目次
~「前提条件」の罠と、合格答案に潜む「40%の減点」の正体~
プロローグ:受講生からの鋭利な質問
~坂戸市・ベイカー街221B。ワトソンがタブレット端末を見つめて唸っている~
ワトソン博士
「ううむ……。ホームズ、ちょっとこのQ&Aを見てくれないか。技術士試験対策『ロックオン講座』の受講生であるレストレード警部からの質問と、講師の回答だ。
レストレード警部は、建設部門の必須問題によく出てくる『投入できる人員や予算に限りがあることを前提に』という一文について、非常に鋭い疑問を投げかけているんだ」
シャーロック・ホームズ
(パイプをくゆらせながら、画面を一読する)
「ほう。レストレード警部氏は『コストや人材が不足していることは分かり切っているのだから、それを課題に挙げるのは間違いではないか?』と推測しているね。
素晴らしい洞察力だ。多くの受験生が思考停止して『人材不足が課題です』と書く中で、この違和感を持てた時点で、彼は合格圏内に片足を踏み入れているよ」
ワトソン
「だがホームズ、レストレード警部の質問の後半を読んでくれ。
『ただ、過去の解答には、予算不足や人材不足を挙げている解答でも合格しているようです。どう考えるのが正しいのでしょうか?』とある。
レストレード警部の言う通り、『人材不足』と書いて合格している人が現にいるんだ。なら、別にそれを課題にしても良いんじゃないのか?」
ホームズ
「ワトソン君、君はまたしても『生存者バイアス』という迷宮に迷い込んだようだね。
過去の合格論文を絶対の『聖典(満点答案)』だと信じ込んでいるから、そうした矛盾に苦しむことになる。
今日は特別に、『なぜ出来の悪い論文が合格しているのか』という、技術士試験における最大のタブー(禁忌)を暴いてみせようじゃないか」
第1章:「前提条件」は技術者への挑戦状である
ホームズ
「まず、問題文にある『投入できる人員や予算に限りがあることを前提に』という言葉の真意を解き明かそう。
講師の回答にある通り、これは試験委員からの『言い訳の封殺』だ」
ワトソン
「言い訳の封殺?」
ホームズ
「そうだ。もしこの一文がなければ、素人受験生はどう書くと思う?
『予算が足りないので、国に補助金の増額を要求する』
『人が足りないので、採用活動を強化して人員を大量投入する』
……こんな解決策を平気で書いてしまうのだよ」
ワトソン
「いけないのか? 実際、それが一番手っ取り早い解決策じゃないか」
ホームズ
「それは『政治家』や『経営者』の解決策であって、『技術士(プロフェッショナル・エンジニア)』の解決策ではないからだ。
予算を引っ張ってくるのは政治の手腕だ。人を採用するのは人事部の仕事だ。
技術士の使命とは、『限られた資源(予算・人員)という絶望的な制約の中で、専門的学識(技術・知恵)を使って最適解を捻り出すこと』なのだよ。
だから試験委員は、わざわざ問題文に『お金も人もない前提ですよ』と書き添える。
これは、『金と人で殴る物理作戦は禁止です。さあ、あなたの技術力をみせてください』という、挑戦状なのだ」
第2章:合格答案に潜む「40%の間違い(アラ)」の正体
「なるほど……。前提条件とは『思考のキャンバス(枠組み)』なんだな。
だとすれば、レストレード警部の言う通り、『お金がない、人がいない』という前提条件そのものを『課題』として書くのは、明らかにおかしい。キャンバスの枠について文句を言っているようなものだ」
ホームズ
「その通り。講師も『分かり切っていることを課題に挙げるなという直感は正しい』と明言している」
ワトソン
「じゃあ、なぜだ!? なぜレストレード警部が見た過去の合格論文では、『人材不足』を堂々と課題に挙げて、ちゃっかり合格しているんだ!?
ルール違反をしておいて合格できるなんて、不公平じゃないか!」
ホームズ
(ニヤリと笑い、黒板に大きく数字を書き出す)
【 40点満点中、24点以上でA評価(合格) 】
ワトソン
「……それは、技術士二次試験の採点基準だな。60%以上の得点で合格だ」
ホームズ
「そうだ。君はこの数字の『裏の意味』を考えたことがあるかい?
24点で合格ということは、裏を返せば、『16点分(全体の40%)は間違えて減点されていても、合格答案として世に出回る』ということだ」
ワトソン
「な、なんだって……!?」
ホームズ
「世間に出回っている『合格論文』というものは、決して100点満点の『模範解答』ではない。
むしろ、大半が24点から27点あたりの『ギリギリ合格答案』だ。そこには、論理の飛躍、言葉の誤用、そして『不適切な課題設定』というマイナス要素(減点)が、最大40%も含まれているのだよ」
第3章:「減点」を真似るという自殺行為
ホームズ
「これで謎は解けたはずだ、ワトソン君。
レストレード警部が見た『人材不足を課題に挙げている合格論文』。その論文は、決して『人材不足を課題にしたから評価された(加点された)』わけではない。
真実はこうだ。
『課題設定の項目で「ただの人材不足」を挙げたため、採点官から大きく減点された。しかし、その後の「解決策の技術的工夫」や「リスク評価」の記述が素晴らしかったため、なんとか失点をカバーし、トータルで24点(60%)のラインにしがみついて合格した』
……これが、その論文の本当の姿なのだよ」
ワトソン
「おお……! つまり、その論文の『人材不足』という部分は、真似してはいけない『アラ(欠点)』だったのか!」
ホームズ
「ご名答。
多くの受験生は、『合格者が書いているのだから、これが正解なんだ』と盲信し、他人の論文の『減点箇所』をせっせと書き写している。これは自らマイナス点を取りに行く自殺行為だ。
もし君が、『人材不足が課題です』という減点スタートの論文を書き、さらに解決策の記述でも少しミスをしたらどうなる?
あっという間に持ち点(16点の猶予)を使い果たし、23点以下のB評価で不合格の烙印を押されるだろう」
エピローグ:減点されない「本物の課題抽出」とは何か
ワトソン
「恐ろしい話だ……。過去の合格論文は、参考にするなとは言わないが、疑ってかからなければならない劇薬なんだな」
ホームズ
「その通り。レストレード警部は、その劇薬の『毒』に自らの嗅覚で気づいた。非常に優秀なエンジニアの素質があるよ。
過去の合格者の『アラ』を真似てはいけない。我々は常に、『満点(減点ゼロ)』を目指す論理構造を構築しなければならないのだ。
では、ワトソン君。
『ただの人材不足』と書くのが減点対象(不正解)だとしたら、一体どう書けば、採点官がぐうの音も出ない『満点の課題抽出(正解)』になると思うかね?」
ワトソン
「えっ……? レストレード警部は『〇〇を扱える人材が不足している』と少し工夫して書いていたが、これではダメなのか?」
ホームズ
「良い視点だが、満点には一歩足りない。
後編では、講師の回答をさらに深く解剖し、『不足(状態)』を『技術的課題』へと変換する、魔法の思考プロセスを伝授しよう。
これをマスターすれば、君の論文から『課題設定での減点』は永遠に消え去るだろう」
(後編へ続く)







