目次
~白書という名の迷宮で遭難しないために~
プロローグ:情報の海で溺れるワトソン
~坂戸市ベイカー街221B。暖炉の火が静かに燃える深夜~
部屋の床が見えないほどに、分厚い書籍や雑誌が散乱していた。 その中心で、ワトソン博士が頭を抱えている。まるで難解な暗号に囲まれた遭難者のようだ。
ワトソン博士 「ダメだ、ホームズ。もう限界だよ。 技術士試験の『必須科目(Ⅰ)』と『選択科目(Ⅲ)』の対策をしようと思って資料を集め始めたんだが……。 国土交通白書にエネルギー白書、ものづくり白書、それに学会誌や専門誌。読むべきものが多すぎて、何が重要なのかさっぱり分からない。 これを全部暗記するなんて、人間の所業じゃないぞ!」
シャーロック・ホームズ (パイプをくゆらせ、散乱した資料の山を冷ややかに見下ろす) 「君は相変わらず、無駄な努力が好きだね、ワトソン君。 君は今、砂金を探すために、砂漠の砂を全て顕微鏡で見ようとしている。そんなことをしていたら、試験当日までにミイラになってしまうよ。 必要なのは『全読』ではない。『捜査対象(科目)』に応じた『証拠(ネタ)』の選別だ」
ワトソン 「選別だって? どちらも同じ『技術士試験』じゃないか」
ホームズ 「そこが君の誤りだ。 『必須科目(Ⅰ)』と『選択科目(Ⅲ)』では、求められる『視点の高さ』が決定的に違う。 違う魚を釣るのに、同じ餌を使ってどうするんだ? 今夜は、情報の海で溺れないための『資料の探し方・読み方の極意』を授けよう」
第1の謎:その資料は「望遠鏡」か「虫眼鏡」か?
ホームズ 「まず、資料を探す前に、自分が『誰』になりきって書くべきかを整理したまえ」
| 科目 | あなたの立場 | 視点(ツール) | 探すべき情報 |
| 必須科目(Ⅰ) | 国・省庁の役人 | 望遠鏡(俯瞰) | Why(なぜやるのか)What(何を課題とするか) |
| 選択科目(Ⅲ) | 現場の責任者 | 虫眼鏡(具体) | How(どうやって解決するか)Risk(どんな副作用があるか) |
ホームズ 「多くの受験生が失敗するのは、この視点を混同するからだ。 例えば、選択科目(Ⅲ)で『カーボンニュートラルが重要だ』といった総論(望遠鏡の話)ばかり書いてしまう。 逆に、必須科目(Ⅰ)で『ボルトの締め付けトルク管理』のような各論(虫眼鏡の話)をしてしまう。 これでは評価されない」
ワトソン 「なるほど。立場によって、手にするべき資料が違うということか」
第2の謎:必須科目(Ⅰ)のネタは「大義名分」にある
ホームズ 「では、**必須科目(Ⅰ)の捜査から始めよう。ここで問われるのは、技術的な細部ではなく、『社会的な背景』や『喫緊の課題』**を正しく認識しているかどうかだ」
ワトソン 「具体的には何を読めばいい?」
ホームズ 「各省庁の『白書』と『基本計画』だ。 ただし、全部読む必要はない。『第1部』や各章の『冒頭(総論)』だけを読みたまえ。そこに国としての『大義名分』が書いてある」
【令和7年度の証拠品】
- 建設部門 必須Ⅰ-1:「担い手3法」の改正
- ホームズの視点: これは個別の現場の話ではない。建設業界全体の「働き方改革」や「処遇改善」に関わる制度的な話だ。
- 検索ワード: 「担い手3法 改正 概要」「建設業 働き方改革 ポイント」
- 電気電子部門 必須Ⅰ-1:エネルギーと情報のネットワーク
- ホームズの視点: 「白書引用不可」という条件があったとしても、背景にあるのは「カーボンニュートラル」や「DX」という社会要請だ。
ホームズ 「必須科目用のノートには、『少子高齢化で〇〇が不足している』『激甚化する災害に対し〇〇への転換が必要』といった、主語の大きな課題設定だけをストックしていくんだ」
第3の謎:選択科目(Ⅲ)のネタは「泥臭い現場」にある
ホームズ 「次は選択科目(Ⅲ)だ。ここでは、綺麗な総論は役に立たない。 試験官が求めているのは、『で、具体的にどうやるの? その時どんなトラブルが起きるの?』という技術的なリアリティだ」
ワトソン 「白書じゃダメなのか?」
