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技術士二次試験の「手書き」
技術士二次試験の筆記試験では、5時間30分で計5,400文字の論文を手書きする必要があります。
普段の業務では報告書も提案書もすべてPCで作成し、手書きする機会はメモくらい、そんな方も多いのではないでしょうか。しかし試験では原稿用紙9枚分もの論文を、限られた時間内に書き上げないといけません。
受験者がこの現実に直面したとき、初めてその難しさに気づきます。
「手書きのスピードが追いつかないのでは?」
「時間内に書き終わらなかったらどうしよう…」
という不安を抱える方もいるでしょう。
シンプルに書き続けるだけでもハードな作業ですが、実際には「問題を読む時間」「骨子を作成する時間」「見直しの時間」も含みます。普段ほとんど手書きをしない現代の技術者にとっては、これは想像以上にハードルの高い挑戦です。
しかし、適切な対策を段階的に実践すれば、PC世代の技術者でも必ず克服できます。
今回は技術士二次試験の手書き対策について、基礎知識から具体的なトレーニング方法、試験当日のテクニックまで、合格に必要なすべてを解説します。
技術士二次試験における手書きの実態
試験の基本情報
技術士二次試験の筆記試験は、以下のような構成で実施されます。
試験時間
- 午前:2時間(必須科目)
- 午後:3時間30分(選択科目)
- 合計:5時間30分
総記述量
- 最大5,400文字(原稿用紙9枚分)
- 必須科目:1,800文字(原稿用紙3枚)
- 選択科目:3,600文字(原稿用紙6枚)
試験形式
- すべて記述式(論文形式):HBまたはBの鉛筆、シャープペンシル、消しゴム
なぜ手書きなのか?
公式に明確な理由は公表されていません。以下のような理由が考えられます。
大規模試験運営の現実的な困難さ
技術士試験は年間約2万3千人が受験する大規模試験です。全国12地区で同時に、5時間30分にわたって行う試験に対して大量のPCを準備し、システムを安定稼働させるには、莫大なコストとリスクが伴います。
論述試験の特性(図表含む)
技術士試験は記述式(論文形式)であり、複雑な論理展開を文章で表現する必要があります。受験者によっては図表や数式を用いて説明する場合もあり、こうした多様な表現方法をCBT化するには、高度なシステム開発が必要です。

手書きによって起こりやすい問題と対策
単純に手書きスピードが遅い
手書きの機会が少なくなっている方が最初に直面するのが、シンプルに手書きスピードの不足です。
600文字の原稿用紙1枚を25分程度で書けることが理想です。
これより時間がかかる場合、骨子作成や見直しの時間が圧迫され、完成度の高い答案を作ることが難しくなります。
対策
手書きスピードは、いきなり上がるものではありません。段階的に練習することが重要です。
まず、現在の自分のスピードを正確に把握します。600文字の原稿用紙を用意し、技術士試験の過去問から1つのテーマを選んで、タイマーをセットして書いてみます。何分で書き終わったか記録します。これが現在地です。
次に、毎日少しずつスピードを上げる練習をします。いきなり目標スピードで書こうとすると、字が乱れすぎて読めなくなります。例えば、最初は30分で600文字を書く練習から始め、1週間続けたら28分に挑戦する、という具合に、2分ずつ短縮していきます。この「小刻みな改善」が、無理なくスピードを上げる鍵です。
練習では、ただ書くだけでなく、時間を意識することが重要です。例えば「5分経過時点で何文字書けているべきか」を事前に計算しておき、5分ごとに進捗を確認します。20分で600文字なら、5分で150文字、10分で300文字という具合です。このペース配分を体に染み込ませることで、本番でも時間切れを防げます。
スピードアップのもう一つの秘訣は、よく使う表現をパターン化して、考えずに書けるようにすることです。技術士試験では、定型的な表現が頻繁に登場します。例えば「〜が課題である」「〜の観点から検討する」「〜のリスクがある」「〜を考慮する必要がある」といった表現は、どの論文にも出てきます。
これらの定型表現を、何も考えずに手が動くレベルまで練習しておけば、その分だけ時間を節約できます。
単純な漢字が思い出せない
PCやスマホの自動変換に頼りがちな現代では、珍しくないことといえるでしょう。
「漢字を書く」「思い出す」という行為から離れていると、漢字を認識することはできても、記憶から再生する能力は著しく低下します。
また普段、書けていたはずの漢字をなぜか試験本番では「度忘れ」してしまい、思い出すことに時間をかけてしまい焦ってしまう・・・というケースもあるかもしれません。
