IT化、デジタル化がテーマの問題がりあります。
ただ、DXという言葉は入っていませんのでここには上げません。

それでも、1/4の部門で必須問題のテーマにDXを使っています。IT化やデジタル化を含めると9部門から出題されています。
私も問題を作りますから、分かるのですが、テーマ探しは苦労します。
試験委員の皆さんも、ご苦労されているのでしょう。

そもそもDXとは何か

DXとは何か

DXは、経済産業省が、提唱しているテーマです。
経済産業省ではDXの意味として 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」 と定義されています。
企業におけるデジタルツールの導入はDXとは言いません。
データ・デジタル技術は、変革のための「手段」とされています。

DX推進に必要な人材として、データ分析やAIの専門知識を持ったエンジニア、データサイエンティスト、コンサルタント、プロジェクトマネージャーなどが挙げられます。
しかし、これらの人材を確保することが容易ではなく、特に中小企業では課題となっています。このため、外部の専門家や企業と協業することが求められています。

さらに、DX推進においては、組織文化の変革も重要です。
従来の業務プロセスにとらわれず、柔軟な発想と行動力を持った人材の育成や、失敗を恐れずにチャレンジできる風土の醸成が必要です。これがないと正直、DXを組織に導入し推進するのは無理だと思います。
要するに、デジタル技術を使った、業務改革、組織改革がDXです。
大きな組織の場合、改革は常に難しいのです。
さらに、従来の部門間の垣根を越えたチームの編成や、社員の意識改革も必要です。

DX推進には、経営層の強いリーダーシップが必要不可欠(Ⅱ-2の問題なら、これを入れれば良いと思います)です。
経営戦略の見直しや情報システム部門との連携強化など、経営層の意思決定が迅速かつ正確に行われることが求められます。
総じて、DX推進には組織改革や新たな人材の確保、組織文化の変革、リーダーシップの発揮など、様々な課題があります。これらの課題を解決するためには、まずはDX導入の目的を明確にし、適切な戦略を策定し、その戦略を実行することが不可欠です。

リーダーシップ

DX導入で最大の課題は何か? 落とし穴の課題

どの分野でもDXを推進するには、システムやデータの統合が必要になると思います。
また、それが、大きな課題になると思います。

デジタル技術を取り入れていた分野ほど、難しい課題になると思います。
例えば、建設・土木分野と異なり、製造業は比較的早くから自動化・省人化を進めてきました。
ちょっとしたレベルの会社なら、基幹システムや設計から製造、検査までの工程を一覧できる、システムを持っています。
これを新たに導入するDXとどうやって統合するのか?
これは大きな課題です。
レガシィシステムは全部捨てて、新しいシステムに切り替えるという訳には行かないです。蓄積されたデータもあります。製造業ではありませんが、みずほ銀行は今でも、この問題に苦しんでいます。
実は、多くの解答を見ている私が、この課題を解答に見ることは少ないのです。
私は、SEの仕事を2年やりましたが、そのとき上記課題を痛感しました。
簡単に解決できないです。

建設や機械部門の受験者さんで、組織のシステムに携わる方は、少ないはずなので、これまでのシステムとどのように統合するのかということが、課題に見えないのでしょう。

「AIに学習させてデータを変換させれば良い」などとおっしゃる、馬鹿なコンサルタントがいましたが、そんなこと、現在のAIで絶対にできません。データは人間が取捨選択するしかないのです。

また、上でも書いたのですが、要するに業務改革を行うわけです。
ほとんどの社員、パート、アルバイトさんまでが、DX導入に反対すると思います。
やりたいのは、社長だけということもあり得ます。

その他に以下のような課題がありますが、上の2つに比べれば解決は簡単だと思います。
以下、思いつくまま課題を列挙します。ご自身の、解答に入れるときは、自分の分野と技術をよく考えて選択して下さい。

技術者のスキル不足や経験不足の課題(これは何にでも使える課題です)
中小の建設業では、技術者のスキル不足や経験不足が課題となることがあります。
DXを推進するためには、エンジニアやIT技術者、建設現場での専門知識を持った人材が必要ですが、中小の建設業では、そのような人材を確保することが難しいことがあります。

技術的な専門知識の欠如の課題
DXには、デジタル技術を利用した高度な技術的な知識が必要です。
しかし、中小の建設業では、そのような知識が不足していることがあります。そのため、DXを推進するためには、技術的な専門知識を持った専門家の支援を受ける必要があります。

導入コストの課題(これも皆さん解答に入れますね、よく見ます)
DXを推進するためには、デジタル技術を活用したシステムの導入が必要です。
しかし、システムの導入にはコストがかかります。
中小の建設業では、そのようなコストを負担することが難しい場合があります。
まあ、補助金などが解決策になるでしょう。

データの蓄積と分析方法の確立の課題
建設現場で生成されるデータの膨大な量を適切に管理し、分析するためのプラットフォームが整備されていないことがあります。そのため、DXを迅速に推進するためには、データの蓄積と分析方法の確立が必要です。

情報セキュリティの課題
DXを推進するためには、大量のデータを扱う必要があります。そのため、情報セキュリティの対策が重要となります。
しかし、中小の企業では、情報セキュリティの知識や対策が不足していることがあります。

およそ上記がDX導入の問題に対し、抽出できる課題です。

皆さんからの、提案や「こんな課題は?」という意見も聴かせてください。お待ちします。

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