令和2年度建設部門必須過去問題解説

技術士二次試験

建設部門A評価解答を解説~~今回は令和02年Ⅰ-1、Ⅰ-2~~

技術士試験では過去問題を分析することも重要

A評価の解答を詳細に見ながら何が良かったのか? しっかり確認して下さい。
まずは、令和02年(2020年)建設部門の必須問題Ⅰ-1です。
解答用紙の画像も載せますが、詳細は下のテキストを見て下さい。再現率はほぼ100%と言うことです。
選択科目は河川砂防です。

令和02年(2020年)建設部門必須Ⅰ-1

以下の画像は、全体の文章量を見るためだけのものです。
解答内容の詳細は、下のテキストを確認して下さい。

次の2問題(I-1,I-2)のうち1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記し,答案用紙3枚以内にまとめよ。)

令和02年(2020)建設部門必須Ⅰ-1問題文

我が国の総人口は,戦後増加を続けていたが,2010年頃をピークに減少に転じ,国立社会保障・人口問題研究所の将来推計
(出生中位・死亡中位推計)によると,2065年には8,808万人に減少することが予測されている。
私たちの暮らしと経済を支えるインフラ整備の担い手であり,地域の安全・安心を支える地域の守り手でもある建設産業においても,課題の1っとしてその担い手確保が挙げられる。

(1)それぞれの地域において,地域の中小建設業が今後もその使命を果たすべく担い手を確保していく上で,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と,新たな懸案事項への対応策を示せ。
(4)上記事項を業務として遂行するに当たり,技術者としての倫理,社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

以下、解答は設問毎に解説します。(解答文章は黒文字、私の解説は赤文字です)

1.地域の中小建設業が担い手を確保する上での課題
(1)就労環境を改善して魅力ある業界にする課題
我が国の建設業は3K(給料安い、危険な作業、休暇少ない)の印象から若者や女性の入職者が少ない。体力のある大手は対応が進んでいるが地域の中小建設業はこの問題が顕著である。実際に30才未満の就労割合は全産業で16%であるが、建設業は11%と低い。
したがって、次世代の担い手を確保し持続可能に建設業の使命を果たすために、就労環境を改善して次世代の担い手を確保することが課題である。
(2)資本集約型の生産体制に移行する課題
建設業は現地屋外で生産を行うため、現場毎に調査・検討すべき事項や寸法等が異なり作業の標準化・仕組化が困難である。そのため、人による作業に頼らざるを得なく労働集約性が高い。よって作業に要する人工数が多く、休暇が取りにくい要因の1つとなっている。人に依存する作業を減らし、必要人工数を削減するために、労働集約型から資本集約型の生産体制に移行すること課題である。
(3)業務対応時期を平準化する課題
我が国の公共事業は単年度予算のため単年度発注が基本となっている。このため、年度末は繁忙期となる一方で年度明けは閑散期となり人員や資本が有効に活用されていない。1年間で忙しさが変わる働きにくい環境を改善するため、繁忙期の業務を分散して業務対応時期を平準化すること課題である。

3つの課題です。問題文に数の指定はありませんが、まあ、3つの課題が無難です。
ただし、問題文には「多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。」とあります。
その観点が解答にありません。これは大きな減点です。
実は、令和元年、2年頃までは観点の記載が無くても、A評価になっている解答がありました。
しかし、令和3年からは、合格している方の解答で観点の記載がないものは無くなっています。
少なくとも、私は見てません。ですから、今後は問題文に「観点を示し」とあれば、必ず書いた方が良いと思います。

この問題の題意は「地域の中小建設業が今後もその使命を果たすべく担い手を確保していく」上での課題を挙げよということです。また、何のために担い手の確保が必要なのか? それは、日本の総人口が2065年には8,808万人に減少することが予測されている中、暮らしと経済を支えるインフラ整備の担い手が必要だからです。地域の安全・安心を支える地域の守り手でもある建設産業においても次世代の技術者を育てる必要があります。
そのために、克服すべき課題を3つ抽出する訳です。

1)就労環境を改善して次世代の担い手を確保することが課題
2)労働集約型から資本集約型の生産体制に移行すること課題
3)繁忙期の業務を分散して業務対応時期を平準化すること課題

