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【技術士二次試験】ホームズの推理:もう一度、筆記試験に挑むあなたへ―不合格という結果を、次の一年の出発点に変える

第一章:11月の坂戸市ベイカー街221B

11月7日の朝。
坂戸市ベイカー街221Bは、いつもより静かだった。

三日前、令和8年度技術士第二次試験の筆記試験合格者が発表された。
日本技術士会は、11月4日に筆記試験合格者の受験番号を公表すると事前に案内していた。
合格者はこのあと、12月上旬から令和9年1月に実施される口頭試験へ進む。

しかし当然、その反対側にいる人もいる。
今年、口頭試験には進めなかった人たちだ。
私は窓際に立つホームズに声をかけた。

ワトソン博士
「こういう日に、何と言えばいいんだろうな」

ホームズは振り返らなかった。

シャーロック・ホームズ
「何も言わなくてもいいんじゃないか」

ワトソン
「冷たいな」

ホームズ
「そうかな。結果を見たばかりの人間に、すぐ『来年頑張れ』と言う方が、私はよほど乱暴だと思うが」

私は返事ができなかった。
確かにそうかもしれない。
一年近く勉強した人もいる。
仕事の後に机へ向かった人もいる。
家族との時間を削った人もいる。
何度も答案を書き直した人もいる。

手応えがあった人もいるだろう。
今年こそは、と思っていた人もいる。
そこで「残念でした。来年また頑張りましょう」と言われても、頭はそんなに簡単には動かない。
ホームズは机の上の答案を一枚持ち上げた。

ホームズ
「数日は考えていい。しかし、いつまでも同じ場所にはいられない」

そこが今日の話である。

第二章:不合格は「一年間が無駄だった」という意味ではない

筆記試験で不合格になると、不思議なことが起きる。
七月まで積み上げてきたものが、全部否定されたように感じる。
しかし、それは論理的ではない。

ホームズ
「試験結果は、過去一年間の努力を採点しているわけではない」

ワトソン
「では何を採点している?」

ホームズ
「試験日に提出した答案だよ」

これは冷たく聞こえるかもしれない。
だが、重要な違いである。

受験者の技術者としての価値。
これまでの仕事。
一年間の努力。
それら全体に「不合格」が付いたわけではない。

採点されたのは、決められた時間内に書いた答案である。
だから、次に調べるべきものも明確になる。

自分そのものではなく、答案である。

ここを混同すると、
「自分には技術士になる能力がない」
という結論へ飛びやすい。

しかし、その結論を出すには証拠が足りない。
ホームズなら、まずそこを疑うだろう。

第三章:頭をリセットするとは、全部忘れることではない

私はホームズに聞いた。

ワトソン
「では、気持ちを切り替えて全部やり直すのか?」

ホームズ
「それも違う。せっかく証拠が残っているのに、なぜ捨てる?」

来年再受験するからといって、一から勉強をやり直す必要はない。
むしろ最初にすべきなのは、今年の受験を分解することである。

問題文を正確に読めたか。
要求事項を落としていなかったか。
観点と課題を区別できたか。
最重要課題の理由は書けたか。
解決策は具体的だったか。
設問と関係のない知識を書いていなかったか。
時間配分は適切だったか。
最後まで書き切れたか。
本番で準備していなかったテーマが出たとき、思考が止まらなかったか。

ここには、「知識不足」以外の原因がいくつもある。
技術士第二次試験は、知識量だけを競う試験ではない。
知っていることを、問題文の要求に合わせて組み直し、限られた時間と字数で答案として提示する必要がある。

だから、
今年よりたくさん覚える。
それだけでは、来年も同じ結果になる可能性がある。

第四章:まず「何が足りなかったか」を一つ決める

再受験を決めた人ほど、急いで勉強を始めたくなる。
新しい参考書を買う。
キーワードを増やす。
模範解答を集める。
AIに答案を大量に作らせる。

だが、その前にやることがある。
今年の敗因を仮説にすることだ。

ホームズが言った。

ホームズ
「事件の原因が分からないのに、対策だけ増やすのかい?」

その通りである。

例えば、
知識はあったが設問に答えられなかった。
課題が抽象的だった。
解決策が一般論だった。
専門技術が不足した。
答案構成に時間を使いすぎた。
一問で失敗して立て直せなかった。
そもそも勉強時間が不足した。

原因によって、来年やるべきことは全く違う。
全部を直そうとしなくていい。

まず、一番大きかった原因を一つ特定する。
そこから始める。

第五章:今年の答案は、捨てない方がいい

結果が悪ければ、自分の答案など見たくないかもしれない。
だが、再受験するなら今年の復元答案は重要な資料になる。
なぜなら、そこには本番の自分が残っているからだ。

勉強中なら書けたはずの内容が書けていない。
逆に、準備していなかったのに意外と書けている部分もある。
時間がなくなった場所も分かる。
設問を取り違えた場所もあるかもしれない。

