技術士試験頻出テーマ「生産年齢人口の減少」の課題を抽出する

人手不足の課題

生産性向上だけが課題ではない、課題の抽出で間違えるとA評価にはならない

まず、2008年からは、日本の総人口が減っている。国連ならびに総務省が発表したデータを確認する。

人口のピークは2009年の1億2,817万7千人。
現在と言っても2021年だが、1億2,461万3千人と356万4千人減っている。
今度は、実際に働ける生産年齢人口を見てみよう、こちらは統計の取り方が変わった。(平成29年に変わっている)
変更があったところは、試験に出やすい、必ず理解して欲しい。

平成28年時点生産年齢人口の推移

令和4年時点生産年齢人口の推移

何が変わったのか、一目で分かると思う。新しく、65歳~74歳という生産年齢人口の予備軍が作られたのだ。

高齢者の就業率推移

ご覧の通り、2021年時点で65歳以上も13.4%は働いている。また、この人数は自営業を含んでいない。

ここまでを予備知識として、分野別の課題を挙げてみよう、試験解答でそのまま使えるはずだから、コピーして考えて使って欲しい。

建設・土木分野における人手不足解消のために解決すべき課題としては以下が抽出できる

労働環境の改善
建設・土木分野においては、長時間労働や過重労働など、労働環境の問題が指摘されている。そのため、労働環境の改善によって、働きやすい職場づくりを実現し、人手不足を解消することが必要だ。

教育・訓練プログラムの充実
建設・土木分野に特化した教育・訓練プログラムを充実させることによって、専門技術を持った人材を確保することができる。建設・土木分野は経験工学とも呼ばれている。優れたエンジニアの育成には時間が掛かる。

ロボットや自動化の導入
建設・土木分野においても、ロボットや自動化の導入が進んでいる。積極的な導入によって、人手不足に対する対策になることが期待できる。

働き方の改革
建設・土木分野においても、働き方改革が求められている。労働時間の短縮や柔軟な働き方の導入によって、人手不足に対する対策になることが期待できる。

女性や高齢者、障がい者など多様な人材の活用
建設・土木分野においても、女性や高齢者、障がい者など、多様な人材の活用が求められている。これらの人材を採用することによって、人手不足の解消につながるとともに、多様性を尊重した職場づくりが可能となり得る。

デジタル技術の活用
建設・土木分野においても、デジタル技術の活用が求められている。例えば、DX、ドローンや3Dプリンターを活用することで、建設現場の効率化や作業員の負担軽減が期待できる。

コンストラクション・マネジメントの導入
コンストラクション・マネジメントとは、建設工事における計画・設計・施工・管理を総合的に管理する方法論である。欧米を中心に普しているが日本ではそれほど、導入されていない。この手法を導入することによって、建設プロセス全体を効率化し、人手不足の解消につなげることができると言われている。

外国人技能実習制度の活用
海外からの技能実習生を受け入れることにより、人手不足の解消や技術・文化交流の促進が期待できる。

外国人技能実習制度にはリスクもある

労働環境の悪化
技能実習生の受け入れに伴い、労働環境が悪化する可能性がある。劣悪な作業環境や過重労働など、労働基準法に反する事態が起こることがある。

安い人件費
安く働く人が大量に入ってくることで、人手不足の中で賃金や給料が低く抑えられる可能性がある。

人権侵害
技能実習生が人権侵害を受ける可能性がある。例えば、違法な賃金の支払いや労働時間の違反、性的な暴力やいじめなどが報告されている。海外からは、現代版の奴隷制度とも揶揄されている。

技能実習生の違法就労
技能実習生が、技能実習制度で規定された期間を超えて、違法に就労する可能性がある。また、実習先企業が技能実習生に違法に賃金を支払ったり、適切な労働条件を提供しなかった場合、企業に対する罰則があることも考慮する必要がある。

人材流出のリスク
技能実習生が母国に帰国した後に、技術やノウハウを持ち帰り、競合他社に流出する可能性がある。

以上のように、外国人技能実習制度の活用によるリスクは存在する。これらのリスクを防ぐためには、適切な制度・ルールを設けることや、実習生の労働条件の改善、監督・監視体制の強化などが必要だ。また、実習生に対する適切な教育・指導を行うことで、技能実習制度の適正な利用を促進することが重要となる。

なんでも生産性向上という訳には行かない

建設・土木分野における人手不足は、生産性向上で一部補うことは可能だ。しかし完全に補うことは困難である。建設・土木分野においては、現場作業には人手が必要不可欠であり、作業員の数が足りないと、作業スケジュールの遅れや作業品質の低下など、生産性に悪影響を与えることになる。また、機械やロボットによる自動化や省力化にも限界があり、人手が必要な作業も多数存在する。