ホームズ 「白書だけでは薄すぎる。読むべきは、業界専門誌(日経コンストラクション、電気評論など)や、各学会の**『ガイドライン』『手引き』だ。 特に重要なのは、『失敗事例』と『留意点』**という言葉だ」
【令和7年度の証拠品】
- 機械部門(機械設計)Ⅲ-2:製造業のDX
- ホームズの視点: 単に「AIを入れました」では通用しない。「古い設備のアナログデータをどうデジタル化するか(レトロフィット)」「熟練工のカン・コツをどう形式知化するか」という、泥臭い手順が必要だ。
- 検索ワード: 「製造業 DX 事例 失敗」「IoT導入 現場 課題」
- 電気電子部門(電気応用)Ⅲ-1:蛍光ランプのLED化
- ホームズの視点: 「水銀規制でLEDにする」のは当たり前だ。現場で困るのは「重量が変わる場合の耐震性」や「既存調光器との適合性」だ。そういった実務上の障壁を探すんだ。
- 建設部門(都市計画)Ⅲ-2:オールドニュータウン再生
- ホームズの視点: 法制度だけでなく、「住民合意形成の具体的ツール」や「既存インフラの老朽化対策」など、実行段階のノウハウが必要になる。
ホームズ 「『A工法を採用したが、Bという問題が起きたため、Cという対策をとった』。 この**『B(新たなリスク)』と『C(技術的対応策)』**のセットこそが、合格論文の核心(コア)になるのだよ」
第4の謎:白書を「二刀流」で使いこなせ
ワトソン 「待ってくれホームズ。専門誌やガイドラインまで買い揃える金はないぞ」
ホームズ 「安心したまえ。実は『白書』一冊あれば、ⅠとⅢの両方の対策が可能だ。読み方を変えるだけでいい」
【白書の二刀流・読解術】
| 読み取る箇所 | **必須科目(Ⅰ)**用 | **選択科目(Ⅲ)**用 |
| 注目する場所 | 本文の導入部、総論、グラフ | コラム(囲み記事)、写真付き事例紹介 |
| 拾う情報 | 背景、目的、数値データ | 固有技術名、工法名、適用条件、効果 |
| 思考プロセス | 「国はなぜこれを進めるのか?」 | 「現場でこれを導入したら何が困るか?」 |
ホームズ 「例えば、国土交通白書に『i-Constructionの推進』が書かれているとする。 本文からは『生産性を20%向上させる』という政策目標(Ⅰのネタ)を拾う。 そして、端っこにあるコラムからは『点群データのノイズ処理技術』や『UAVの飛行承認手続き』といった実務手順(Ⅲのネタ)を拾うんだ。 これで一冊の白書から、骨と肉の両方を得ることができる」
エピローグ:知識の「整理整頓」
ワトソン 「なるほど……。私は今まで、情報の洪水の中でただ闇雲に泳いでいただけだったんだな。 『政策(Ⅰ)』を探しているのか、『現場技術(Ⅲ)』を探しているのか。それを意識するだけで、こんなに視界がクリアになるとは」
ホームズ 「その通りだ。 資料集めは、探偵の証拠集めと同じだよ。目的のない捜査は、時間をドブに捨てるようなものだ。 さあ、ワトソン君。その山積みの資料を『望遠鏡』と『虫眼鏡』で仕分けしたまえ。 そうすれば、合格への道筋(ロードマップ)が、霧の中から浮かび上がってくるはずだ」
【まとめ】今日からできるアクションリスト
読者の皆様、ホームズの解説はいかがでしたか? 最後に、明日からの学習に直結する具体的なアクションをまとめました。
1. 必須科目(Ⅰ)の対策:リストアップ
- 読むもの: 各省庁の白書「第1部(総論)」、骨太の方針。
- やること: 業界全体の課題(人手不足、環境、防災、DXなど)を5つリストアップし、それぞれの「背景(数値データ)」と「国の目標」をノートに書き出す。
2. 選択科目(Ⅲ)の対策:リスク収集
- 読むもの: 専門誌のバックナンバー、学会のガイドライン(特に目次と留意事項)。
- やること: 成功事例よりも「失敗事例(苦労話)」を探す。「うまくいった話」よりも「直面したトラブルと対策」の方が、論文の点数になる。
3. 検索のコツ
- Ⅰ用: 「〇〇白書 概要」「〇〇基本計画 ポイント」
- Ⅲ用: 「〇〇工法 課題」「〇〇導入 失敗事例」「〇〇ガイドライン 留意点」
闇雲に読むのではなく、「今、自分はどちらの科目の武器を磨いているのか?」を常に意識してください。






