技術士二次試験 合格できる筆記試験論文の書き方の基本

筆記試験の勉強

技術士二次試験 合格できる筆記試験論文の書き方の基本の中の基本

技術士試験を受けようと思った場合に、心配になることのひとつに、二次試験の記述論文があるはずです。

受験資格要件があり、かつレベルの高い人たちが受験する試験にも関わらず、二次試験の合格率は10%程度となっていて、合格することが非常に難しくなっています。

しかし、裏を返せば、「合格できる記述論文を書ければ合格できる可能性がアップする」ということになります。

そして、合格できる記述論文を書くためには、いくつかの注意点やテクニックがあるのです。

今回は、合格できる「技術士二次試験・記述論文の書き方」についてご紹介していきたいと思います。

技術士試験の論文とは

技術士二次試験の記述論文の書き方について学ぶ前に、そもそも「論文」とはどのようなものなのか、復習してみましょう。

学問の研究成果などのテーマについて、論理的な手法で書き記した文章のことで、問いと根拠ある答えの形式になっていることが必要です。

「序論・本論・結論」の形式で構成する必要があり、感想文やエッセイのように自由な形式で書いてはいけません。

文学的表現や美文は必要なく、理論と実証のみを書かなければならないものです。

論文を書く大前提

技術士二次試験対策の記述論文の書き方を学んでいく前に、忘れてはならない大前提があります。

① 読み手のことを考えて書く

感想文や意見文とは違って、技術士二次試験の記述論文は、自分の考えや思いを記述するためのものではありません。

自分が書きたいと思うような文章や、自分の考えを押し付けるような文章を書いても、合格点はもらえません。

読んでくれる相手(採点者)のことをしっかりと考えて書くことが、必要不可欠になります。

「問い」という形で読み手が質問している内容に対して、読み手が要求している意図をしっかりと読み取り、それに対する内容を的確にわかり易く書くことが重要になります。

② 端的過ぎるくらいに書く

読み手である採点者は、限られた時間の中で、膨大な量の記述論文に目を通して採点をしています。

ですから、一つひとつの記述論文をじっくりと読み込んで味わい、想像力を働かせて受験生の想いを汲み取ってくれることはありません。

その記述論文の中に、「求める解答が書いてあるのか」「重要キーワードが書いてあるのか」「必要な図表が適切に書かれているのか」を確認するだけです。

ですから、求める解答・重要キーワード・必要な図表を、これでもかと採点者にわかり易く端的にアピールする必要があるのです。

これらのことを常に頭に置きながら、記述論文のテクニックを身に付け、論文を記述する能力を磨いていく必要があるのです。

合格できる記述論文の書き方

では、合格できる記述論文の書き方について、具体的に説明していきたいと思います。

書き方① 問題文をよく読む

これを聞いて驚く人が多いと思いますが、このような「基本中の基本」であることができていない人が非常に多いことが現実です。

合格できる記述論文を書くためには、まず「問題文で何が聞かれているか」について正しく把握することが必要です。

前文と設問に何が書いたあるかを把握しないで書き始めてしまうと、採点者が求める解答になるはずがないので、合格できる論文にはなりません。

このようなことにならないためには、思い込みや固定概念を捨てて、客観的に問題文を読み込むことが必要になります。

書き方② 題意を正確に掴む

問題文をよく読んで「問題文で何が聞かれているか」について正しく把握できたら、次に行うことが「題意を正確に掴む」ことです。

問題文で聞かれていることについて把握できても、その内容に関して自分が書きたいことを書いてしまう人が多いのです。

しかし、「どんな解答を求めてこの問題を出題してきているのか?」という問いを持って、その答えとなるような記述内容を考えることが必要になります。

記述論文は自分勝手に書いてよいものではなく、採点者の題意を正確に掴んだ「解答・重要キーワード・必要な図表」を書く試験なのです。

書き方③ 問題文の指示通りに答えを記述する

どのような試験でも、問題文には解答方法についての指示が必ずあります。

令和2年の機械部門の二次試験を例に、詳しく見てみましょう。

R02
機械部門必須:Ⅰ-1
我が国において,短期的には労働力人口は著しく低下しないと考えられているものの,女性や高齢者の労働参加率の向上もいずれ頭打ちになり,長期的には少子高齢化によって労働力人口が大幅に減少すると考えられる。
一方で,「ものづくり」から「コトづくり」への変革に合わせた雇用の柔軟化・流動化の促進一億総活躍社会の実現といった働き方の見直しが進められている。このような社会状況の中で,実際の設計・開発,製造・生産,保守・メンテナンス現場におけるものづくりの技術伝承については,現場で実務を通して実施されている研修と座学研修・集合研修をいかに組み合わせるか等の,単なる方法論の議論だけでなく,より広い視点に立った大きな変革が求められている。
このような社会状況を考慮して,機械技術者の立場から次の各問いに答えよ。

(1)今後のものづくりにおける技術伝承に関して,機械技術全般にわたる技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)上記すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と新たに生じる懸念事項への対応策を示せ。
(4)業務遂行において必要な要件 ・留意点を機械技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1) ~抽出し分析せよ。
(2) ~解決策を示せ。
(3) ~対応策を示せ。
(4) ~述べよ。

