令和8年の年が明けましたので、ここで詳しく改訂内容をご説明します。
この改訂は、DX(デジタルトランスフォーメーション)、多様性(ダイバーシティ&インクルージョン)、持続可能性(サステナビリティ)といった現代的なテーマが色濃く反映されています。
以下に、変更のポイントと具体的な対策をまとめます。

文書から読み取れる主な変更点は以下の4つの領域です。
1. 改訂のポイントとキーワード分析
① 問題解決:データ活用と多角的な視点
- 変更点: 問題の内容を明確にするプロセスにおいて、「必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し」という文言が追加されました 。
- 変更点: 解決策の検討において、「多角的な視点を考慮し、ステークホルダーの意見を取り入れながら」という文言が追加されました 。
- 分析: 経験や勘だけでなく、「データ(エビデンス)」に基づく問題提起と、独りよがりではない「関係者(ステークホルダー)との合意形成」が必須要件となりました。
② コミュニケーション:IT活用と包摂性
- 変更点: 「情報技術を活用し」という文言が追加されました 。
- 変更点: 「明確かつ効果的な意思疎通」から「明確かつ包摂的な意思疎通」へ変更され、「協働すること」が追加されました 。
- 分析: 単に伝えるだけでなく、WEB会議やチャットツール等のITを活用しつつ、多様な立場の相手を仲間外れにしない(インクルーシブな)姿勢と、共に働く(コラボレーション)姿勢が求められます。
③ 技術者倫理:経済性と持続可能な成果
- 変更点: 影響予見の対象が「文化」から「経済」へ変更されました(社会、経済及び環境)。
- 変更点: 「次世代にわたる社会の持続性の確保」から「次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成」を目指す表現に変わり、「文化的価値を尊重すること」が明記されました 。
- 分析: 従来「文化」となっていた箇所が「経済」に置き換わり、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGsの3側面(環境・社会・経済)を意識した倫理観が求められています。
④ 継続研さん(CPD):変化への適応
- 変更点: 文言が大幅に増え、「新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること」と具体化されました 。
- 分析: 単に単位を取得するだけでなく、「変化への適応」が目的であることが明確化されました。
2. 令和8年度以降を見据えた試験対策
これらの変更は、特に必須科目(Ⅰ)や選択科目(Ⅲ)の記述内容、および口頭試験の回答に直結します。
【筆記試験対策】(論文作成のポイント)
1). 問題抽出のプロセスに「データ」を組み込む
- 対策: 論文中で課題を述べる際、「長年の経験から〜」とするのではなく、「〇〇に関するモニタリングデータ等の情報を分析し、〜という傾向が明らかになったため」といった記述を意識的に盛り込む必要があります。
- キーワード: ビッグデータ、AI解析、センシング技術、オープンデータ活用。
2). 解決策提示に「ステークホルダー」を登場させる
- 対策: 技術的な解決策を提示するだけでなく、「多様な関係者(住民、行政、他分野の専門家など)の意見を聴取する場の設定」や「合意形成のプロセス」を解決手順の一部として記述します。「包摂的(インクルーシブ)」という言葉も使い所です。
3). マネジメントと倫理のバランス(経済・社会・環境)
- 対策: トレードオフの解消案を出す際、コスト(経済)と環境負荷、そして社会受容性のバランスを「持続可能な成果」として着地させる論理構成が必要です。特に「文化的価値の尊重」が倫理に追加されたため、地域固有の文化や歴史への配慮も加点要素になります。
【口頭試験対策】
1). 実務経験の説明におけるIT活用
- 対策: 業務経歴票(実務経験証明書)や口頭説明において、どのようにITツールやデータ解析を用いて業務効率化や意思疎通を行ったかをアピールできるように準備します。
2). 技術者倫理に関する質問への回答
- 対策: 「技術者倫理とは何か」と問われた際、これまでの「公衆の安全」に加え、「将来世代にわたる持続可能な成果(SDGs視点)」や「経済的な視点を含めた総合的な判断」というキーワードを含めて回答できるよう練習が必要です。
3). CPDに関する質問への回答
- 対策: 「継続研さんをどう行っているか」という問いに対し、「セミナー受講」だけでなく、「急速に進化する新技術(AIなど)や社会変化に適応するため、常に最新情報をキャッチアップし、自身の能力をアップデートしている」という適応力を強調する回答が望ましいです。
3. IT/データ活用:感覚から「エビデンス」へ
この変更は、「問題解決」と「コミュニケーション」の2つのコンピテンシーに関わります。
