二次試験の解答論文を書く際にはこれらの内容を頭にいれて書きましょう!
論文に対して、苦手意識をもっている人は多いのではないでしょうか。論文を必要とする試験などを受けても、なかなか合格に結びつかないと悩んでいる人もいるはずです。
合格できるような論文を書けない大きな理由の一つに、合格できる論文を作成するポイントを知らないということがあります。
論文には、基本的な書き方やルールがあります。それを理解することで、合格できる論文を書けるようになります。
今回は、合格できる論文を書くための基礎編として、文法や用語の使い方などについてご説明していきます。
なぜ論文が書けないのか
ひと口に、「論文が書けない」と言ってしまうと簡単ですが、どうして論文が書けないのでしょうか。その理由を探っていきましょう。
文章の役割を考えてみよう
そもそも、論文を含めた「文章」全体の役割とは何なのでしょうか。
文章は、「他者に何かを伝えるための手段」です。ですから、書いた人の意図を相手に伝えることが、文章の役割になります。
「文学的文章」と「論理的文章」とは
文章には、「小説」「随筆(エッセー)」「詩(俳句・短歌)」などの文学的文章があります。そして、これらのジャンルの文章には、人の心を動かす(感動させる)必要があります。
しかし、「説明文」や「論説文」などの論理的文章では、人の心を動かす必要はありません。読む人の興味の対象は、筆者自身ではないからです。読む人が知りたい内容は、筆者が説明する内容、つまり事実になります。
ですから、論文を含めた論理的文章には、エモーショナルな内容は必要ありません。事実を正しく伝えられるように書くだけでよいのです。
ルールを知ることが必要
相手に事実を正しく伝えられる文章、「論文」を書くためには、文章のルールを守ることが必要です。
どんなに正しい事実であったとしても、伝える方法を間違ってしまうと、相手に正しく伝わりません。
そのためには、文章に関するルールを知って、使いこなせるようにする必要があります。
合格できる論文を書くためのルールとは
論文を含めた論理的文章では、名文を書く必要はありません。要所要所で必要なポイントをおさえれば、「正しく伝わる」文章を作成することができます。
ここでは、正しく伝わる文章を作成するうえで最低限おさえておくポイントについて、説明していきます。
合格できる論文のポイント
合否を判定する論文の場合、複数の採点者が評価を行い、全員の評価を総合して合否を決定します。これは、一人の採点者による偏った評価を避けるためです。
ですから、論文を読む採点者全員に、自分が伝えたいことを正しく伝えられる論文を書くことが必要になります。
読む人によって評価が分かれないような、誤解を生じさせない論文を書くためには、次のようなポイントを踏まえておきましょう。
- 誤りのない正確な文書を作成する。
- 基となる情報の内容や意味を損なわない。
- 読み手が十分に理解できるように工夫する。
- 伝えることを絞る。
- 主旨を明確に示す。
- 専門用語や外来語をむやみに用いないようにする。
- 読み手にふさわしい書き方をする。
表記の仕方について
これらのポイントを踏まえた論文を書くためには、まず、文章全体における書き方の基礎を学ぶ必要があります。
論文を書く際、表記の仕方について迷った経験のある方は多いでしょう。そのような場合は、下記に挙げるルールを活用してください。
漢字の使い方
論文における漢字の使い方は、「常用漢字表」に基づくようにしましょう。
広く一般に向けた専門的な文章(説明書など)の場合、読み手が分かりやすいように配慮して、漢字をわざと仮名で書いたりする場合があります。
しかし、合格を狙うような論文の場合は、そのような配慮は必要ありません。論文の採点者のレベルを考慮して、基本的には漢字で書ける語はすべて漢字で書くようにします。
ただし、漢字ではなく、ひらがなを使った方が読みやすい語の場合は、ひらがなで表記するようにしましょう。
【ひらがなを使った方が読みやすい語】
然し、併し →しかし
及び →および
但し →ただし