このように設問ごとに違った種類の解答方法の指示がありますが、(1)だけでも解答方法に関してたくさんの条件があります。

・「今後のものづくりにおける技術伝承について」書く
・「機械技術全般にわたる技術者としての立場」から書く
・多面的な観点から課題を抽出する
・抽出した課題を分析する

これらをしっかりと理解したうえで、問題文の指示通りに答えを記述することが必要になってきます。

書き方④ 記述内容の論理的整合性を重視する

「整合性」は「筋が通っていて矛盾がないさま」という意味で、「論理的整合性」とは、論理的に反証しても矛盾が生じないくらい整っている様子であるということです。

つじつまが合わない文章は、論文の意味をなることができません。

合格できる記述論文には、しっかりと筋道を立てて考えても一切の矛盾が生じないくらい整っている内容が書かれていることが求められます。

そして、論理的整合性のある文章を書くためには、「理屈で考えること」や「普遍性のある根拠を探すこと」が必要になります。

さらに、文法や文章の構成をしっかりと理解することも必要であり、これらは自己流で論文を書くことでは身に付かず、的確な指導を受けることが必要になってきます。

以上に挙げてきた内容のように、筆記論文には決まった書き方があり、これらをマスターすることで、合格できる解答を書くことができます。

そして、最も大切になってくることが、「論文とは意見と根拠の塊であり、根拠の無い意見は解答にならない」ということです。

根拠は反論できない事実であり、わかり易くて説得力のある文章を書く上で、必要不可欠なものなのです。

技術士試験記述論文を書く際のポイント

さらに、技術士二次試験の筆記論文を書く際には、気をつけるべくポイントがいくつかあります。

ポイント① 「だ・である調」で統一する

分っている方には当然ですが、「です・ます調」の解答は割とよく見ます。

技術士の筆記試験での記述は、「です・ます調」ではなく、「だ・である調」に統一して書きましょう。

技術士筆記試験は論文なので、「です・ます調」の表記では説得力が弱くなってしまいます。

さらに、「です・ます調」にしてしまうと無駄に字数が多くなり、字数稼ぎをしているような印象を与えてしまう場合もあります。

また、途中まで「だ・である調」で書いていたのに、気づいたら「です・ます調」になっていたということもよくあるパターンです。

日頃から、文章を書く際には「だ・である調」に統一するようにして、書き方を習慣づけておきましょう。

ポイント② 語尾には断定した表現を使う

論文にあいまいな表現を使ってしまうと、説得力がなくなってしまうので、断定できる表現を使うようにしましょう。

×「~だと思う。」→○「~である。」「~なのである。」
×「~だと考える。」「~だと思われる」→○「~だといえる。」
×「~なのではないだろうか。」→「~が必要である。」

「~だと思う。」はダメだと分かっている人は多いとは思いますが、「~だと考える。」「~だと思われる。」も主観と捉えられてしまうので、使用しないようにしましょう。

ポイント③ 装飾を使いこなす

技術士二次試験ではカラーペンの使用が認められていないので、色付けによる強調ができません。

ですから、文章番号やアンダーラインなどの装飾を着けることによって、強調したい部分やキーワードを採点者にアピールすることができます。

・段落の表題の前には文章番号をつける
・重要キーワードはアンダーラインを引く(当然ですが定規で)

このように自分自身でルールを作っておくと、見た目もよく、強調したいポイントがわかり易い解答になります。

しかし、装飾を使いすぎるとごちゃごちゃした印象になってしまうので、本当に大切な部分にだけ使用するようにしましょう。

ポイント④ カタカナ表記に注意する

媒体によって異なりますが、一般的に読まれている雑誌や広告などでは、「コンピューター」や「データー」といった長音を付けた表記が多いような印象を受けます。

しかし、JIS(日本工業規格)では、アルファベットの文字をカタカナで表記する際、「2音の用語は長音符号を付け、3音以上の用語の場合は長音符号を省く」といった規則を定めています。

そのため、「コンピュータ」や「データ」などのように、長音を付けずに表記することが正しいと言えます。

また、カタカナ語表記で間違える人が多い言葉に「シュミレーション」や「コミニュケーション」があります。

正しくは、「シミュレーション」「コミュニケーション」ですので、間違えないようにしましょう。

ポイント⑤ 読みやすい字で書きましょう

技術士二次試験の筆記試験は、600字詰め原稿用紙を午前中に3枚分、午後には6枚書く試験なので、書いているうちに字が乱雑になってしまいがちです。

しかし、あくまでも試験であり、読んでくれる採点者の方を意識した字を書かなければなりません。

美しくきれいな字が書ければベストですが、時間制限もあるので、最低限読みやすい字を書くように心がけましょう。

さらに、使う文房具もこだわり、腕の疲労を最小限に抑えるようにしましょう。

日頃、シャープペンや鉛筆で文章を書く機会が少ないかと思います。

しかし、当日に新品を使用するのではなく、日頃から試験当日に使用する筆記具を使用して、手になじませておきましょう。

まとめ

技術士二次試験の記述論文にはテクニックが必要になるので、練習を繰り返して、合格点に達することができる解答論文を目指しましょう。

しかし、自分で書いた文章のどこに問題があるのかということは、自分自身では気づきにくいものです。

自分の書いた論文を第三者に見せ、客観的に添削してもらうことを繰り返すと、効率よくブラッシュアップすることができます。

今現在、参考書やネットを使った独学に不安を感じているのでしたら、早めに通信講座の活用に切り替えることをおすすめします。

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