【技術士試験】ホームズの論文指南:「問い」を制する者は試験を制す(前編)

~4大バイブルから読み解く合格論文の設計図と論理構築~

プロローグ:ベイカー街に積まれた4冊のバイブル
~坂戸市ベイカー街221B。ワトソンのデスクには原稿用紙と分厚い本が積まれている~

ワトソン博士
「ううむ……書けない。技術士試験の必須科目の過去問を解こうとしているんだが、頭の中にある知識が、どうにも原稿用紙の上でまとまらないんだ。
そこで、世間で名著と呼ばれる論文指導書を4冊も買ってきた。『吉岡のなるほど小論文講義10』『論文・レポートの基本』『論文の教室』、それに『理科系の作文技術』だ。
しかし、これを全部読んでから書き始めるのでは、試験本番に間に合わないぞ!」

シャーロック・ホームズ
(安楽椅子から立ち上がり、ワトソンの机上の本を愛おしそうに撫でる)
「素晴らしいセレクションだ、ワトソン君。君の買い物のセンスだけは褒めてやろう。
これら4冊は、単なる学生向けのレポート指導書ではない。知的生産活動を行うすべてのプロフェッショナルに向けた『論理的思考のバイブル』だ。
君が技術士試験で書こうとしている論文も、本質的にはこれらの本が説く『アカデミック・ライティング』のルールに完全に支配されている。
時間がない君のために、私がこの4冊から『技術士試験に直結するエッセンス』だけを抽出し、合格のための設計図を授けようじゃないか」

「作文」を捨て、「論文」の型に徹せよ

ワトソン
「設計図だと? 私は現場での熱い思いや、苦労した経験をありのままに書きたいんだ。その情熱が採点官の胸を打つはずだろう?」

ホームズ
「その甘い考えが、君を不合格の沼に引きずり込むのだよ。
吉岡友治氏は著書『吉岡のなるほど小論文講義10』の中で、文章には明確に2種類あると喝破している」

【引用】
「文章には、『主観を素直に書く作文』と『一定のパターンに従って自分の主張を貫く小論文』の2種類がある。」(吉岡友治『吉岡のなるほど小論文講義10』より要約)

ホームズ
「技術士試験の解答用紙を前にしたとき、絶対にやってはいけないのが『思いついた順に書く(作文)』ことだ。
採点官が読みたいのは、君のポエムや苦労話ではない。専門家としての『論理的な提案』だ。
さらに、戸田山和久氏は『新版 論文の教室』でこう言い切っている」

【引用】
「論文とは論文の形をした文章のことだ。」(戸田山和久『新版 論文の教室』より)

ワトソン
「論文の形をした文章……つまり、『型』があるということか?」

ホームズ
「その通りだ。まずはその『型』を徹底的に模倣することが、合格への最短ルートになる。
技術士論文における絶対的な『型』とは何か?
それは、問題文で示された『課題(問い)』に対し、専門的学識に基づいた『解決策(答え)』を提示し、その妥当性とリスクへの対応を『論証』する構造だ。
この骨格(型)を持たない文章は、いくら専門用語を散りばめようとも、ただの『作文』としてB評価以下に分類されるのだよ」

「問い」を正確に定義し、土俵を固める

「型が重要なのは分かった。では、問題文のキーワードを拾って、知っている知識を順番に当てはめていけばいいんだな?」

ホームズ
「まだ分かっていないようだな。君の解答はいつも、焦点がぼやけている。
試験問題は、解決すべき『課題(問い)』の形で与えられる。ここで勝負を分けるのは、いきなり答えを書くことではない。『問いに使われている言葉を自分なりに定義し、議論の範囲(土俵)を絞り込むこと』だ。
石黒圭氏は『論文・レポートの基本』において、こう警鐘を鳴らしている」

【引用】
「問いの言葉を定義する」ことの重要性。(石黒圭『論文・レポートの基本』より要約)

ホームズ
「例えば、試験で『建設業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進』について問われたとする。
三流の受験生は、DXを単なる『IT化』や『ペーパーレス化』と捉えて浅い解決策を書く。
しかし一流の技術士は、冒頭で『本論文におけるDXとは、単なるツールの導入ではなく、データとデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織文化を根本から変革することと定義する』と宣言する。
こうやって議論の土俵を定義することで、その後に続く解決策の論理的整合性が劇的に高まるのだ」

ワトソン
「なるほど、言葉の定義が論理の出発点になるのか」

ホームズ
「さらに吉岡氏は、論文の存在意義について本質的な指摘をしている」

【引用】
「意見が求められる状況とは『疑問、対立、矛盾』がある場合である。」(吉岡友治『吉岡のなるほど小論文講義10』より要約)

ホームズ
「技術士試験において、単なる知識の陳列は求められていない。
『コストを下げれば品質が落ちる』『工期を急げば安全が脅かされる』。こうした『相反する制約(トレードオフ)』という矛盾した状況下で、エンジニアとしていかに最善の最適解を導き出すか。
この『対立関係の打破』こそが、質の高い『問いへの応答』を生み出す源泉なのだよ」

「ポイント・ファースト」で採点者の期待に応える

ワトソン
「よし、問いの定義とトレードオフの提示だな。
それから、いよいよ私の持論を展開するぞ。日本の伝統的な『起承転結』の美学に乗っ取って、読者(採点官)をハラハラさせながら、最後の最後に結論をバーン!と提示するんだ!」

