副題:忙しい社会人技術者が合格に近づく時間設計
プロローグ:時間がないのは、特別な事情ではない
坂戸市・ベイカー街221B
机の上には、技術士二次試験の過去問題、業務予定表、家庭の予定を書き込んだカレンダーが並んでいる。
ワトソン博士は、カレンダーを見つめたまま、眉間にしわを寄せていた。~
ワトソン博士
「ホームズ、これは難事件だ。
技術士二次試験の勉強をしようにも、時間がない。
平日は仕事で疲れ切っている。
休日は家族の用事がある。
出張もある。
突発対応もある。
これでは、勉強時間など作れないではないか」
シャーロック・ホームズ
「ワトソン君、君の言葉は多くの受験生の本音だろう。
だが、まず一つ確認しておこう。
技術士二次試験の受験者の多くは社会人だ。
しかも、現場の第一線で働くエンジニアである。
時間にゆとりのある人など、ほとんどいない」
ワトソン
「それはそうだ。
仕事で優秀だからこそ、技術士を受ける。
責任ある立場にいるからこそ、時間が奪われる」
ホームズ
「その通りだ。
だから、『忙しいから勉強できない』は事実ではある。
しかし、それを理由にして合格できる試験ではない」
ワトソン
「厳しいな」
ホームズ
「厳しい。
だが、それが現実だ。
技術士二次試験は、時間に余裕のある人だけが受ける試験ではない。
忙しい技術者が、自分の責任と生活の中で、どう時間を作り出すかを問う試験でもある」
ワトソン
「勉強時間の確保も、技術者としてのマネジメント能力の一部ということか」
ホームズ
「その通りだ。
現実を嘆くのではなく、制約条件として扱う。
それがエンジニアの仕事だ」
第1章:まず「何時間必要か」より「何に時間を使うか」を考えよ
ワトソン
「受験生が最初に気にするのは、何時間勉強すれば合格できるかだろう。
300時間か、500時間か、1000時間か。
目安が欲しくなる」
ホームズ
「自然な悩みだ。
だが、時間数だけを見ても判断を誤る」
ワトソン
「なぜだ?」
ホームズ
「同じ100時間でも、中身が違うからだ。
参考書を眺めた100時間。
過去問の骨子を作った100時間。
答案を書き、添削を受け、書き直した100時間。
この三つは、同じ100時間ではない」
ワトソン
「たしかに、効果はかなり違う」
ホームズ
「技術士二次試験で重要なのは、勉強時間の総量だけではない。
時間を、どの作業に配分したかである」
ワトソン
「具体的には?」
ホームズ
「時間は、大きく五つに分けるべきだ」
- 問題文を読む時間
- 知識を整理する時間
- 答案骨子を作る時間
- 答案を書く時間
- 添削結果を見直し、書き直す時間
ワトソン
「多くの受験生は、1と2に偏りそうだな」
ホームズ
「その通りだ。
読む時間、調べる時間、動画を見る時間は増えやすい。
しかし、合格に近づくには、3から5の時間が必要だ。
つまり、考えて、書いて、直す時間である」
ワトソン
「知識を入れるだけではなく、答案に変える時間が必要なのだな」
ホームズ
「そうだ。
勉強時間を確保するとは、机に座る時間を増やすことではない。
答案力につながる作業時間を確保することなのだ」
第2章:時間がない受験生ほど、計画が必要である
ワトソン
「時間がないからこそ、計画が大事ということか」
ホームズ
「当然だ。
時間に余裕がある人なら、多少の無駄も吸収できる。
しかし、多くの受験生はそうではない。
平日は仕事。
夜は疲労。
休日は家庭。
女性の場合は、家庭や子育ての負担が重なり、さらに厳しい状況になることもある」
ワトソン
「それは現実だな。
本人の努力不足だけでは片付けられない」
ホームズ
「その通りだ。
だからこそ、精神論で済ませてはいけない。
『頑張れば何とかなる』では、計画とは言えない。
制約条件を見える化し、使える時間を設計する必要がある」
ワトソン
「どう設計する?」
ホームズ
「まず、一週間を分解する。
平日朝に使える時間。
通勤時間。
昼休み。
帰宅後の短時間。
休日のまとまった時間。
家族の予定。
仕事の繁忙期。
これらを先に把握する」
ワトソン
「何となく勉強しよう、では駄目なのだな」
ホームズ
「駄目だ。
技術士二次試験では、何となく空いた時間を待っていても、時間は生まれない。
時間は余るものではない。
作るものだ」
ワトソン
「かなり厳しい言い方だが、その通りだ」
ホームズ
「環境のせいにして試験に受かる人はいない。
これは冷たい言葉ではない。
