【技術士試験】ホームズの分析講義:君の「分析」はただの「感想」だ!

~「比較」なき考察に価値はない~

プロローグ:ワトソンの薄っぺらい報告書~坂戸市、ベイカー街221B。朝の紅茶を淹れる音~

ワトソン博士 (興奮気味に書類を掲げて) 「ホームズ、昨夜の事件についての分析が終わったぞ! 犯人の身長は『かなり高い』。足跡は『大きい』。現場に残された泥は『特殊な成分』を含んでいた。どうだ、完璧な分析だろう?」

シャーロック・ホームズ (書類を一瞥し、鼻で笑う) 「ワトソン君、君はそれを『分析』と呼ぶのかい? 私にはそれは、単なる『感想文』にしか見えないよ。 『かなり高い』とは何センチだ? 『大きい』とは誰と比べてだ? 『特殊』とは通常のロンドンの泥とどう違うんだ? いい機会だ。多くの技術者が勘違いしている『分析(Analysis)』の本当の意味について、講義といこうじゃないか」

第1の謎:「分ける」ことでも「数字」にすることでもない

ワトソン 「感想文だと? 私はちゃんと観察して、事実を書いたつもりだぞ。分析とは『複雑なものを要素に分けること』だろう?」

ホームズ 「それは辞書的な定義に過ぎない。 資料を見てみたまえ。例えば『東京の平均所得は地方より高い』ことを証明するのに、東京を23区に『分ける』必要があるかい? ないだろう。東京と地方の平均値をそのまま並べれば済む話だ 。 つまり、『分けること』は分析の必須条件ではない」

ワトソン 「む……では、数字を使うことか? 私は『180cm』と書けばよかったのか?」

ホームズ 「それも不十分だ。 資料にはこうある。『ネアンデルタール人とクロマニヨン人の頭骨を重ね合わせる』。これには数字は出てこないが、立派な分析だ 。 つまり、『数字を使うこと』も分析の本質ではない」

ワトソン 「分けるのでもない、数字でもない。じゃあ一体、分析とは何なんだ!」

第2の謎:ジャイアント馬場はなぜ「デカい」のか?

にない。 いいかい、ワトソン君。『ジャイアント馬場はデカい』という言葉を聞いて、君はこれを分析だと思うかい?」

ワトソン 「いや……それはただの印象だな。誰が見てもそう思うだろうし」

ホームズ 「その通り。だが、次の図を見たらどうだ?」

ホームズ 「『ジャイアント馬場の身長(209cm)』の隣に、『日本人平均(170cm前後)』『アメリカ人平均』『デンマーク人平均』の棒グラフを並べる 。 これを見た瞬間、君の脳はどう反応する?」
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ワトソン 「『うわっ、本当に規格外に大きいな!』と納得するし、どれくらい大きいか具体的に分かるな」

ホームズ 「そうだ。比較対象(日本人平均など)があることで初めて、ただの『209cm』という数字が、『圧倒的な巨体』という意味(メッセージ)を持つ。

『比較』が言葉に信頼を与え、『比較』が論理を成立させるのだ 。 比較のない考察は、全て独り言に過ぎない」

第3の謎:定量分析の「3つの型」を使いこなせ

験や実務では、もっと複雑なデータを扱わなきゃいけないだろう? 円グラフに折れ線グラフ、ヒストグラムに散布図……。世の中には無数の分析手法がある。それらを全部使いこなすなんて、私には到底無理だよ」

ホームズ (やれやれ、という顔でパイプを置き、3本の指を立てる) 「ワトソン君、君はまた『道具(ツール)』に振り回されているね。 チャートの形に惑わされてはいけない。どれほど複雑に見える分析も、その骨格(ロジック)をレントゲンで見れば、実はたった3つの型の組み合わせに過ぎないのだよ 。 この『3つの型』の本質さえ理解すれば、どんなデータも恐れるに足らない。一つずつ解剖していこう」

① 比較(Comparison)

~「共通の軸」で優劣を暴く~

ホームズ 「まず一つ目は、最も基本的かつ強力な『比較』だ。 これは、量・長さ・重さ・強さなど、何らかの『共通軸』で2つ以上の値を比べる手法だ 。」

ワトソン 「ふむ、A案とB案を比べるようなものか。簡単じゃないか」

ホームズ 「シンプルだからこそ奥が深い。多くの人間は、ただ漫然と並べるだけで満足してしまう。 だが、優れた分析は『軸の選び方』が違う 。 例えば、『ジャイアント馬場』を分析する際、単に『一般人と比べる』だけでは芸がない。 『各国のプロレスラー平均』と比べるのか? 『歴代の日本人バスケットボール選手』と比べるのか? 『どの軸で比べれば、対象の特徴(洞察)が最も鋭く浮き彫りになるか』。この条件設定(軸の整理)こそが、分析者の知性なのだよ 。」