ホームズ
「(頭を抱えて)ワトソン君、君は採点官を推理小説の読者と勘違いしているのかね?
技術士試験の採点官は、休日に何百枚という膨大な答案を読まされている超多忙な専門家だ。彼らに『ハラハラ』など求めてはいけない。
一読して『この受験生は分かっている』と思わせるには、結論を先に述べる『ポイント・ファースト』の徹底が絶対条件だ。吉岡氏の言葉を聞きたまえ」

【引用】
「まずポイントを明確にして段落の頭に出す。説明・例示などのサポートを後から補足する。この形式をポイント・ファーストと言って、論文では一番わかりやすい構成だと言われている。」(吉岡友治『吉岡のなるほど小論文講義10』より)

ホームズ
「理系論文の神様である木下是雄氏も、『理科系の作文技術』の中でこれを『重点先行主義』と呼び、激しく推奨している。
技術士論文において、各設問(大項目)の冒頭は、必ず結論から始めなければならない。
『最大の技術的課題は、〇〇による△△の低下である。』
『最も重要な解決策として、〇〇技術の導入を提案する。』
このように、冒頭の1行目で言い切るのだ。そうすれば採点官は、『なるほど、この方針で論を展開するのだな』と安心し、迷うことなく君の論旨を最後まで追うことができる」

「根拠」こそが技術者の誠実さの証

ワトソン
「結論を先に書く。分かったよ。
『解決策として、AIの全面的な導入を提案する。これからの時代はAIが必要不可欠であり、みんながハッピーになれるからだ!』……どうだい、ポイント・ファーストだぞ!」

ホームズ
「呆れて言葉も出ないよ。それは単なる居酒屋の『思い込み』だ。
自分の主張(解決策)を述べるだけでは、技術士の論文とは呼べない。それを強固に支える『根拠(論拠)』がなければ、砂上の楼閣に過ぎない。
戸田山氏は、論文の定義を極めてシンプルに公式化している」

【引用】
「論文とは『問い+答え+論証』である。」
「論証とは、自分の答えを論理的に支持する証拠を効果的に配列したものだ。」
「どんなに感情を揺さぶることであったとしても、われわれの理性を動かすものでなければ、根拠にはならない。」(戸田山和久『新版 論文の教室』より)

ワトソン
「理性を動かす根拠……。つまり、『私が頑張ります』といった情緒的な訴えは無意味ということか」

ホームズ
「その通り。技術士試験では、個人的な感想や精神論は一切不要、というより減点対象だ。
代わりに、主張を支えるために以下の『3要素』をセットで提示することが求められる」

理由(Why): 「なぜその解決策が有効なのか」の論理的・工学的な説明。

説明(How): 理由をさらに具体化し、現場レベルでどう機能するかを分かりやすく言い換えたもの。

例示・データ(Evidence): 現実の事象、最新の白書データ、過去の成功事例などを用いた客観的証拠。

ホームズ
「吉岡氏はこうも言っている」

【引用】
「理屈より事実の方がずっと迫力がある。」(吉岡友治『吉岡のなるほど小論文講義10』より)

ホームズ
「『AIを導入すれば効率が上がります』という理屈(思い込み)だけでは弱い。
『〇〇工法においてAI画像診断を導入した実証実験では、目視検査と比較して検査時間を40%短縮し、見落とし率を0.5%以下に抑えることに成功している』という『事実(データ)』を提示するのだ。
例示とデータを入れることで、『机上の空論』を回避し、君の提案の説得力を格段に高めることができる。これこそが、技術者としての『誠実さ』の証明なのだよ」

ワトソン
「なるほど……。問いを定義し、結論を先に述べ、それを客観的なデータで武装する。これが合格論文の『設計図』というわけだな!」

ホームズ
「ご名答。これで君も、ようやくスタートラインに立つことができた。
しかし、設計図が完璧でも、それを作る『材料(言葉)』が腐っていれば、家は簡単に倒壊してしまう。
後編では、この設計図を『プロの文章』に引き上げるための具体的な表現技術と、合格圏内に踏みとどまるための『べからず集』について、徹底的に指導しよう」

(後編へ続く)

参考文献

  • 吉岡友治著『吉岡のなるほど小論文講義10』
  • 石黒圭著『論文・レポートの基本』
  • 戸田山和久著『新版 論文の教室』
  • 木下是雄著『理科系の作文技術』

この記事を書いた人

匠 習作

代表:匠 習作(たくみ しゅうさく・本名は菊地孝仁)
開講10年の歴史/総受講者数650名以上/web授業の先駆者

皆さん、こんにちは!「ロックオン講座」主宰の匠習作です。
HPをご覧いただきありがとうございます。
技術士二次試験は“論理的な思考能力”を鍛えて挑む必要がありますので
無事一次試験を突破された方でも、難しいなと感じる方が多くいらっしゃると思います。

とはいえ、働きながら十分な勉強時間を確保することは非常に大変なことです。
私自身、新卒から23年間医療機器メーカー勤務の会社員をしながら、懸命に勉強をしていた一人です。
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70を超える動画や200を超えるPDF資料、過去問12年分の解説集等々を提供します。
検索しやすいように整理され、自由にダウンロードして参照することができます。
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