今年最後のブログです。令和6年の受験を目指す皆さんは、お正月明けから気持ちを切り替えて下さい。一年間どうもありがとうございました。
来るべき年代に応じたキャリアを形成することは、「人生100年時代」における上での「人生の目標」となります。
しかし、技術者・研究者のような「エンジニア」の仕事を行っている方の中には、今後のキャリア形成についての不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
たとえ実務においての実績を挙げていたとしても、それが正しく評価されることがなければ、自身の能力を実証することができません。
しかし、そのような心配をする必要はありません。
技術者としての資質・能力(コンピテンシー)を示すことのできる資格として、「技術士」があるのです。
この記事では、技術者・研究者としてのキャリアを築くために、技術士の資格を取るべき理由について、詳しくご説明致します。
エンジニアとしてのキャリアプランを組んでみよう
人間は目標を達成したいと思っていても、はっきりとしたイメージを持っていないと、なかなか行動に移すことができません。
しかし、キャリアプランを作成することで、現在いる地点と到達したい地点が明らかになります。
すると、到達したい地点に進んでいくための道筋が明らかになり、目標に向かって一直線に進んでいけます。
また、キャリアをスタートさせた後であっても、方向性に迷ったときには、何度でも見返して行く先を再確認することができます。
キャリアプラン設計の一例
キャリアプランは人によってそれぞれ異なりますが、このような形でキャリアプランを設計してみましょう。
年代 | 達成したい目標 |
20代 | 今の業務は修行かもしれないけど、着実に力を身に着けて一人前の技術者・研究者として認められたい。 |
30代 | 社内のリーダーとして難しい仕事をこなして尊敬され、社内外から認められたい。 |
40代 | 国際的にも活躍して、業界を引っ張っていけるような技術者・研究者になりたい。 |
50代 | 引退したら事務所を開いて、社会貢献できる活動等に積極的に参加して尊敬されたい。 |
エンジニアとしてのコンピテンシーを示すために
資質や能力は、目に見えるものではありません。ですから、自分自身が身に着けている資質と能力を証明することは難しいものです。
「コンピテンシー(competency)」とは、職務や役割において高い業績を上げている人(ハイパフォーマー)が、共通して持っている知識や技術、能力などと、それを発揮できる性格・動機・価値観などを重視するもののことです。
コンピテンシーは職種・役割ごとに設定されるのが一般的であり、エンジニアにもコンピテンシーがあります。
エンジニアとして社会や会社で求められる人材になるためには、コンピテンシーを示すことが必要になります。
そして、技術者としてのコンピテンシーを示すためには、日本の国家資格である「技術士」を保有していることが有効なのです。
技術士の資格を持っていることで、学歴や会社の名前に頼らずに、自分の資質と能力で勝負することができます。
技術士は国際的に通用する資格
技術士は日本の国家資格ですが、近年では、国際的にも通用する資格になっているのです。
技術士は、およそ半世紀前に米国の制度に倣って生まれた資格です。
当初は民間資格としてスタートしましたが、技術士法の制定をめざした積極的な活動が行われ、1957年に技術士制度が発足しました。
1958年7月には、第1回目の技術士試験が行われ、1983年には技術士補制度が発足しました。
2000年4月には技術士法が改正され、技術士第二次試験は、技術士第一次試験の合格者(及びそれと同等と認められる者)のみが受験できるようになりました。
そして、2007年度と2013年度の試験では、経験論文試験の変更や廃止が行われました。
さらに、2019年度から、技術士第二次試験の内容が変わったのです。
技術士は国際的に通用する資格へ
2019年度からの技術士第二次試験での大きな変更点は、以下の3点でした。
- 択一式問題であった必須科目が、記述式問題に変更される。
- 多くの部門で選択科目全96科目が、69科目に統合される。
- 「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」が、試験の評価項目として位置づけられる。
とくに③の変更点ですが、コンピテンシーが評価基準になった上に、国際基準とも整合することになりました。
これによって、技術士は国際的に通用する資格となったのです。
技術士資格について
そもそも、技術士資格とはどのような資格なのでしょうか。
また、技術士の資格を持っていると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
技術士とは、科学技術の応用面に携わる技術者にとって、最も権威のある最高位の国家資格です。