勿論 →もちろん
或いは →あるいは
即ち・則ち →すなわち
従って →したがって
乃至 →ないし
沢山 →たくさん
色々 →いろいろ
出来る →できる
様に →ように
事 →こと
当然と見える →当然とみえる
※物理的な物を見る場合以外
~と言われている →~といわれている
※実際の発言や会話ではない場合
また、漢字が二つ以上重なると読みにくくなります。そのような場合は、二つのうち一つを「ひらがな」にすると読みやすさが各段にアップします。
【どちらかをひらがなにした方が読みやすい語】
比較的多い →比較的おおい
大変少ない →たいへん少ない
漢字の使い方にも注意
漢字で書いた方が「論文っぽくなる」ということから、必要以上に漢字を多用している論文を見かけることがあります。しかし、漢字はやたらに使えばよいという訳ではありません。使うべきではない漢字を使用してしまうと、漢字のルールを知らないと判断されてしまうのです。
【論文で使いがちな漢字表記】
位(程度を表すとき) →くらい
程(程度を表すとき) →ほど
等(「とう」と読むとき以外) →くらい
何時 →いつ
如何 →いかん
流石 →さすが
カタカナの表記
カタカナを含む外来語の表記は、「外来語の表記」(平成3年内閣告示第2号)に基づくものが好ましくなります。
・外来語や外国の地名・人名を書き表すのに一般的に用いる仮名
例:イタリア・ノーベル賞 など
・外来語や外国の地名・人名を原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる仮名
例:ツェ →フィレンツェ・イェ →イェール大学 など
これらの仮名では書き表せないような特別な音の書き表し方については、自由に行うことができます。
カタカナ表記の揺れ
また、理系の論文を書く際に注意する点として、「カタカナ表記の揺れ」があります。
「工具は「ドライバー」、PCのソフトは「ドライバ」と表記する。」などと聞いたことがあるかもしれません。しかし、それに関しては、読む人(採点者)が読んだときにわかりやすい表記であれば問題はありません。
さらに、「IT業界の論文では「長音を省略する」と聞いたことがあるかもしれません。
これは、長音を省略するためのルールが規定してある「JIS(日本工業規格)」にあると考えられています。
【JISの基本ルール】
・3音以上の言葉には語尾に長音符号を付けない。
例:ドライバ・ブラウザ・プリンタ など
・2音以下の言葉には語尾に長音符号を付ける。
例:キー・バー・エラー など
しかし、2019年に改正されたJIS規格では、外来語の表記は主として平成3年の内閣告示第2号によるとされています。
そのため、現在ではカタカナの長音では、原則として長音符号「ー」を用いて書くことが基本となっています。
ただし、定着した慣用がある場合には、慣用に従った表記を行っても問題ありません。
例: computer →コンピュータ ・ elevator → エレベータ ・ air →エア
自分が書く分野に関して、他の人の論文をよく読んで、慣用を理解しておくようにしましょう。
数字を使う際の注意と使い分け
理系の論文で使用することの多い「数字」を書く際には、次のような基本ルールがあります。数字を書く際には、これらの点に気をつけるようにしましょう。
算用数字を使う場合と例
年号や月日、時間や電話番号などでは、算用数字を使用します。
例:令和6年10月10日・午後3時25分・65%・電話:03‐3254‐‥‥ など
コンマで区切る場合と例
大きな数は、三桁ごとにコンマで区切ります。
例:105,000・5,000円・15,975,364人 など
数字と漢字を使う場合と例
・「兆・億・万」の単位で端数がない場合、数は数字、単位は漢字を使います。
例:3兆・5億人・300万円 など
漢数字を使う場合と例
・概数を表す場合は、漢数字を使います。
例:三十余人・数十人・三、四十人 など
・常用漢字表の訓による数え方や語を構成する数は、漢数字を使います。
例:一つ、二つ…・一人、二人…、七転び八起き・労働三法 など