現実を受け止めるための言葉だ。
現実を直視しなければ、改善策は出ない」
第3章:まとまった時間だけを待つな
ワトソン
「しかし、答案を書くにはまとまった時間が必要だろう。
忙しい受験生には、そこが難しい」
ホームズ
「確かに、答案全文を書くには一定の時間が必要だ。
だが、勉強のすべてにまとまった時間が必要なわけではない」
ワトソン
「どういうことだ?」
ホームズ
「勉強を分解すればよい。
15分でできること。
30分でできること。
60分以上必要なこと。
これを分ける」
ワトソン
「例えば?」
ホームズ
「15分なら、問題文を読み、設問の要求事項に線を引く。
30分なら、課題を三つ出し、最重要課題を選ぶ。
60分あれば、答案骨子を作る。
90分以上あれば、答案本文を書く」
ワトソン
「なるほど。
短い時間でも、やれる作業はある」
ホームズ
「そうだ。
多くの受験生は、『今日は2時間取れないから勉強できない』と考える。
しかし、それは誤りだ。
15分あれば、問題文は読める。
20分あれば、課題候補は出せる。
短い時間を捨てる者は、社会人受験では不利になる」
ワトソン
「細切れ時間も、使い方次第か」
ホームズ
「そうだ。
ただし、注意がある。
細切れ時間でできることと、まとまった時間でやるべきことを混同してはいけない。
通勤中に答案全文を書くのは難しい。
しかし、キーワード確認や問題文の読み込みならできる。
休日のまとまった時間は、答案作成や書き直しに使うべきだ」
第4章:朝・昼・夜で勉強の役割を分ける
ワトソン
「社会人受験生は、どの時間帯を使うのがよいのだろう?」
ホームズ
「人による。
だが、時間帯ごとに向く作業はある」
ワトソン
「聞かせてくれ」
ホームズ
「朝は、頭が比較的整理されている。
短時間でも、骨子作成や問題文の分析に向く。
昼休みは、短い確認に向く。
前日に作った骨子の見直しや、キーワードの整理がよい。
夜は疲労があるため、重い判断には向かないこともある。
その場合は、添削結果の確認、資料の読み直し、短い修正に使う」
ワトソン
「夜に無理に答案を書いて、疲れて崩れることもあるな」
ホームズ
「そうだ。
疲労した頭で無理に答案を書くと、同じ誤りを繰り返すことがある。
もちろん、夜しか時間がない人もいる。
その場合は、最初から長時間を狙わない。
30分で一項目だけ書く。
課題だけ書く。
リスクだけ書く。
そう分ければよい」
ワトソン
「完璧な時間を待つのではなく、不完全な時間を使い切るわけだな」
ホームズ
「その通りだ。
技術士二次試験の勉強時間は、生活の中に割り込ませるものではない。
生活の制約条件に合わせて設計するものだ」
第5章:家庭がある受験生は、時間の交渉も必要である
ワトソン
「家庭がある受験生、特に子育て中の受験生は、さらに厳しいだろうな」
ホームズ
「その通りだ。
ここは軽く扱ってはいけない。
仕事だけでなく、家事、育児、介護、地域の用事がある。
特に女性受験者の場合、本人が優秀であっても、家庭内の負担が大きく、勉強時間を確保しにくいことがある」
ワトソン
「それでも、試験は待ってくれない」
ホームズ
「そうだ。
だからこそ、時間の交渉が必要になる」
ワトソン
「交渉?」
ホームズ
「家族に黙って勉強時間を増やそうとすると、無理が出る。
試験までの期間、いつ、どの時間を勉強に使うのかを共有する。
休日の午前だけは答案を書く。
夜の30分は添削結果を読む。
試験直前の数週間は家族に協力を依頼する。
これも立派なマネジメントである」
ワトソン
「家庭内でも、関係者調整が必要なのだな」
ホームズ
「まさにそうだ。
技術士二次試験で『関係者との調整』を書く受験生が、自分の受験勉強では調整できないようでは困る。
もちろん、家庭の事情は簡単ではない。
だからこそ、早めに話し、無理のない形を作る必要がある」
ワトソン
「それは、受験生本人だけでなく、家族の負担も見なければならないということだな」
ホームズ
「その通りだ。
合格のために家庭を壊してはいけない。
しかし、家庭を理由に何もしなければ、合格は遠のく。
ここにも調整が必要だ」
第6章:勉強時間は「量」だけでなく「密度」で決まる
ワトソン
「忙しい受験生は、どうしても勉強時間の量で不利になる。
それをどう補えばよい?」
ホームズ
「密度を上げることだ」
ワトソン
「密度とは?」
ホームズ
「一時間の中で、どれだけ合格に近づく作業をしたかである。