上記の3つが課題です、それぞれの課題は現状がしっかり説明されていますから、とても分かり易いです。
例えば、一つ目の課題では、

「我が国の建設業は3K(給料安い、危険な作業、休暇少ない)の印象から若者や女性の入職者が少ない。体力のある大手は対応が進んでいるが地域の中小建設業はこの問題が顕著である。」
建設業で言われている、「問題点」が上手く表現され、「地域の中小建設業」という言葉も上手く使われています。
問題文を良く理解して解答していることが読み手に伝わります。とても良い書き方です。

ここで題意と課題を並べて確認してみましょう。

「地域の中小建設業が今後もその使命を果たすべく担い手を確保していく」ために、就労環境を改善して次世代の担い手を確保することが課題
「地域の中小建設業が今後もその使命を果たすべく担い手を確保していく」ために、労働集約型から資本集約型の生産体制に移行すること課題
「地域の中小建設業が今後もその使命を果たすべく担い手を確保していく」ために、繁忙期の業務を分散して業務対応時期を平準化すること課題(この課題は閑散期と繁忙期の差を少なくして、働きにくさを無くすという説明です)

3つめは、少し分かり難いですが、説明を読むとなるほどと思います。題意と課題に関して、論理の破綻はありません。
整合性の取れた、課題です。これは評価されると思います。
ちなみに、観点を書いてないけど、論理的に整合性のある課題と、観点は書いてあるけど論理の破綻した課題では、前者の方が評価されると思います。ただ、問題文の要求にはしっかり応えて解答することをお勧めします。

2.最も重要な課題とその解決策
(2)の「資本集約型の生産体制に移行する課題」を最も重要な課題とした。人から資本へ生産体制を移行すれば、必要人工数が減り休暇を取りやすくなるため(1)の3kの課題も同時に解決できる。
(1)レーザーを用いた3次元測量の実施
 UAVを使用してレーザーを用いて面的で高密度な3次元測量を短時間で行う。地形条件などで異なるが、トータルステーションを用いた一般的な測量を比較して起工測量が5割以上短縮される。また、必要人員はUAVを操作する人のみのため、省人化にもなる。
(2)BIM/CIMの導入
 (1)で作成した3次元測量データをもとにBIM/CIMに対応した設計データで設計することで3次元モデルを作成する。このことで視覚的・直感的に関係者間で情報を共有し、意思決定の迅速化やエラーによる手戻りの根絶を図る。また所要時間短縮にもなる。
(3)ICT建機の導入
 建機に(2)で作成した3次元モデルを取込み、自動操作で施工を行う。例えば切土を行う場合、丁張を目安に手動で切土し精度管理を行う必要があった。一方ICT建機では3次元モデルを取り込むことでバケットを自動制御するため、丁張や精度管理といった工程や調査人員を要さない。

最も重要な課題は、設問1の課題から、「(2)の「資本集約型の生産体制に移行する課題」を選択しています。ここで、「人から資本へ生産体制を移行」とあるのですが、人からではなく、「人力」の方が良いと思います。要するに、労働集約型の生産から、資本集約型の生産に変革するということです。人と資本では、言葉の対比として合いません。人力であれば、労働集約とほぼ同じ意味です。どうしても「人」からなら、人から機械への方が良いと思います。
解決策は3つです。「レーザーを用いた3次元測量の実施」「BIM/CIMの導入」「ICT建機の導入」。
どれも、「資本集約型の生産体制に移行する課題」を解決できる方法です。また、それぞれの解決策を説明する部分で、最後の所に「省人化にもなる。」「また所要時間短縮にもなる。」「工程や調査人員を要さない。」とその便益を書いています。
これも評価されると思います。解決策によって、課題が解決出来ることが明確になっているからです。
この解答の一番良いところは、この解決策の書き方かもしれません。
時々見るのですが、「この解決策で課題が解決できるのか?」と疑わざるを得ない解決策が書いてあるのです。
この解答に限っては、それが全くありません。説明も簡潔で良いのですが、それ以上に解決策の効果や便益を言い切るのはとても良い書き方です。皆さんも真似して下さい。

3.波及効果と新たな懸案事項への対応策
(1)波及効果:各解決策で作成した3次元測量データや3次元モデルが蓄積される。蓄積した各データをプラットフォーム化することで誰でも高度な地形データを扱うことが出来、AR等の新分野に活用される。
(2)新たな懸案事項への対応策:業務が機械に過度に依存することで、エラーの見落としが発生して品質が低下することが懸念される。対応として、生産体制を人から資本に移行する際は重要な作業工程を把握し、そこの一部を技術職員が担当するようにする。要所は技術者が確認することで、エラーの見落としにより品質が低下する懸案事項が発生するリスクを低減する。

