元データは以下『インフラ分野のDX アクションプラン』:2022年3月
ここからは、アクションプランで示されている三本柱を一つずつ取り上げ、「今後どう進められていくか」を具体的な施策の例とセットで説明します。
最初は「行政手続のデジタル化」です。
これは、紙と窓口を前提にした各種手続きを、オンラインで一元処理できるように変える取り組みです。目的は二つで、行政側の事務コスト削減と、利用者側の利便性向上です。
具体例として示されているのが、特殊車両通行許可、河川利用手続き、港湾の手続き、ETCの活用、高速道路料金所のキャッシュレス化、建設業許可・経営事項審査などです。資料では、特殊車両通行許可に平均1か月近くかかっていた審査日数を、新システムとETC2.0情報を使って「即時処理」にしていく構想が説明されています。
同じ流れで、河川の占用・工作物設置など河川法関係の手続きも、メール申請からオンラインプラットフォームによる一括申請へ移行し、24時間365日、いつでもどこからでも申請できるようにするとしています。年間約2.5万件の手続きを見据えたデジタル化で、移動コストと書類作成負荷の削減を狙っています。
港湾では「サイバーポート」というコンセプトで、港湾物流手続き、施設利用手続き、港湾台帳などの情報を電子化・一元管理し、民間事業者と港湾管理者双方の手続きを効率化しつつ、維持管理のアセットマネジメントも高度化する構想になっています。紙ベースでバラバラに存在していたデータを統合し、相互連携させることで、新しいサービスや分析も可能になります。
高速道路では、ETC専用化やETCを利用したタッチレス決済の普及、マイナンバーカードとの連携による割引手続きのオンライン化など、利用者側の「待ち時間の削減」と「感染症リスク低減」をセットで狙う施策が並んでいます。都市部で5年、地方部で10年程度を目安に、料金所のキャッシュレス・タッチレス化を概成させるロードマップが描かれています。
建設業許可・経営事項審査、建設関連業者登録についても、電子申請システムを整備し、他省庁システムとのバックヤード連携で添付書類を省略する「ワンスオンリー」を徹底して、段ボール箱何箱分にもなる紙資料を無くしていく方向です。令和5年1月から電子申請開始とし、逐次改善しながら全国展開していくと書かれています。
こうした行政手続きのDXは、2025年度までに基盤システムの整備と主要手続きのオンライン化を終え、その後、対象手続きと機能を拡大していく流れです。「今後どのように進めるか」を一言で言えば、個別最適のシステムを乱立させるのではなく、国交省内で横串を通しつつ、既存のオンラインプラットフォームを活用しながら、24時間・ワンストップの環境を整備していく方向です。

次に「情報の高度化とその活用」です。
ここがいわゆる「デジタルツイン」や「3D都市モデル(PLATEAU)」が出てくる領域です。
代表的な例が「水害リスク情報の3次元表示」です。従来のハザードマップは紙やPDFの2次元表示で、浸水深のイメージがつかみにくいという課題がありました。これを、PLATEAUの3D都市モデルと連携した3D浸水リスク表示、地理院地図の3D表現、3Dハザードマップなどで立体的に見せることで、「わかりやすく」「手軽に」「広く」リスク情報を提供する方向へ舵を切っています。オープンデータ化も徹底し、自治体や民間がAR防災アプリなどを自由に開発できるようにする方針です。
洪水予測も高度化されます。これまで3時間先までだった水位予測を6時間先まで拡張し、さらに一級水系で本川・支川一体の予測モデルを構築、3日先程度まで「幅を持った予測」で氾濫可能性を示すことで、広域避難や防災対応のリードタイムを確保していく計画です。中小河川向けモデルも開発し、水害リスク情報の空白域を埋めていきます。
加えて、防災ヘリの映像から浸水範囲や土砂崩壊箇所をAIで自動解析し、リアルタイムで被害状況を可視化する技術も開発・実装する予定です。これにより、これまで職員が手作業で映像を読み解き、1日1回の報告ペースだった情報集約を、1日に複数回、リアルタイムに近い形で行い、TEC-FORCEなどの人的・物的資源を最適配置できるようにしていきます。
ここまで見ると、「情報の高度化と活用」は単なる見栄えの良い3D表示ではなく、
リスク情報を分かりやすく見せて避難行動につなげること、
リアルタイムの被害情報で災害対応を最適化すること、
オープンデータ化で民間の創意工夫を引き出すこと、
の三つを柱に進んでいくと言えます。
最後に「現場作業の遠隔化・自動化・自律化」です。
PDFの前半には詳細な個別施策までは書かれていませんが、方向性は明確です。建設機械の自動・自律施工、出来形・品質検査の自動化・遠隔化、災害復旧やインフラ点検のロボット・ドローン活用などを通じて、省人化と安全性向上、作業時間の短縮を狙っています。5G環境を活かした遠隔操作や、BIM/CIMと連動した施工管理、センサーによる構造物モニタリングなどもここに含まれます。
今後の進め方としては、
技術基準やガイドラインの標準化で「使える場面」を明確にすること、
実証フィールドで試行しながら、地方整備局や事務所レベルまで現場適用を広げること、
これに対応できる人材を育成すること、
がセットで動きます。地方整備局・技術事務所・国総研・土研・建研が連携した推進体制図が示されていて、BIM/CIM研修やロボティクス実験フィールドの整備など、人材と技術の両輪で進めるイメージです。

第2回のまとめとして言うと、インフラDXの三本柱は、
2025年度までに主要な「型」と基盤を作る、
その後、対象とレベルを周辺分野・全国へ横展開する、
という二段構えで進められます。行政手続き、情報提供、防災、現場作業がそれぞれ個別にデジタル化されるのではなく、「データプラットフォーム+3Dモデル+遠隔・自動化技術」で相互に連携し始めるのが、今後数年の姿です。