「博士」が一つの研究分野を極めた証だとしたら、技術士は「社会の実課題に対峙できる証」と言えます。
この資格を取得した者は、科学技術に関する高度な知識、応用能力および高い技術者倫理を備えていることを国家によって認定されたことになります。
そのため、技術士試験の試験範囲は非常に広く、難易度の高い試験となります。
技術士の第一次試験に合格すると、科学技術系大学卒業生としての資質・能力を有していることが証明されます。
国際的には、「Graduate Attributes」を証明されることになります。
さらに、第二次試験に合格すると、エンジニアとしての資質・能力を有していることが証明されます。国際的には、「Professional Competency」を証明されることになるのです。
ですから、技術士の資格を持っていることは「Professional engineer」であるということになり、国際的に通用すると証明されるのです。
技術士試験が変更になった理由
2019年に技術士の試験内容が変更になった大きな理由に、海外と同じ基準や海外並みの合格者を目指すということがあります。
そのために、次のようなことが目標とされました。
- 合格者の平均年齢を43⇒35歳にする。
- 最も権威ある資格(GOAL)から、資格を活用できるSTARTにする。
これらが実現されることによって、今までの技術士における一般的なキャリアプランが、大きく変更することになります。
世界で活躍できるエンジニアとして
組織名 | 内容 |
国際エンジニアリング連合(IEA) | エンジニアリングの教育と実践における質保証と国際的同等性の確保、流動性の向上を目的として設立された非営利の国際組織。 |
アジア太平洋地域技術者協会連盟(FEIAP) | 東南アジア及び太平洋地域のエンジニアリング技術及び学術の発展を目的としている、アジア太平洋地域における技術者業界団体。 |
「APECエンジニア登録制度」は技術士だけ
さらに、近年では企業活動の国際化が進み、技術士も日本国内のみならず広く海外で活躍する機会が増えてきています。
そのため、有能な技術者が国境を越えて自由に活動できるようにするための制度として「APECエンジニア登録制度」も創設されています。
もちろん、APECエンジニアになるためには、要件と審査があります。
APECエンジニアになるためには所定の7つの要件を満たす必要がありますが、技術士であることが大前提になります。
技術士としての登録がない場合には、審査の対象にもならないのです。
技術士の資格を取得しよう
エンジニアとしてのキャリアを積むためにも、世界を舞台に活躍できるエンジニアになるためにも、技術士という資格は必要不可欠になります。
似たような響きを持っていますが、「技術士」と「技術者」には大きな違いがあります。
「技術士」と名乗れるのは、文部科学省管轄の国家試験である「技術士試験」に合格した技術者のみになります。
難関資格である技術士の試験に合格した「技術士」は、高度な技術力や技術者倫理を持っていることを国から認められたということになります。
「技術士」は、技術者としての専門知識だけではなく、「仕事を通して社会のためになる」という倫理観を備え持っていることが大きな特徴になります。
そのため、技術士二次試験の筆記試験では、「必須科目」で「技術者倫理」に解答する必要が生じます。
一次試験に合格した人しか受検できないにもかかわらず、合格率11.7%(令和4年度)という難易度の高い二次試験は、専用の対策なしでは合格が難しくなっています。
二次試験の筆記試験で問われる内容
技術士の二次試験である筆記試験では、総監以外の部門で「必須科目」と「選択科目」が出題され、総監部門の「必須科目」では「択一式問題」と「記述式問題」が出題されます。
総監以外の部門の筆記試験はすべて記述式で、全部で4つの論文を作成することになります。
この筆記試験によって、資質能力の専門的学識・問題解決・評価・コミュニケーション・技術者倫理の有無が判定され、資質能力の専門的学識・問題解決・評価・マネジメント・コミュニケーション・リーダーシップの有無も判定されるのです。
まとめ
技術士の二次試験の筆記試験や口頭試験では、国際エンジニアリング連合(IEA)が定めている「技術士に求められる資質能力」を念頭に置いて策定された資質能力(コンピテンシ―)の有無が判定されます。二次試験はすべて記述式の論文形式ですが、繰り返しの添削を行うことで、コンピテンシーを持っていると判断してもらえる論文を作成できる能力が身に着いていくのです。
早期のキャリア形成を実現させるためにも、エンジニアとしての「スタート」に変わった技術士の資格を、一刻も早く取得しましょう。
皆さん、良いお年をお迎え下さい
今年最後のブログが、「技術士を目指そう」になりました。
今年、上手く行かなかった方は、来年の試験で合格して下さい。
技術士になりましょう、最後まで諦めないで下さい。
よいお年をお迎えください。