まず、波及効果ですが、上の波及効果は少し弱いです。要するに波及効果と言うよりも直接効果に近いと思います。
波及効果とは「波が広がっていくように、徐々に効果が広い範囲に及んでいくこと。」です。
今回の解決策は、「レーザーを用いた3次元測量の実施」や「BIM/CIMの導入」等ですから、「3次元測量データや3次元モデルが蓄積される」のは、すぐそうなるはずです。波が広がって行くようにではないでしょう。

懸案事項と対応策はこれで良いと思います。

波及効果とは何か? ここで少し詳しく説明します

経済波及効果分析とは
 経済波及効果とは、新たに需要が発生したときに、その需要を満たすために次々と新たな生産が誘発されていくことを言います。まるで波(波紋)が移動するように次々と波及していくことから、生産波及効果とも呼ばれます。

 例えば、建設部門で需要増加(新たな建物の建築など)があった場合を考えてみましょう。
建物などを建設するには鉄骨やコンクリート、ボルトなどの建設資材や設備、それを動かすための燃料や電気などの原材料が必要となります。
さらに、それらの建設資材等を得るために、その原材料(砂利や鋼材など)の生産が必要になります。そしてさらに、それらの原材料の原材料の生産が必要になる…というように、生産が生産を呼んで(生産誘発)、いろいろな産業へと次々と生産が波及していきます。
これが波及効果です。

ところで、「風が吹けば桶屋が儲かる」というお話をご存じですか?
風が吹けば桶屋が儲かるとは、日本語のことわざで、ある事象の発生により、一見すると全く関係がないと思われる場所・物事に影響が及ぶことの喩えです。
強い風によって砂ぼこりがたつと、砂ぼこりが目に入ったために盲人がふえ、その人たちが三味線で生計を立てようとするため、三味線が多く必要になり、三味線の胴に張る猫の皮の需要も増え、そのために猫がへり、その結果、増えた鼠が桶をかじるので桶屋がもうかって喜ぶというもの。
分りにくいですから、書き換えましょう。

1)強い風によって砂ぼこりがたつと、砂ぼこりが目に入ったために盲人が増える。
(江戸時代の話なので、医療が発達していません)
2)その人たちが三味線で生計を立てようとするため、三味線が多く必要になります。
3)三味線の胴に張る猫の皮の需要も増え、そのために猫が減ります。
(残酷な話ですが、江戸時代の話なのでご了承ください)
4)猫が減った結果、鼠が増えて桶をかじるので桶屋が儲かるというお話しです。。
これは、波及効果の古典版と言えるでしょう。


4.業務を遂行するにあたり必要となる条件
(1)社会の持続性の観点
 解決策で作成した3次元データは、設計・施工後も点検作業や維持管理に使い、点検結果や補修履歴を属性として追加していく。従来使用していた紙の台帳とは違いデータが更新され最新状況が把握できる。そのため、持続可能なインフラの維持管理に寄与する。
(2)技術者としての倫理
 3次元測量データや3次元モデルをプラットフォーム化して共有する際は、データに格納されている土地の所有者や連絡先といった個人情報を適切に管理する。 
このような公開したら損害につながりかねない情報を適切に管理することで、業務の秘密を保持する。

文章量は少なめです。ですから、ほぼお決まりのことしか書いてありません。
逆に言うと、減点される要素はありません。
社会の持続可能性に関しては、情報のデジタル化をお粉憂いことで、今後の維持管理が効率よくなることを説いています。
おっしゃるとおりです。問題文では、人が減って、地域の守り手が少なくなることを言ってますから、人が減っても対応できるように備えることは重要です。そこをもう少し書いた方が良かったと思いますが、これで減点にはならないはずです。
倫理の方は、情報漏洩の防止、個人情報の保護ということです。これも問題ありません。

この解答の点数は、27点でA評価でした。

令和02年(2020年)建設部門必須Ⅰ-2

選択科目は、土質及び基礎

以下の画像は、全体の文章量を見るためだけのものです。
解答内容の詳細は、下のテキストを確認して下さい。

次の2問題(I-1,I-2)のうち1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記し,答案用紙3枚以内にまとめよ。)

令和02年(2020)建設部門必須Ⅰ-2問題文

我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり,急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また,高度経済成長期と比べて,我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。
こうした状況下で,社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには,戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ,以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中,老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点、から述べよ。

以下、解答は設問毎に解説します。(解答文章は黒文字、私の解説は赤文字です)