ただし、生産性を向上させることで、人手不足に対する対策になる場合もある。例えば、デジタル技術を活用して、作業プロセスの見直しや効率化を図ることで、同じ作業員でもより多くの作業をこなすことができる。また、労働環境の改善や働き方の改革によって、作業員の負担を減らすことで、生産性の向上が期待できる。

さらに、IT機器を使いこなして進める現代版の土木作業は、若い人にも魅力的なものと映る。土木建設分野で働きたいと考える若者が増えるだろう。

総じて言えることは、人手不足を解消するためには、単純な作業の自動化や省力化だけはできないということだ。新しい技術の導入や働き方の改革、教育・訓練プログラムの充実など、多岐にわたる対策が必要であると言うことだ。

インフラの管理

建設土木の分野で人手不足がテーマの問題が出たら、上記を思い出して解答を考えることがあ評価への近道だろう。

製造業の分野で人手不足に関する問題が出た場合は?

製造業では建設現場よりも遙かに早くから、省人化・自動化に取り組んできた。そのため、建設土木分野よりも人手不足が深刻化していない。とは言え、出題の可能性はある、しっかり準備しよう。

日本の製造業における人手不足解消のために、以下のような課題が抽出できる

教育・訓練プログラムの充実
製造業に特化した教育・訓練プログラムを充実させることによって、専門技術を持った人材を確保することができる。また、若手の育成・定着にもつながる。
製造業の場合、中小企業は、その教育システムが弱い、これは中小の大きな課題になっている。

働き方の改革
労働環境の改善や労働時間の短縮、柔軟な働き方の導入によって、働きやすい職場づくりを実現することが必要である。しかし、これは建設・土木分野に比べれば大きな課題とはいえないだろう。

外国人技能実習制度の活用
海外からの技能実習生を受け入れることにより、人手不足の解消や技術・文化交流の促進が期待できる。これも、建設・土木分野と同じリスクを抱えている。

ロボットや自動化の導入
製造業においても、ロボットや自動化の導入が進んでいる。今後のさらなる積極的な導入によって、人手不足に対する対策になることが期待できる。これは、建設・土木分野と異なり、自動化できる範囲が広い。検査や物流、などでも積極的に導入できる。

イノベーションの促進
新たな技術や製品を開発することによって、市場競争力を高めることができる。今後イノベーションを促進するための環境整備や投資を行うことが必要となってる。しかし、残念ながら長期のデフレ化によって、製造業の設備投資は減少している。設備投資の減少そのものが製造業の課題とも言える。

人材の多様化
女性や高齢者、障がい者など、多様な人材の活用が求められている。これらの人材を採用することによって、人手不足の解消につながるとともに、多様性を尊重した職場づくりが可能だ。

海外展開の拡大
製造業が海外に進出することにより、人手不足の解消や海外市場の開拓が期待できる。ただし、言語・文化の違いや、ビジネス環境の変化に対応するために、十分な調査やリスクマネジメントが必要だ。また、今般の、ロシアVSウクライナ戦争を見ても、グローバリズムには一定のリスクがあることが判明している。グローバル化は、世界が平和であることが、前提である。これは、今後大きなリスクとなる。

ロシアとウクライナの紛争は、製造業のグローバル化にとって脅威となる可能性がある

まず、原材料や部品の調達に影響を与える可能性がある
ロシアは、世界的に重要なエネルギーや鉱物資源を保有している。一方、ウクライナは、鉄鋼や機械部品などの重要な製造資材を生産している。紛争が激化あるいは、長期化すれば、原材料や部品の調達に影響を与えることが懸念されるだろう。

製造工場の停止や損傷が発生する可能性がある
紛争が激化・長期化すれば、製造工場の停止や損傷が発生する可能性がある。これにより、製造業の生産活動が停滞することが懸念される。

輸出入に影響を与える可能性がある
ロシアやウクライナからの輸出入が停滞したり、制限されたりすることにより、製造業のグローバルな取引に影響を与えることが懸念される。

技術の流出が防止できない可能性がある
紛争が激化すれば、関連する技術が海外に流出する可能性がある。これにより、製造業の技術競争力が低下することが懸念される。

以上のように、ロシアとウクライナの紛争は、製造業のグローバル化にとって脅威となる可能性がある。製造業企業は、リスクマネジメントを行い、原材料や部品の調達先の多様化や製造工場の分散、技術の保護など、リスクに対する対策を講じることが求められる。個人的には、グローバリズムの終わりと思っているが、試験の解答にそれを書く必要はない。

まとめ

まとめ

以上、建設・土木分野と製造業に関して、人手不足をテーマにした問題が出題された場合の課題を抽出してみた。
もちろん、他にもあると思う。そのまま真似するよりも自分の頭で考え、解決策も書いてみて欲しい。
自分でしっくりする課題がよい課題である。

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