対策
全ての漢字を完璧にする必要はありません。自分の部門の頻出語だけを集中的に練習すれば十分です。
具体的には、過去問5年分を見て、自分が書けなさそうな専門用語を50〜100語程度抽出します。そして実際に紙に書いてみて、書けなかった語だけをマークします。翌日からは、書けなかった語だけを1日5回ずつ書く練習を繰り返します。
この練習は1日10分程度で終わります。2週間も続ければ、よく使う専門用語は自然に手が動くようになります。
多くの受験者が陥る罠は「完璧主義」です。「専門家なのに漢字が書けないなんて恥ずかしい」「1つでも間違えたら不合格かも・この漢字ミスですべてが台無しになるかも・・・」といった不安が、試験中の焦りを生みます。
試験中に漢字が出てこなかったら、「あ、出てこない。まあいいか」と割り切って、別の言い方で進めることです。そして次の論点に集中する。このくらいの「割り切り」が、5時間30分の長丁場を乗り切るために必要なマインドセットです。
誤字脱字だらけの論文はまた別の話になってきますが、大切なのは漢字で立ち止まらず、論理的な文章を最後まで書き切ることです。この事実を心に刻んでおけば、試験中の無用な焦りを防ぐことができます。
丁寧な文字が書けない
技術士試験の採点者は、限られた時間で大量の答案を読みます。汚い文字の答案を読むのは、採点者にとって大きなストレスですが、それ以上に「そもそも部分的に字が判別しにくい=全体的に何を書いてあるのかが分かりにくい」とマイナス評価につながる可能性があります。
「習字のような美しさ」が求められているわけではありません。求められているのは「読みやすさ」です。
対策
多少字が下手でも、文字の大きさが揃っていてバランスが取れていれば、十分に読みやすい答案になります。
また自分の字の視認性について確認したい場合には、Google keep(グーグル キープ)を使うと便利です。無料で提供されているメモ・ノートアプリになります。
OCR(光学文字認識)機能があり、手書き文字を自動でテキスト化できます。これを使えば、自分の文字が客観的にどれくらい読みやすいかチェックできます。90%以上正確に認識されている場合には、十分に読みやすい文字といえるでしょう。
YouTubeでもGoogle keepについては何度か言及しているので、使い方をチェックしてみてください。簡単に出来ます。
【技術士二次試験】手書きの文字が判読できるかどうかは、Google keepで調べてみる。
長時間の筆記による身体的疲労
5時間30分という長時間、手書きで論文を書き続けるのは想像以上に過酷です。
- 手の痛み、指の硬直
- 肩こり、首の痛み
- 腕全体の疲労
- 集中力の低下
さらに、技術士試験は毎年7月中旬、梅雨から酷暑の時期に実施されます。体力的な消耗も加わり、午後の選択科目では疲労がピークに達します。
対策
ある程度スピードが上がってきたら、本番と同じ条件での実践練習が不可欠です。週に1回は、5時間30分の模擬試験を行います。午前2時間で1,800文字、午後3時間30分で3,600文字を、実際に手書きで書き上げます。
この練習で重要なのは、途中で手を止めないことです。本番では、手が痛くなっても、疲れても、書き続けなければなりません。その感覚を事前に体験しておくことで、本番での心理的余裕が生まれます。また長時間書き続けることで、手の筋肉が鍛えられ、持久力も向上します。
模擬試験では、昼食の取り方も試してみるべきです。満腹になると午後の集中力が落ちるため、腹八分目に抑える練習が必要です。また、午後の試験開始直前に軽いストレッチをすると、手の疲労が軽減されることも実感できるはずです。
また、試験本番では使い慣れた筆記具を準備するようにしましょう。
長時間手書きで論文を書き続けると、普段使わないペンでは早い段階で手が疲れたり痛くなったりして後半のスピードが落ちてしまいます。試験の1ヶ月前から、本番で使う予定の筆記用具で練習しておくことをお勧めします。グリップの硬さ、芯の太さ、重さなど、自分の手に馴染んだものが最も疲れにくく、最後まで安定したスピードを保てます。

まとめ
手書きスピードの不足、漢字の度忘れ、文字の読みにくさ、長時間の疲労という4つの課題は、それぞれ具体的な対策で解決できます。重要なのは完璧を目指さず、段階的に改善していくことです。600文字を25分程度で書けるスピード、頻出専門用語50〜100語の習得、読みやすい文字、そして5時間30分の持久力。これらを計画的に鍛えることで、手書き試験への不安は確実に解消されていきます。