たとえば、ただ参考書を読む一時間と、過去問を読み、課題を三つ出し、解決策を対応させる一時間では、密度が違う」
ワトソン
「答案に直結する作業の方が密度が高いわけだ」
ホームズ
「そうだ。
技術士二次試験では、次のような時間は密度が高い」
過去問の設問要求を分解する時間。
課題を具体化する時間。
解決策を手順で書く時間。
リスクを解決策から導く時間。
添削結果を基に書き直す時間。
ワトソン
「逆に、密度が低くなりやすい時間は?」
ホームズ
「目的のない読書。
動画を眺めるだけの時間。
キーワードを集めるだけの時間。
合格答案を読んで分かった気になる時間。
これらは悪ではない。
しかし、それだけでは答案は変わらない」
ワトソン
「時間がない人ほど、答案に直結する作業を増やす必要があるのだな」
ホームズ
「その通りだ。
忙しい受験生が勝つには、時間の密度を上げるしかない」
第7章:繁忙期を前提に計画を立てよ
ワトソン
「仕事をしていると、どうしても繁忙期がある。
年度末、決算、現場の山場、トラブル対応。
こういう時期は勉強が止まりやすい」
ホームズ
「それも制約条件だ。
だから、計画に入れておく必要がある」
ワトソン
「勉強できない時期も計画に入れるのか?」
ホームズ
「当然だ。
繁忙期を無視した学習計画は、机上の空論である。
三月は仕事が重い。
五月は出張が多い。
六月は家庭行事がある。
それが分かっているなら、先に織り込む」
ワトソン
「計画通りに進まないことを前提にするわけだな」
ホームズ
「そうだ。
技術者なら、リスクを見込んだ計画を立てるべきだ。
受験勉強でも同じである。
勉強時間が減る時期があるなら、その前に骨子練習を進める。
繁忙期は短時間の復習に切り替える。
試験直前に再加速する。
こうした設計が必要だ」
ワトソン
「勉強計画も工程管理だな」
ホームズ
「その通りだ。
工程に余裕を持たせない計画は、現場でも試験でも破綻する」
第8章:勉強時間を記録せよ
ワトソン
「時間を作るには、記録も必要だろうか?」
ホームズ
「必要だ。
記録しなければ、現実が見えない」
ワトソン
「どの程度記録すればよい?」
ホームズ
「細かすぎる必要はない。
日付、時間、内容、成果。
これだけでよい」
10月8日 30分 R6必須問題を読む 課題候補を3つ作成
10月9日 45分 骨子作成 解決策2が課題と不一致
10月10日 60分 答案1枚作成 リスクが課題の再掲になった
ワトソン
「成果まで書くのが重要だな」
ホームズ
「そうだ。
『2時間勉強した』だけでは弱い。
何が進んだのか。
何ができなかったのか。
どこを直すのか。
これを記録することで、次の行動が決まる」
ワトソン
「自分の勉強を点検するわけだ」
ホームズ
「その通りだ。
技術士を目指す者なら、自分の学習プロセスも改善対象にすべきである」
第9章:勉強時間を作るとは、何かを捨てることである
ワトソン
「ここまで聞くと、勉強時間を作るには工夫が必要だと分かる。
だが、それでも時間は足りないだろう」
ホームズ
「その通りだ。
だから、最後は何かを捨てる必要がある」
ワトソン
「捨てる?」
ホームズ
「そうだ。
時間は増えない。
一日は24時間である。
仕事、睡眠、家庭、移動を除けば、残りは限られる。
勉強時間を入れるなら、何かを減らすしかない」
ワトソン
「厳しいな」
ホームズ
「厳しいが現実だ。
娯楽を減らす。
スマートフォンを見る時間を減らす。
目的のない調べ物を減らす。
完璧主義を捨てる。
時には、付き合いを減らす必要もある」
ワトソン
「そこまでしなければならないのか」
ホームズ
「合格したいなら、一定期間は必要だ。
ただし、すべてを犠牲にせよと言っているのではない。
試験までの期間、優先順位を変えるということだ」
ワトソン
「つまり、技術士二次試験の勉強時間は、余暇から自然に生まれるものではない。
優先順位を変えて作るものなのだな」
ホームズ
「その通りだ。
環境のせいにしても、答案用紙は埋まらない。
現実を受け止め、配分を変える。
それもエンジニアの仕事である」
第10章:短期間で無理をするより、早く始める
ワトソン
「試験直前に一気に勉強する人もいるだろう。
それでは駄目なのか?」
ホームズ
「知識の確認なら、直前でもできる。
しかし、答案化能力は短期間では育ちにくい」
ワトソン
「なぜだ?」
ホームズ
