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技術士二次試験で頻出する「SDGs」
技術士二次試験の過去問を分析していると、必ず目にするのが「SDGs(持続可能な開発目標)」というキーワード。
「SDGsは本当に出題されるのか?」
「自分の専門分野とどう結びつければいいのか?」
「SDGsに触れないと減点されるのか?」
このような疑問を持つ受験者は少なくありません。結論から言うと、SDGsは令和元年度以降、ほぼ全ての技術部門で頻出しています。
この記事では、技術士Lock-On講座の指導実績をもとに、SDGsの出題傾向から部門別の論述ポイント、実際の合格論文例まで、受験対策に必要な情報を網羅的に解説します。
「SDGs」とは
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
2015年に国連が掲げており、2030年までの国際目標・つまり世界共通のゴールとなっています。
かなりざっくりいうと、「2030年までに世界をもっと良くするための17個の目標」ということになるでしょう。
なぜ作られた?
そもそもSDGsは突然出てきた概念ではありません。その前身として、2000年に国連が採択した「MDGs(ミレニアム開発目標)」があります。MDGsは2015年までに極度の貧困を半減させるなど一定の成果を上げました。しかし先進国と途上国という二項対立の構図や、環境問題への対応不足などの課題を残し、重大な課題も浮き彫りになりました。
地球環境の限界が可視化された
貧困や紛争、生物多様性の喪失、気候変動、海洋酸性化など、地球の限界(プラネタリ―・バウンダリー)を超える危機的状況が2015年時点で、科学的データとして明確に示されました。
経済成長モデルの持続不可能性
20世紀型の「大量生産・大量消費・大量廃棄」モデルでは、資源枯渇と環境破壊が加速するだけ。特に新興国の経済成長により、このモデルの限界が顕在化しました。
グローバル化による課題の複雑化
もはや一国の努力で解決できる問題ではないことが浮き彫りになりました。国境を越えた相互依存が深まる中、グローバルな協調なしには誰も安全ではない時代になっています。
格差の深刻化
先進国内でも格差が拡大し、「豊かな国の貧困」が社会問題化。途上国支援という枠組みだけでは不十分で、全ての国が取り組むべき普遍的な課題として再定義する必要がありました。
これらの課題を「みんなで協力して解決しよう」というのがSDGsです。SDGsは理想論ではなく、人類が生き延びるための現実的な戦略といえるでしょう。
SDGsの17項目

SDGsの17項目の目標を実際に見ていきましょう。
1. 貧困をなくそう
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困を終わらせる。1日1.90ドル未満で生活する極度の貧困だけでなく、各国の基準による相対的貧困の解消も含む。日本でも子どもの貧困率は約12%と無縁ではない。
2. 飢餓をゼロに
飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。世界では9人に1人が栄養不足。同時に食品ロスの削減も重要課題。
3. すべての人に健康と福祉を
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。感染症対策、母子保健、メンタルヘルス、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成など幅広い。地域包括ケアシステムもこの目標に直結。
4. 質の高い教育をみんなに
すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。初等教育だけでなく、職業訓練やリカレント教育も含む。デジタル・デバイドの解消も課題。
5. ジェンダー平等を実現しよう
ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う。賃金格差、意思決定への参画、家事・育児の偏りなど、先進国でも課題が山積。日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位(2023年)。
6. 安全な水とトイレを世界中に
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。世界で22億人が安全な飲み水を利用できず、42億人が安全に管理されたトイレを使えない。水資源管理と水質改善も含む。
7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する。再生可能エネルギーの拡大、エネルギー効率の改善が鍵。脱炭素社会実現の基盤。