- 改訂の意図: 従来は「問題を明確にし」とだけありましたが、改訂後は**「必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し」となりました 。また、コミュニケーションでも「情報技術を活用し」**が追加されています 。 これは、「経験や勘」だけに頼る技術者ではなく、「客観的な数値(データ)」や「ITツール」を使いこなせる技術者を求めていることを意味します。
- 【試験対策】ここで差がつきます:
- NG例: 「長年の経験から、この設備の老朽化が問題だと判断した。」
- OK例: 「過去10年間の点検データ(ビッグデータ)を分析した結果、特定の条件下で故障率が急上昇する傾向が確認されたため、これを真の問題と定義した。」
- キーワード: DX、ICT、BIM/CIM、i-Construction、AI解析、センシング技術、リモートモニタリング。
4. 包摂性・協働:説得から「合意形成」へ
「問題解決」と「コミュニケーション」において、他者との関わり方がより深くなっています。
- 改訂の意図: 問題解決では**「多角的な視点を考慮し、ステークホルダーの意見を取り入れながら」** 、コミュニケーションでは**「明確かつ包摂的な意思疎通を図り、協働すること」** に変わりました。 「包摂的(インクルーシブ)」とは、一部の人を置き去りにしないことです。単に自分の案を説明して納得させる(説得)のではなく、多様な意見を聞き入れ、共に解決策を作る(協働)姿勢が求められます。
- 【試験対策】ここで差がつきます:
- NG例: 「住民に丁寧に説明を行い、理解を得て工事を進めた。」(一方的)
- OK例: 「多様なステークホルダー(住民、環境保護団体、行政等)が参加するワークショップを開催し、双方向の対話を通じて懸念事項を抽出。計画に反映することで協働体制を構築した。」
- キーワード: ステークホルダー・エンゲージメント、ファシリテーション、合意形成、ダイバーシティ&インクルージョン。
5. 3つの側面:文化から「経済・社会・環境」の統合へ
「技術者倫理」における重要な変更点です。
- 改訂の意図: 影響を予見する対象が、従来の「社会、文化及び環境」から、**「社会、経済及び環境」**に変更されました 。 これはSDGs(持続可能な開発目標)の「トリプルボトムライン(環境・社会・経済)」と一致します。「経済」が倫理の重要項目に入ったことで、コスト意識や事業の継続性も、技術者の倫理的判断の一部とみなされます。(※なお、文化については「文化的価値を尊重すること」として別途明記されました )。
- 【試験対策】ここで差がつきます:
- NG例: 「安全性を最優先し、コストは度外視して最高品質の材料を使用した。」(経済性の無視)
- OK例: 「公衆の安全を確保した上で、**ライフサイクルコスト(経済性)と環境負荷(環境)**のトレードオフを検討し、社会的に受容可能な最適解(社会)を導き出した。」
- キーワード: SDGs、ESG投資、LCC(ライフサイクルコスト)、費用対効果、持続可能性。
6. 変化への適応:学習から「アップデート」へ
「継続研さん」の定義がより動的になっています。
- 改訂の意図: 単に知識を深めるだけでなく、「新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること」 と明記されました。 「昔取った資格や知識だけで仕事をしていないか?」「AIなどの新技術が登場したとき、自分の仕事のやり方を変えられるか?」が問われています。
- 【試験対策】ここで差がつきます:
- NG例: 「毎月、学会誌を読んで知識を維持している。」(受動的)
- OK例: 「**急速な技術革新(AI等)**に対応するため、新たな解析手法を習得し、業務プロセスの変革を実践できる能力を養っている。」
- キーワード: リスキリング、アジャイル、技術革新への追従、業務変革。
| 試験種別 | 対策のアクション |
| 業務経歴票 | 自分が担当した業務の中で、「データを用いた判断」や「関係者との調整」を行った箇所をキーワードで強調する。 |
| 筆記試験(必須科目) | 問題文の背景(DX、少子高齢化、環境問題)に対し、上記4つの視点を網羅した解決策を提案する。特に「経済性」と「倫理」のバランス論述は高得点の鍵になる。 |
| 口頭試験 | 「最近の技術士に求められる資質は何だと思いますか?」と聞かれた際、新旧対照表の変更点(特にデータ活用や変化への適応)を挙げて回答する。 |
まとめ:新コンピテンシー対応チェックリスト
試験勉強や業務経歴の棚卸しをする際、以下の要素が含まれているか確認してください。
- [ ] IT/データ活用: 問題発見やコミュニケーションにデジタル技術を使っているか?
- [ ] 包摂性・協働: 多様な意見を取り入れ、協力して進めるプロセスがあるか?
- [ ] 3つの側面: 環境・社会・経済の視点でリスクや影響を考えているか?
- [ ] 変化への適応: 新しい技術を取り入れ、変わり続ける状況に対応しようとしているか?
この改訂は「形式的な変更」ではなく、「DX時代・SDGs時代に即した技術者像へのアップデート」を意味しています。