ホームズ
「成功したところも失敗したところも、同じ証拠だ」

復元答案を見て、
何が悪かったか。
何はできていたか。
次回も残すものは何か。
これを分ける。

不合格答案だから、全部悪い。
これは最も危険な分析である。
A評価に届かなかった答案の中にも、A評価相当の部分はある。
逆に、合格答案にも弱い部分はある。

答案は白か黒かではない。
だから分析する価値がある。

第六章:来年の試験は、今年の続きである

十一月から翌年七月までを見ると、まだ時間があるように感じる。
しかし、仕事をしながら受験する技術者にとって、自由になる時間はそれほど多くない。

年末。
年度末。
異動。
繁忙期。
家庭の予定。
突然の仕事。
計画通り勉強できないことを前提にした方がよい。

だから再スタートで必要なのは、気合ではなく設計である。
今からすべての問題で完成答案を書く必要はない。

最初は今年の分析。
次に不足したキーワードの補強。
その後、課題設定と骨子。
そして答案作成。
最後に時間を測った実戦練習。
順番がある。

私はホームズに言った。

ワトソン
「つまり、来年は新しい挑戦ではないのか?」

彼は少し考えた。

ホームズ
「新しい挑戦ではある。しかし、ゼロから始まるわけではない」

今年一度、本番の問題を見た。
三枚の答案を書いた。
時間の短さも知った。
緊張も知った。
思うように書けない感覚も知った。

それは、まだ受験していない人にはない経験である。
使わない手はない。

第七章:悩むことと、考えることは違う

結果を見て、
「あそこで違うことを書けばよかった」
「なぜあの問題を選んだのだろう」
「もう少し勉強していれば」
と考える。

数日はそれでもいい。
しかし、同じ問いを何度繰り返しても答えが変わらなくなったら、それは分析ではなくなる。

ホームズ
「悩むことと考えることを混同してはいけない」

ワトソン
「どう違う?」

ホームズ
「考えるとは、次の行動が決まることだ」

厳しいが、その通りである。

今年は駄目だった。
では、なぜか。
仮説を立てる。
確認する。
次に変えるものを決める。

そこまで進めば、過去の結果は来年の材料になる。
進まなければ、結果だけが頭の中に残る。

リセットとは忘れることではない。
今年の結果を、感情の対象から分析の対象へ移すこと。
私はそう考えている。

第八章:来年の七月に持っていくもの

夕方になった。
ホームズは窓を開けた。
冷たい十一月の空気が入ってきた。

ワトソン
「今日からすぐ勉強を始めるべきだろうか?」

ホームズ
「いや。七日くらいなら、まだ答案を開かなくてもいい人もいるだろう」

ワトソン
「では何をする?」

ホームズ
「次も受けるかどうかを決めれば十分じゃないか」

その答えでよいと思う。

今日、すべてを決めなくていい。
完璧な年間計画も要らない。

ただし、技術士をまだ目指したいと思うなら、一度立ち上がる必要がある。
今年と同じ方法を繰り返す必要はない。
今年の失敗を否定する必要もない。

使えるものは持っていく。
直すべきものだけ直す。
そして来年の七月、もう一度答案用紙の前に座る。

そのとき必要なのは、
「去年落ちた」という記憶ではない。
「去年の答案から何を変えたか」という答えである。

坂戸市ベイカー街221Bの机の上で、ホームズは一枚の答案を裏返した。
裏面には何も書かれていなかった。

彼は鉛筆で小さく記した。
「次の推理は、ここから始まる。」

私(匠)は『日本シャーロック・ホームズ・クラブ』の正式会員です。
「日本シャーロック・ホームズ・クラブ(JSHC)」は、1977年に設立された日本最大級のシャーロック・ホームズ愛好家(シャーロキアン)の親睦団体です。全国に約700名の会員を擁し、専門的な研究からファンの交流まで幅広い活動を行っています。

【主な活動と特徴】
・イベントの開催: 毎年春と秋の「全国大会」のほか、東京や軽井沢でのセミナー、月例会などを開催しています。
・出版物の発行: 機関誌『ホームズの世界』や研究書の出版、関連事典の制作協力などを行っています。
・入会のしやすさ: 論文の提出義務などはなく、ホームズを愛する気持ちがあれば誰でも気軽に参加できるウェルカムな雰囲気のクラブです。

この記事を書いた人

匠 習作

代表:匠 習作(たくみ しゅうさく・本名は菊地孝仁)
開講10年の歴史/総受講者数650名以上/web授業の先駆者

皆さん、こんにちは!「ロックオン講座」主宰の匠習作です。
HPをご覧いただきありがとうございます。
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無事一次試験を突破された方でも、難しいなと感じる方が多くいらっしゃると思います。

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私自身、新卒から23年間医療機器メーカー勤務の会社員をしながら、懸命に勉強をしていた一人です。
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