技術士二次試験は、国家資格の中でも難関とされる試験です。合格には6~10か月の準備期間と1000~1500時間の学習が必要と言われています。そのため、特に初めて受験する人にとっては「何から始めればいいのか分からない」という戸惑いがつきものです。
実際、多くの受験者は前年の11月や12月から学習を始めます。経験者の中には「直前でも大丈夫だろう」と2月や3月から取りかかる人もいますが、その場合は学習時間が不足し、基礎から応用まで幅広く問われる試験に対応しきれず不合格となるケースが少なくありません。
私自身、12年間にわたり技術士試験の対策講座を運営し、数多くの受験者を指導してきました。その経験から確信しているのは、合格を勝ち取るために最も大切なのは「学習計画を立て、それを実行し続けること」です。ここでは、計画を考える上で押さえておきたい柱と、具体的な月別モデルプランをご紹介します。

学習計画の三本柱
1. 学習スケジュールの立案
長期戦である試験準備は「逆算」が肝心です。試験日は毎年7月の「海の日」。そこから逆算し、月ごと・週ごとに学習内容を区切っていくことで、効率的かつ安心感のある勉強を進められます。
2. 弱点分析
自分が苦手な分野を早めに洗い出すことが重要です。基礎知識の不足、論理的な文章構成、表現力など、人によって課題は異なります。弱点を放置すると最後まで伸びません。早期に把握し、重点的に強化しましょう。
3. 過去問題の傾向分析
技術士試験には一貫した出題の方向性があります。過去5~6年分を分析することで、よく出る分野、典型的な設問形式が見えてきます。これを学習の軸に据えることで、的外れな勉強を避けられます。
月別の学習モデルプラン(前年11月スタートの場合)
ここからは、前年11月に勉強を始めた場合のモデルプランを示します。初学者が無理なく1000時間を積み重ね、7月の本番に間に合う流れです。
11月~12月:準備期
- 全体像を理解する(試験制度・部門科目・過去問題の構成を把握)
- 学習環境を整える(参考書、過去問、スケジュール帳、学習記録アプリなど)
- 軽く過去問に目を通し、自分の得意・不得意を確認
- 資料を集め、重要度を考えて整理する
→ この時期は1日1~2時間程度でよいので「学習を習慣化」することが目的です。
1月~2月:基礎固め期
- 専門科目の基礎知識をテキストで整理
- 過去問(Ⅱ-1中心)を解き、キーワード理解を深める
- 筆記力を意識して、短い答案を書く練習を開始
→ この時期は平日2時間、休日4~5時間を確保したいところです。また、この時期はあまり解答時間を気にする必要はありません。
3月~4月:応用強化期
- 過去問5~6年分を通して演習(Ⅱ-1、Ⅱ-2を中心に)
- 書いた答案を添削してもらい、改善点を明確にする
- 弱点分野の集中補強
→ 学習時間は週15~20時間を目安に。「答案を形にする」訓練を本格化します。
5月:総合演習期
- 本番形式で答案練習(120分で1問解答)を繰り返す
- 模擬試験を受けて実力を確認
- 分野横断的な知識整理(社会的背景、最新技術動向など)
→ 本番を想定した時間配分練習が重要。答案の完成度を一気に高める時期です。また、解答時間を試験本番と同じにしてください。時間内で解答できることはとても重要です。正直、この時期になると時間さえあれば、ほとんどの人がAになる解答を書くことができます。しかし、時間の制約があるとそれができません。「時間内」に解答することはとても重要です。
6月:仕上げ期
- 苦手分野を最終確認
- これまでの演習答案を見直し、表現や論理展開を磨く
- 暗記事項(定義、キーワード、フレームワーク)を整理
→ この時期は「新しいことに手を出さない」ことが鉄則。また、可能であれば模擬試験を受けましょう。
7月(試験直前)
- 体調管理を最優先
- 本番で書く流れをイメージし、シミュレーションを繰り返す
- 前日は無理に勉強せず、早めに休む
受験経験者(2月~3月開始)のスケジュール例
経験者の場合、前年からある程度知識や答案の型を持っているため、短期集中で勝負することも可能です。ただし、計画はさらに緻密にしなければなりません。
- 2月:過去問演習をスタート。弱点をあぶり出す。
- 3月~4月:答案練習を週3~4本行い、改善を繰り返す。
- 5月:模擬試験を受け、本番を想定した訓練を徹底。
- 6月:仕上げ。書き慣れたテーマで確実に得点できる答案を固める。
短期間であっても、週20時間程度の学習を継続できる人でなければ厳しいのが現実です。経験があるからといって油断せず、計画に基づいて学習を積み重ねましょう。

まとめ ― 計画が努力を成果に変える
技術士二次試験は、単に努力すれば合格できる試験ではありません。長期間にわたる努力を「合格に直結する努力」に変えるには、明確な学習計画が欠かせません。
- 長期戦を見据えたスケジュールを描くこと。
- 自分の弱点を把握して克服すること。
- 過去問を徹底的に分析し、出題者の意図を読み取ること。
この3本柱を踏まえた計画を立てれば、1000時間以上に及ぶ学習を無駄なく積み上げることができます。
試験当日に「やるべきことはすべてやった」と自信を持って臨めるかどうかは、今この瞬間の計画にかかっています。今日から具体的なスケジュールを描き、一歩を踏み出してみてください。それが合格への確実な道筋となるはずです。