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「か」を表す場合
・算用数字を使う横書きでは、ひらがなの「か」と書きます。
例:2か所・5か月 など
・漢数字を用いる場合には、漢字の「箇」と書きます。
例:二箇所・五箇月 など
句読点や括弧の使い方
何気なく使ってしまうことの多い句読点や括弧ですが、それらを使う際にも注意が必要です。
句読点の使い方
句点には「。」(マル)、読点には「、」(テン)を用いることが原則となります。
手書き以外の横書きの場合は、「、」(テン)の代わりに「,」(コンマ)を用いることも可能です。ただし、その場合は一つの文書内でどちらかに統一することが必要になります。
括弧の使い方
括弧は、()(丸括弧)と「」(かぎ括弧)を用いることが基本になります。()や「」の中
に、更に()や「」を用いる場合には『』ではなく、同じ括弧を重ねて用います。
例: (令和5(2023)年)・「「民法」による法令」 など
また、括弧の中で文が終わる場合には、句点(。)を打つ必要があります。
例: 総理は「その計画は、絶対に行う。」と発言した。
他にも、項目を示したり、強調すべき点を目立たせたりする【 】(隅付き括弧)などの括弧があります。しかし、【】をはじめ『』や<>などは、統一感がなく乱雑な印象になるので、論文ではむやみに用いないようにしましょう。
符号や単位について
符号や単位を使う際にも、いくつかのポイントがあります。
「・」(ナカテン)
代表的な符号である「・」(ナカテン)は、並列する語、外来語や人名などの区切り、箇条書の冒頭等に用います。
例: 在来工法・ツーバイフォー工法・プレハブ工法・重量鉄骨工法などの工法が、候補として挙げられた。
また、読点「、」も「・」のように使われる場合があります。
例:その動物園には、カバ、サル、トラなどが飼われていた。
この「、」は文章を読みやすくするための区切りとして使われています。リズムをつけるために使用されることもあるので、論文の際にはあまり適しているとは言えません。
単位の書き方
単位を表す符号を用いる場合は、その分野の慣習に従うようにしましょう。
℃、%、¥、$、m²などの単位を表す符号も、「度」「パーセント」「円」「ドル」「平方メートル」などと書くことができます。
ただし、論文のなかで単位を使用する場合には、使う用法を統一する必要があります。
現在はSI単位系で書くのが無難です。
段落について
文章全体を構成する段落についても、知っておきたいルールやポイントがあります。
1字下げをする
論文も「作文」や「小論文」などと同じように、文の書き出しや改行したときには、原則として1字下げをします。
1つの段落には1つの大きなテーマ
論文の1つの段落には、1つの大きなテーマを書くようにしましょう。段落に書いてあるテーマがまとまっていると、読み手(採点者)にも言いたいことが伝わりやすくなります。
1文の字数
論文は他の文章に比べて、1文が長い傾向にあります。記事などの文章の場合、1文の字数は、平均40文字といわれています。しかし、論文の場合は、1文で50~60字程度がおすすめになります。
長すぎる文の扱い
120字を越えてしまうと長文の部類に入りますが、必要に応じて(6〜7文に1回程度)は120字を超えても問題はありません。しかし、150字は超えないようにしましょう。
段落数
総字数や枚数によっても段落の数が変わりますが、書きたいテーマの数に合わせた段落数にしましょう。また、大見出しや中見出しを付けるなど、読む人にとってわかりやすい工夫をすることも有効です。
まとめ
ここで紹介したのは、あくまで基本的で基礎的なルールです。論文を書く際にはこれらの内容を頭にいれ、必要に応じて変化させながら活用していきましょう。また、論文の評価には、客観的な視点が必要になります。専門性を有する文章の専門家に、論文を添削してもらうことで、自分の弱点が見えてきます。どんどん書いて添削を繰り返し、合格できる論文に近づけていきましょう。