8. 働きがいも経済成長も
包摂的かつ持続可能な経済成長、すべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。過労死、ハラスメント、非正規雇用の問題も含む。経済成長と労働環境改善の両立を目指す。
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。技術士が最も直接的に貢献できる目標。老朽化インフラ更新、Society5.0、DX推進などが該当。
10. 人や国の不平等をなくそう
各国内及び各国間の不平等を是正する。所得格差だけでなく、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、経済的地位などによる差別の撤廃を含む。先進国と途上国の格差も対象。
11. 住み続けられるまちづくりを
包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。防災、交通、住宅、緑地、文化遺産保護など総合的な都市計画。コンパクトシティ構想や地方創生もこの目標に関連。
12. つくる責任つかう責任
持続可能な生産消費形態を確保する。大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却。製品ライフサイクル全体での環境負荷低減、食品ロス削減、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現を目指す。
13. 気候変動に具体的な対策を
気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。パリ協定(産業革命前比1.5℃上昇抑制)の達成に向け、温室効果ガス削減、再エネ導入、気候変動適応策が急務。すべてのSDGsの基盤となる目標。
14. 海の豊かさを守ろう
持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する。海洋プラスチック汚染、乱獲、海洋酸性化などへの対策。日本は海洋国家として責任が大きい。
15. 陸の豊かさも守ろう
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。森林破壊、生物種の絶滅が深刻化している。
16. 平和と公正をすべての人に
持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する。紛争、暴力、汚職、人身売買などへの対策。法の支配の確立。
17. パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。政府、企業、NGO、市民社会など、あらゆる主体の協働が不可欠。資金、技術、能力構築などの支援も含む。
これら17の目標は相互に関連しており、一つの取り組みが複数の目標達成に貢献することも多くあります。
SDGsの革新性
SDGsは、これまでの開発目標と違う部分があります。
誰一人取り残さない(Leave No One Behind)
先進国も含めた全ての国が当事者です。日本でも子どもの貧困、ジェンダー格差、過疎化など解決すべき課題が山積みになっています。
経済・社会・環境の統合的アプローチ
17の目標は相互に関連しており、それぞれ対立構造にさせるのではなく、両立させる「持続可能な発展」を目指しています。
マルチステークホルダー・パートナーシップ
政府だけでなく、企業、NGO、市民社会、学術機関など、あらゆる主体の参画を前提としています。一言でいうと「みんなで協力しないと解決できない問題を、立場の違う人たちが集まって一緒に取り組むこと」です。
なぜ技術士にSDGsの視点が必要なのか?
技術士法では技術士に「公益確保の責務」が課されています。
公益とは、「人々の安全」と「環境」のこと。つまり、SDGsが目指す「持続可能な社会」そのものです。
技術者の仕事は、目の前の問題を解決するだけでは不十分です。その解決策が10年後、20年後の社会や環境にどんな影響を与えるのか——そこまで考えて判断することが求められています。
そのため、SDGsの視点を持つことが、技術士としての責任を果たすための必須条件になっているのです。
SDGsの勉強法と答案への盛り込み方
実際に、どう勉強していくと良いかみていきましょう。
問題文でどう表現されているかを知る
令和元年度:問題文に「SDGs」と明記
令和2年以降:「持続可能性」「カーボンニュートラル」など関連ワードで出題
設問(4)で「社会の持続可能性の観点」が定型化
令和元年度の必須科目Ⅰでは、問題文に「SDGs(持続可能な開発目標)」と明確に記載されて出題されました。