1社会インフラの戦略的なメンテナンスの課題
 我が国の社会インフラは、高度成長期以降に集中的に整備され、経済発展や国民の安心安全のために貢献してきた。今後も社会インフラ機能を維持しつつ、着実に整備していく必要がある。以下に社会インフラの戦略的なメンテナンスの課題を3つ挙げる。
課題1:社会インフラのメンテナンスの生産性向上
少子高齢化や人口減少傾向から社会インフラのメンテナンスの技術者が不足している。今後、老朽化する施設が増加するため、維持管理を省力化する必要がある。したがって、社会インフラのメンテナンスの生産性向上が課題である。
課題2:Society5.0技術の実装
 あらゆる分野でSociety5.0の実現を目指している。
建設分野でもデータの分散管理やビッグデータの未活用の現状からSociety5.0技術の情報共有により、計画・設計・施工・維持管理の効率化を目指す必要がある。したがって、Society5.0技術の実装が課題である。
課題3:社会インフラの整備費用の確保
 我が国は高齢化の影響で社会保障予算が増加している(2016年118兆円が2025年には150兆円の予測)。加えて緊縮財政の影響で、社会インフラの整備予算は増額が見込めない。したがって、少ない予算での社会インフラの整備が課題である。

問題文の題意は、社会・経済情勢が変化する中,老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり」課題を抽出せよという要求です。また、問題の前文で「また,高度経済成長期と比べて,我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。」と説明しています。何がどう変化したのは書いてありません。私に言わせれば、国が間違った財政観から、緊縮財政に向かって、国の成長を止めたことが変化です。とは言え、そうは書けません。
と言うことで、この解答者さんは、上手く課題を抽出しました。

会インフラの戦略的なメンテナンスを推進する」ためには「社会インフラのメンテナンスの生産性向上が課題。」
会インフラの戦略的なメンテナンスを推進する」ためには「Society5.0技術の実装が課題。」
会インフラの戦略的なメンテナンスを推進する」ためには「社会インフラの整備費用の確保が課題。」
3つ目の、「社会インフラの整備費用の確保」は、課題の説明の中で「少ない予算での社会インフラの整備が課題」と変化しています。少ない予算の中で何とかするのは、技術者の課題になりますが、「社会インフラの整備費用の確保」は、技術者の課題とは言いがたいです。これは、「少ない予算での社会インフラの整備が課題」と書いて良かったと思います。
また、この解答も観点がありません。間違いなく減点ですが、題意に対し課題のズレは全くありません。課題の説明も論理的に繋がりが良く、整合性が高いです。
もう一つ、問題の前文には「我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる」とあります。しかし、これは間違いです。この解答者さんは、さりげなくその間違いを修正していあmす。解答の冒頭で
「我が国の社会インフラは、高度成長期以降に集中的に整備され、経済発展や国民の安心安全のために貢献してきた。」
と正確に書いています。

日本の社会インフラ

日本の社会インフラは、上記の通り1975年以降から急激に増えています。
一方、日本経済が飛躍的に成長を遂げた時期は、1954年(昭和29年)12月から1973年11月までの約19年間です。
高度成長期に作られたものなら、2023年に100%築後50年です。
日本のインフラは上記のグラフにあるように高度成長期以降に作られたものが圧倒的に多いのです。
これは、多く見られる間違いです。覚えておいて下さい。

2最重要課題の抽出と解決策
(1)課題1を最重要課題とする理由
 社会インフラのメンテナンスの生産性向上では、維持管理する技術者の確保と、効率的に維持管理を行うための省力化が必要である。この担い手確保と省力化は相反関係にあり、維持管理における技術者を確保しつつ、省力化を進めていかないと、国民の安全・安心がおびやかされる等の不都合が生じることとなる。このような理由から課題1の社会インフラのメンテナンスの生産性向上を最重要課題として挙げる。
(2)インフラメンテナンスの生産性向上の解決策
解決策1:担い手確保
少子高齢化や人口減少を踏まえた上で、膨大な社会インフラの戦略的に維持管理を行うために女性や外国人、情報分野等の他分野の人材を積極的に登用する。また、適切な労働環境の整備や賃金の確保により、技術者の他産業への流出を防止する。
解決策2:点検作業の機械化・省力化
これまでの点検作業は、目視や打音検査により実施されてきたが、膨大な地盤構造物の維持管理に当たっては非常に非効率であったため、ICT技術を導入し、点検作業を機械化・自動化することにより、省力化・省人化を図る。
解決策3:アセットマネジメントの加速
 社会インフラを適切なタイミングで補修補強するためにはアセットマネジメントが有効である。国直轄は進んでいるが、地方自治体では技術者や財源不足により、進んでいない。国による技術者や財政支援を行い、地方自治体の管理する社会インフラのアセットマネジメントを加速させることが有効と考える。