「答案力は、書いて、直して、また書くことで伸びる。
このサイクルには時間がかかる。
一夜漬けでは、答案の癖は直らない」
ワトソン
「文章の悪い癖、課題設定の粗さ、リスクのずれ。
確かに、すぐには直らない」
ホームズ
「そうだ。
だから、忙しい社会人ほど早く始める必要がある。
まとまった時間が取れないなら、期間を長く取るしかない」
ワトソン
「短期集中が難しいなら、長期分散か」
ホームズ
「その通りだ。
毎日30分でも、半年続ければ相当な時間になる。
重要なのは、開始を遅らせないことだ。
『仕事が落ち着いたら始める』と言う受験生は多い。
だが、仕事は簡単には落ち着かない」
ワトソン
「現場の第一線にいる限り、次の問題が来るからな」
ホームズ
「そうだ。
落ち着いたら始めるのではない。
落ち着かない前提で始める。
それが現実的な受験戦略だ」
エピローグ:時間がないからこそ、合格には意味がある
ワトソン
「ホームズ、今日の話で分かった。
技術士二次試験の勉強時間は、単に何時間必要かという問題ではない。
忙しい中で、どう時間を作り、何に使うかが重要なのだな」
ホームズ
「その通りだ。
受験者の多くは、責任ある社会人技術者である。
現場の第一線で働き、仕事でも成果を出している。
だからこそ、時間はない。
だが、その条件は多くの受験生に共通している」
ワトソン
「女性受験者の場合、家庭や子育ての負担が重なり、さらに厳しい場合もある」
ホームズ
「その現実も見なければならない。
軽く扱ってはいけない。
だが、現実が厳しいことと、環境のせいにしてよいことは別である。
厳しい現実を制約条件として受け止め、その中で最適解を探す。
それが技術者の姿勢だ」
ワトソン
「技術士二次試験の勉強そのものが、工程管理、資源配分、リスク管理の訓練なのだな」
ホームズ
「その通りだ。
そして、技術士法第1条は、技術士制度の目的を、科学技術の向上と国民経済の発展に資することとしている。e-Gov 法令検索
その役割を担う者が、制約条件の前で立ち止まってはいけない」
ワトソン
「厳しいが、筋は通っている」
ホームズ
「技術士二次試験は厳しい。
だが、厳しいからこそ、合格には価値がある。
時間がない中で、考え、書き、直し、合格に近づく。
その過程は、単なる受験勉強ではない。
技術者としての自分を鍛える工程なのだよ」
ワトソン
「では、最初にすべきことは何だ?」
ホームズ
「一週間の時間を棚卸しすることだ。
使える時間を見つける。
捨てる時間を決める。
短時間でできる作業と、まとまった時間でやる作業を分ける。
そこから始めるのだ。
合格答案は、時間に余裕ができた日に突然生まれるのではない。
限られた時間を積み重ねた先に生まれる」
まとめ
技術士二次試験の受験者の多くは、現場の第一線で働く社会人技術者である。
仕事でも責任を持ち、家庭や子育てを抱える受験者も多い。
時間にゆとりがある人は少ない。
だからこそ、勉強時間は「余った時間」ではなく、「作り出す時間」と考える必要がある。
まず、一週間の生活を棚卸しし、短時間でできる作業と、まとまった時間で行う作業を分ける。
細切れ時間では問題文の読み込みやキーワード整理を行い、まとまった時間では答案骨子作成や答案作成に集中する。
重要なのは、時間数だけではない。
何に時間を使ったかである。
読むだけの時間ではなく、考え、書き、直す時間を確保しなければならない。
環境のせいにしても、答案は改善しない。
厳しい現実を制約条件として受け止め、その中で最適な勉強時間を設計する。
それが、技術士二次試験に向き合う社会人技術者の現実的な姿勢である。

私(匠)は『日本シャーロック・ホームズ・クラブ』の正式会員です。
「日本シャーロック・ホームズ・クラブ(JSHC)」は、1977年に設立された日本最大級のシャーロック・ホームズ愛好家(シャーロキアン)の親睦団体です。全国に約700名の会員を擁し、専門的な研究からファンの交流まで幅広い活動を行っています。
【主な活動と特徴】
・イベントの開催: 毎年春と秋の「全国大会」のほか、東京や軽井沢でのセミナー、月例会などを開催しています。
・出版物の発行: 機関誌『ホームズの世界』や研究書の出版、関連事典の制作協力などを行っています。
・入会のしやすさ: 論文の提出義務などはなく、ホームズを愛する気持ちがあれば誰でも気軽に参加できるウェルカムな雰囲気のクラブです。