令和2年度以降は、SDGsという言葉そのものよりも「持続可能性」「カーボンニュートラル」「循環型社会」といった関連ワードで出題される傾向が強くなっています。
また、設問(4)では「業務遂行において必要な要件を、技術者倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ」という形式がほぼ定型化しており、ここで持続可能性について論述することが求められています。
キーワード整理に活用する
キーワード整理においては、
●過去問の傾向把握に使う→どんなテーマが出やすいか知る
●自分の答案作りに使う→自分の業務と結びつけて準備
●論述パターンの参考に使う→答案の表現方法を学ぶ
最終的には「自分の専門技術をどう社会に貢献させるか」を自分の言葉で語れることが重要です。
SDGs17個全部を詳しく覚える必要はありません。自分の専門分野に関係する目標だけ理解しましょう。また、SDGs目標番号を答案に書いたり丸暗記する必要もありません。
専門分野別のSDGs関連キーワード整理(一例)
機械部門
- DX推進、フロントローディング、サプライチェーン再構築
- 生産自動化、技能伝承、デジタル人材育成
- カーボンニュートラル、循環型社会
建設部門(実際の出題)
- インフラ老朽化(R3)、カーボンニュートラル(R4明記)
- コンパクトシティ(R5)、持続可能な生活圏(R6)
- 防災・国土強靭化、建設リサイクル
環境部門
- グリーンリカバリー、気候変動対策
- 循環経済、生物多様性保全
電気電子部門
- 再生可能エネルギー、スマートグリッド
- 省エネ技術、DX・IoT
自分の業務経験をSDGsと結びつける
●担当した業務
●解決した課題
●使った技術
●「使った技術が持続可能な社会に貢献するか」を説明できればOKです。
あくまで、専門技術の不快論述が最優先です。SDGsは「社会的意義」を示すツールでしかないことを覚えておきましょう。
技術士倫理綱領をベースに、設問(4)の骨格を作っておく
1.技術士倫理綱領(2023年改訂版)を理解する
特に重要な3点
1. 公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する
2. 地球環境の保全等、将来世代にわたって
持続可能な社会の実現に貢献する
3. 継続的な資質向上(CPD)に努める
2.過去5年分の設問(4)の問われ方を確認する
●令和元年〜令和6年:ほぼ毎年「技術者倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ」
→この問いに対して、上記の倫理綱領3点を盛り込めば対応可能
3.自分の専門分野での表現を考えておく
ここで重要なのは、倫理綱領を「丸暗記して書き写す」ことではなく、「自分の専門分野において、その倫理原則がどう具体化されるか」を言語化しておくことです。
設問(2)(3)で提案した解決策に対して、どのような倫理的配慮が必要かを、あらかじめ自分の専門用語で表現できるよう準備しておくとよいでしょう。
倫理綱領を参考に書くパターン
技術者倫理の観点から、以下の要件を遵守する。
第一に、公衆の安全、健康及び福利を最優先し、 〇〇において△△を徹底する。
第二に、将来世代にわたる持続可能性の確保のため、 □□による環境負荷低減に取り組む。 第三に、継続的な資質向上に努め、 最新の◇◇技術の習得と適用を図る。
専門技術の社会的意義から書くパターン
〇〇(自分の専門技術)を実践するにあたり、 以下の観点から持続可能な社会に貢献する。 環境面:△△により環境負荷を低減し、 気候変動対策に寄与する。
社会面:□□により安全性を確保し、 公衆の福利を実現する。
技術面:継続的な技術研鑽により、 ◇◇の高度化を図る。
4.過去問3問で実際に書いてみる
設問(4)だけ書く練習
- 令和元年機械部門の(4)を書く
- 令和4年建設部門の(4)を書く
- 令和6年自分の部門の(4)を書く
また、これは丸暗記するべきものではなく、あくまで「骨格の整理」のための勉強法と捉えるとよいでしょう。当然ですが問題によって倫理的論点は変わります。
過去問演習を通じて、「公衆の安全・健康・福利の優先」「持続可能な社会への貢献」「継続的な資質向上」という3つの柱を、自分の言葉で自然に表現できるようになれば、どのようなテーマが出題されても対応可能な準備が整ったと言えるでしょう。
まとめ
技術士二次試験でSDGsは令和元年度以降ほぼ全部門で頻出しており、 設問(4)で「技術者倫理、社会の持続可能性の観点」として定型化しています。
17目標全てではなく自分の専門分野に関連する目標を理解しましょう。
技術士倫理綱領の3本柱(安全優先・持続可能性・継続研鑽)を軸に、自分の言葉で具体的に表現できるよう準備するため、「骨格」の整理をするのがベストです。