技術士試験での応用: 「従来工法」と「新工法」を比べる際、単に「コスト」だけで比べるのではなく、「安全性」「環境負荷」「施工期間」という多面的な軸で比較し、新工法の優位性を立体的に証明する。

② 構成(Composition)

~「全体と部分」で構造を暴く~

ホームズ 「二つ目は『構成』だ。 これは『全体』と『部分』を比較する手法だ 。 市場シェア、コストの内訳、あるいはジュースの砂糖濃度(全体に対する砂糖の割合)などがこれに当たる 。」

ワトソン 「ああ、円グラフ(パイチャート)でよく見るやつだな 。」

ホームズ 「形はどうでもいい。重要なのは『何を全体(分母)と定義するか』、そして『どの部分(分子)を切り出すか』という『意味合い』だ 。 例えば、『日本のインフラ老朽化』を論じる時、単に『老朽化が進んでいる』と言うのではなく、 『全インフラ(全体)』のうち、『建設後50年を経過する施設(部分)』が『現在20%だが、10年後には60%になる』と示す。 これで初めて、問題の深刻さが構造として理解できるだろう?」

技術士試験での応用: 漠然とした課題を論じるのではなく、「工事全体の事故件数(全体)」のうち、「ヒューマンエラーによる事故(部分)」が何割を占めるかを示し、そこに対策を集中させる根拠とする。

③ 変化(Change)

~「時間軸」でトレンドを暴く~

ホームズ 「三つ目は『変化』だ。 これは、同じものを『時間軸』の上で比較する手法だ 。 売上の推移、体重の変化、ドル円レートの変動などがこれだ 。」

ワトソン 「折れ線グラフの出番だな 。しかしホームズ、時間は流れていくものだ。『軸』として扱うのは難しくないか?」

ホームズ 「いいや、扱える。 例えば、『ある薬を投与する前(Before)』と『投与した後(After)』を比べる。これは立派な『変化』の分析だ。 あるいは、『夜明けのタイミング』をゼロ地点として、そこからの経過時間を重ね合わせる手法もある 。 重要なのは、『過去と比べてどうなったか』、あるいは『このままいくと未来はどうなるか』という『文脈(ストーリー)』をデータで語ることだ」

技術士試験での応用: 「過去10年の労働人口の推移」を示して人手不足の不可逆性を証明したり、「対策実施前後の効果測定」を示して解決策の有効性をアピールしたりする。

ホームズの結論~チャートは「衣装」に過ぎない~

ワトソン 「比較、構成、変化……。言われてみれば、どんな複雑なグラフもこの3つに分類できる気がしてきたぞ」

ホームズ 「その通りだ。 世の中には、バーチャート、ウォーターフォール、ヒストグラムなど、様々な名前のチャートがある 。 だがそれらは、この『3つの思考』を表現するための『衣装(バリエーション)』に過ぎない 。
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比較したいなら → 棒グラフ(バー)

構成を見せたいなら → 円グラフ(パイ)や積上げ棒(スタック)

変化を追いたいなら → 折れ線グラフ(ライン)

ワトソン君、もし君が『どのグラフを使えばいいか分からない』と悩んだら、グラフのカタログを見るのではなく、まず自分の頭にこう問いかけるんだ。 『私は今、何をしたいのか?』 『AとBを比べたいのか(比較)? 内訳を見たいのか(構成)? 移り変わりを見たいのか(変化)?』

この問いに答えが出れば、使うべきチャートは自動的に決まる。それが分析設計の本質(エッセンス)なのだよ 。」

エピローグ:分析とは「軸」を見つける旅

ワトソン 「目が覚めたよ、ホームズ。 私は今まで、『データを集めること』が分析だと思っていた。 だが本当は、『適切な比較の軸(定規)』を見つけ出し、それを使って対象を測ることこそが分析だったんだな」

ホームズ 「その通りだ。

『フェアに対象同士を比べ、その違いを見ること』 。 これさえできれば、君の報告書は『感想文』から、真実を射抜く『分析レポート』へと進化するだろう。

さあ、今日はここまでだ。 次からは、この『比較のメス』を使って、実際の技術士試験の過去問を解剖していこうじゃないか」

【まとめ】ホームズ流「分析」の定義:分析の本質は「比較」である。

比較のない数字や事実は、単なる情報(感想)に過ぎない。
比較することで「意味」が生まれる。

「デカい」ではなく、「日本人平均より30cm高い」と言うことで説得力が生まれる。

定量分析の3つの型(3C)

比較(Comparison): AとBを比べる。
構成(Composition): 全体と部分を比べる。
変化(Change): 過去と現在(時間)を比べる。

次回は、この「3つの型」を武器に、技術士試験の過去問分析へ挑みます。

この記事を書いた人

匠 習作

代表:匠 習作(たくみ しゅうさく・本名は菊地孝仁)
開講10年の歴史/総受講者数650名以上/web授業の先駆者

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