【技術士試験】ホームズの文章講義:魔術的接続詞「ブリッジ」の秘密~読み手を迷子にさせない「論理の架け橋」~

~坂戸市、ベイカー街221B。依頼人の手紙を暖炉にくべようとしているホームズ~

知識はあるのにB判定(不合格)になってしまう人の多くが、この「ブリッジ(論理の接続)」で失敗しています。これは非常に重要なテクニックですので、ホームズとワトソンの対話を通して、視覚的かつ論理的に解説してもらいましょう。

ワトソン博士 「おいホームズ、やめたまえ! それは昨日届いたばかりの調査報告書だろう? なぜ燃やそうとするんだ」

シャーロック・ホームズ 「読むに堪えないからだよ、ワトソン君。 この報告書には、重要な事実は全て書かれている。数値も正確だ。だが、私はこれを読んでいると、まるで目隠しをされて迷路を歩かされているような気分になる。 『Aの話をしていたと思ったら、突然Bの話になる』。 この依頼人には、『ブリッジ(Bridge)』という概念が欠落しているようだ」

ワトソン 「ブリッジ? 橋のことか?」

ホームズ 「文章における『論理の架け橋』のことだよ。 これがない文章は、技術士試験の論文やビジネス文書において致命的だ。 いい機会だ。多くの技術者が無自覚に犯しているこの『接続の罪』について、講義といこうじゃないか」

第1章:文章の川に「橋」を架けろ


ホームズ 「まず、文章を読むという行為を、『川を渡る』ことに例えてみたまえ」

ホームズ 「前の段落(話題A)から、次の段落(話題B)へ移るとき、そこには必ず『文脈の断絶』という川がある。

ブリッジがない状態: 読み手は、向こう岸へ行くために自力でジャンプしなければならない。『えっ、なんで急にこの話になったの?』といちいち立ち止まり、脳のスタミナを消耗する。

ブリッジがある状態: 川に橋が架かっている。読み手は何も考えず、スムーズに向こう岸へ渡れる。

試験官は短時間で何百通もの論文を読む。いちいちジャンプを強要する論文は、それだけで『論理構成が甘い』と判断され、ゴミ箱行きだ」

ワトソン 「なるほど。『次はこういう話をしますよ』という案内板のようなものか」

ホームズ 「その通り。具体的には、前の段落と次の段落の関係性を明らかにする『接着剤』となる言葉や一文のことだ。これを使いこなすための3つの基本パターンを教えよう」

第2章:ホームズ流・3つの架橋テクニック


ホームズ 「ブリッジには大きく分けて3つの型がある。これを使い分けるだけで、君の文章は劇的にプロフェッショナルになる」

① 逆接・対比のブリッジ(視点を切り替える)
ホームズ 「前の段落と『違う視点』や『反対の要素』に移るときに使う橋だ」

キーワード: 「一方」「他方」「しかし」「~である反面」
使用例: 「コスト面では大きなメリットがある。一方、品質確保の観点からは以下の課題が残る。」

ワトソン 「『いい話』から『悪い話』に変えるときの合図だな」

② 因果・承継のブリッジ(バトンを受け継ぐ)
ホームズ 「前の段落の結果を受けて、次の段落を展開するときに使う橋だ。これが最も論理性が出る」

キーワード: 「したがって」「以上のことから」「これらを踏まえ」「その結果」
使用例: 「~という調査結果が得られた。これらの結果を踏まえ、次章では具体的な設計手法について述べる。」

③ 並列・付加のブリッジ(情報を積み上げる)
ホームズ 「前の話に、さらに別の要素を付け加えるときに使う橋だ」

キーワード: 「また」「さらに」「加えて」「これらに加え」
使用例: 「ハード面での対策は上記の通りである。加えて、ソフト面での対策として以下の避難計画を策定する。」

第3章:実録・「合格」と「不合格」の分かれ道


ワトソン 「理屈は分かったが、実際にどれほど効果があるものなのか?」

ホームズ 「論より証拠だ。具体的なケーススタディを見てみよう。ここにある『不合格答案』と、私が修正した『合格答案』を比べてくれたまえ」

ケース1:相反する要件(経済性 vs 環境性)を論じる場面
【× ワトソン君の書いた悪い例(ブリッジなし)】

急速施工を実現するため、発破掘削工法を採用し、サイクルの短縮化を図ることで工期を20%短縮する計画とした。

周辺には住宅地が近接しているため、防音扉の設置や低周波音対策を実施する。

ホームズ 「見てくれたまえ。前半では『ガンガン掘るぞ(イケイケ)』という話をしていたのに、次の行で急に『静かにします(慎重)』という話になっている。 これでは読み手は、『なぜ急に弱気になった?』と混乱する。『工期短縮のメリット』と『騒音のデメリット』の衝突(トレードオフ)が見えてこない」