最も重要な課題は、「課題1:社会インフラのメンテナンスの生産性向上」です。
その理由も明記されています。ただ、理由は少し長いです。最も重要な課題の理由は問題文の中で要求されてはいません。
ただ、問題文では「最も重要と考える課題を1つ挙げ」とありますから、どうしてそう考えたのかを書いても減点はされません。
また、解決策を考える上で、最も重要な課題の理由はあった方が、分かり易くなります。ですから、簡単に説明した方が良いと思います。

もっともこの問題の場合は、老朽化した施設が急激に増えている。
経済の低成長時代になって予算も無い。
そんな中で、「社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するため」の課題ですから、生産性向上が最も重要であることは予想通りとも言えます。説明もそのようになっています。なので、ここまで話の辻褄は合っています。

解答を読み進めても、なるほどと思える内容で、頭の中に「?」が生まれません。これはとても重要なことです。

ただし、解決策の1つ目は、ミスです。令和元年の解答でもありましたが、生産性向上と担い手の確保はあまり関係がないのです。
3つの解決策は、
解決策1:担い手確保
解決策2:点検作業の機械化・省力化
解決策3:アセットマネジメントの加速
となっています。解決策2と3は、問題ありません。
しかし、解決策1は、説明を読んでもミスです。何度も言いますが、人が大勢確保出来るなら、生産性向上の必要はないのです。
生産性とは、機械化・自動化によって、一人あたりの生産量を上げることです。
人を増やして、生産量を上げるのは生産性向上ではありません。
これも誤解が多いので、しっかり理解して下さい。

3解決策に共通して新たに生じうるリスク
リスク1:機械化による技術の空洞化
 技術力は熟練技術者の経験が重要であるが、機械化や自動化に頼ると、技術力を得る機会が減少し、技術の空洞化するリスクがある。この対策としては、OJTはもちろん、OFF-JTを加え、講習会や熟練技術者による現場での講習等により技術を習得する。
リスク2:ICT技術導入の遅れ
 財政難の地方自治体ではICT技術を導入することが難しい。この対策としては、国による技術者や財政支援を実施することが有効であると考える。

共通して新たに生じうるリスクは少し間違っています。
そもそも、解決策が3つもあると、共通のリスクが見つかりにくいのです。
例えば、2つのリスク、「機械化による技術の空洞化」「ICT技術導入の遅れ」は、解決策1の担い手確保とは関係しないと思います。もし、修正するなら解決策から1の担い手確保を削除して、その分、解決策2と3をもっと詳細に書く方が良いと思います。そうすれば、リスクはこのままで問題ありません。設問3で「共通のリスク」が求められているときは、解決策を2つにすることをお勧めします。

4業務として遂行するために必要な要件
 社会インフラの戦略的な維持管理業務に当たっては、公益を優先し、国民の安全安心を第1に考えて進める必要がある。事業者(発注者や受注者)の意向ではなく国民の安全を優先することが必要と考える。また、社会インフラ施設が適切に機能しないと国民の安心安全が確保できなくなるため、社会インフラの機能を持続していく必要があると考える。

この解答では、倫理の観点と社会の持続可能性観点が明確に分けられた解答になっていません。
これは、多分減点されています。
問題文では「技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点」から述べよと要求してます。
「、」で区切っていますから、倫理と社会の持続可能性へ別の観点なのです。
スペースの問題もあるのでしょうが、なるべくしっかり分けて解答しましょう。


この解答の点数は、26.5点でA評価でした。
皆さんは、どちらが良い解答だと思いましたか?

技術士二次試験・解答解説のまとめ

  • 簡潔で分かり易い文章を書くように心がける
  • 題意と課題に齟齬がないように注意する
  • 課題と課題、課題と解決策など、解答内での論理的な破綻に注意する
  • 数値データを入れた方が良い(今回の解答はデータも少ないです)
  • 設問3で共通のリスクを求められているときは、解決策を3つにしない方が良い
  • 設問4の解答は紋切り型でもあまり気にしない

上記に注意して、解答することを心がけて下さい。
ちなみに、上記のお二人は、1年目と2年目の合格者さんでした。
また、解答時間はお二人とも100分~110分程度だったので、かなり書き写すことができたそうです。