必須問題では事実誤認に注意して

筆記試験対策

技術士二次試験の必須問題では事実誤認に注意して

試験問題にも間違って記載されていますから、ある程度は仕方がないと思います。
しかし、やはりデータを確認して正確に解答することを目指すべきです。
何の話か?

令和2年の建設部門必須問題を見てみましょう。

我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。
また,高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。

次は、令和元年の土質Ⅲの問題です。

高度成長期に構築した社会資本ストックの老朽化に対して、限られた事業費の中で効果的・効率的な維持管理が求められる。
このため、橋梁等の構造物においては、予防保全に向けて定期的な点検を重要視した維持管理が行われている。

二つの問題で言っていることは、高度経済成長期のインフラ施設新設のことです。
しかし、これは事実ではありません。

高度経済成長期とは

そもそも、高度経済成長期とは、何時でしょうか?

日本経済が飛躍的に成長を遂げた時期は、1954年(昭和29年)12月から1973年11月までの約19年間です。
高度成長期に作られたものなら、1年後に100%築後50年です。

「建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり」というのが間違いです。
高度経済成長期に作られた施設・インフラならすでに、そのほとんどが築後50年を過ぎています。


これは、国土交通白書に記載された間違いだったのですが、技術士試験の作問委員が、事実確認をせずにそのまま転載したために起きた間違いです。
まあ、仕方がありません。

でも例えば、平成30年の鋼構造コンクリートⅢの問題では以下のような問題文になっています。

我が国では、高度経済成長期以降に集中的に整備された社会資本の老朽化が進んでおり、重大な事故リスクの顕在化や、維持修繕費の急激な高まりが懸念される。

日本のインフラは高度経済成長期以降に作られています。
つまり、上記の説明は正確です。

もちろん、高度経済成長期には、1964年に開催された東京オリンピックや1970年に開催された大阪万博などによる特需などがありました。
また、東海道新幹線や東名高速道路といった大都市間の高速交通網も整備されていったのです。

しかし、国全体で見ると


ここにある通りです。
社会資本の多くは高度経済成長以降に整備されています。
(上記の資料は内閣府の資料)

グラフを見ると、ちょうど高度経済成長期の終わり、1973年頃から急激に上昇しているのが分ります。
ですから、たとえ問題文に「高度経済成長期に大量に作られた」とあっても、解答に書く必要はありません。
もちろん、「問題文は間違いである」などと、書くのは厳禁です。
問題文の間違いを指摘する必要はありません。
さりげなく、静かに「高度経済成長期以降に作られた」と解答しましょう。

他にもある間違い

技術士試験の問題文には、ときどき明らかな間違いが書いてあります。
例えば、「熊本地震」

熊本地震は、震度7を観測する地震が4月14日夜および4月16日未明に発生したほか、最大震度が6強の地震が2回、6弱の地震が3回発生しています。
(気象庁震度階級では最も大きい)

これほどの地震に対して、発生した年(平成28年)の衛生工学:建設環境:Ⅲ-1には以下のような問題文がありました。

Ⅲ- 1
2011年3月に起きた東日本大大震災、今年5月に起きた熊本地震において、都心部や市町村における様々な用途の建物が、甚大な被害を受けた。

上記は、言い逃れできない明らかな間違いです。
まあ、試験の解答に影響はしない部分ですから、責めるつもりはありません。
いずれにしても、受験者さんは、問題文の間違いに合わせる必要はありません。
問題文に対し否定的なことを書く必要もありません。

もっときわどい問題文もあった

最後は、試験の解答に影響しそうなミスです。
令和元年の経営工学必須問題です。

Ⅰ-1
(上は略)
情報化、自動化、知能化を用いて高い効率で稼働するスマート工場においてもJIT方式と同じような問題が発生することが予想され、解決策としてJIT方式
とMRP(Material Requirement Planning)方式の融合が挙げられている。
上記のような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)必要なときに、必要なものが、必要な量だけ供給できるようにするために、技術者としての立場でJIT方式とMRP方式における問題を多面的な観点から抽出して分析せよ。
(2)そのうち,最も重要と考える問題をlつ挙げ,その問題の解決策を複数示せ。

この問題文では「課題」ではなく、「問題」抽出せよとなっています。
しかし、その下にあるⅠ-2の問題文では以下のように「課題」の抽出を求めています。

Ⅰ-2
(上は略)
あなたがエネルギー供給事業者として新規に再生可能エネルギーによる発電設備の事業計画を立案するに当たり、経営工学的な視点から以下の問いに答えよ。

(1)技術者としての立場で多面的な観点、から課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を 1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

問題と課題の説明をすると、上の問題文を挙げて、質問する方が多いです。
文脈からすれば、どう考えても、同じ意味で二つの言葉を使っています。
しかし、これは作問委員のミスです。
その証拠に、令和元年以降、同じような問題文はどの専門科目でも出題されていないからです。
令和元年から、択一試験がなくなり、必須問題は論文試験になりました。
おそらく、不慣れな作問委員が間違えて問題文を作ったのです。
試験が終わってから、「間違いでした」とは言えませんから、そのままになっています。
実は、私も電話で確認しています。
残念ですが、詳しいことは話せません。

技術士合格

正確なデータに基づいて、正しく解答してください。
それが、合格への道です。

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