【◎ ホームズの修正案(ブリッジあり)】

急速施工を実現するため、発破掘削工法を採用し、サイクルの短縮化を図ることで工期を20%短縮する計画とした。しかし、発破工法は経済性に優れる反面、振動や騒音による周辺環境への影響が懸念される。

そこで、このデメリットを解消し、住民の理解を得るための環境対策として、防音扉の設置や低周波音対策を実施する。

ワトソン 「おお! 全く違う! 『しかし~反面』でリスクを認め、『そこで~対策として』で解決策につなげている。 これなら、『工期も守りたい、でも環境も守らなきゃいけない。だからこれをやるんだ』という技術者の意思決定プロセスが手に取るように分かるぞ」

ケース2:調査結果から対策へ移行する場面(事実 vs 対策)

【× ワトソン君の書いた悪い例(ブリッジなし)】

事前のボーリング調査の結果、切羽前方50m区間に未固結の帯水砂層が確認された。透水係数はk=10^-3cm/secオーダーである。

切羽の崩落防止対策として、薬液注入工法および鏡吹付けコンクリートを併用する計画とした。

ホームズ 「不親切極まりない。『砂層がある(事実)』と『薬液注入をする(行為)』の間に、『なぜそれが必要なのか(工学的判断)』が抜け落ちている。これではテレパシーが必要だ」

【◎ ホームズの修正案(ブリッジあり)】

事前のボーリング調査の結果、切羽前方50m区間に未固結の帯水砂層が確認された。透水係数はk=10^-3cm/secオーダーである。このような地盤条件下で漫然と掘削を行えば、地下水の流出に伴う切羽の大規模崩落や、地表面の陥没を招く危険性が極めて高い。

したがって、地山の自立性を高め、止水性を確保するための補助工法として、薬液注入工法および鏡吹付けコンクリートを併用する計画とした。

ホームズ 「『危険性が高い』という解釈を挟み、『したがって』でつなぐ。 このブリッジがあるだけで、単なる『工法の選定』が、『リスク評価に基づいた高度な工学的解決』へと格上げされるのだよ」

エピローグ:見えない「行間」を支配せよ


ワトソン 「驚いたな。たった数文字、数行のつなぎ言葉を入れるだけで、文章の説得力がここまで変わるとは」

ホームズ 「それがブリッジの魔術だ。ワトソン君、これからは文章を書いた後、段落と段落の間を指で指しながら自問したまえ。 『ここをつなぐ橋(なぜなら、しかし、そのために)は架かっているか?』とね。 それだけで、君の報告書が燃やされることはなくなるはずだよ」

ワトソン 「分かったよホームズ。……ところで、さっき燃やしかけた報告書、よく見たら君が先週書いたものじゃないか?」

ホームズ 「……おや、そうだったかな? 人間の記憶とは曖昧なものだね」

【まとめ】合格答案に変わる「ブリッジ」チェックリスト


最後に、ホームズの講義の要点をリストにしました。論文を書いた後の「見直し」にお使いください。

  1. ブリッジの3大パターン
    【逆接・対比】 視点を変えるとき

キーワード: 「一方」「しかし」「~である反面」「他方で」

【因果・承継】 結果を受けて展開するとき

キーワード: 「したがって」「以上のことから」「これらを踏まえ」「その結果」

【並列・付加】 情報を追加するとき

キーワード: 「また」「さらに」「加えて」「これらに加え」

  1. ブリッジの効果
    唐突感を消す(読み手のストレスを減らす)

思考プロセスを見せる(「事実」→「解釈」→「対策」の流れを作る)

説得力を高める(前の段落を「根拠」に変える)

  1. 自問自答アクション
    段落と段落の間を指で指し、「ここをつなぐ接続詞はあるか?」と確認する。

もし接続詞がない場合、「なぜ次の段落の話をするのか?」という理由を一文書き足す。

この記事を書いた人

匠 習作

代表:匠 習作(たくみ しゅうさく・本名は菊地孝仁)
開講10年の歴史/総受講者数650名以上/web授業の先駆者

皆さん、こんにちは!「ロックオン講座」主宰の匠習作です。
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