ホームズの推理講義:「必須Ⅰ」と「選択Ⅲ」の決定的違いとは?

埼玉県坂戸市ベイカー街221B。霧の立ち込める朝~

ワトソン博士 (答案用紙を手に、頭を抱えている) 「ホームズ、私はもうお手上げだ。技術士試験の論文添削をしているんだが、どうも不可解な現象が起きている。 この受験生の答案は、文章も上手いし、最新のDX技術にも詳しい。知識は十分だ。 それなのに……なぜか評価がB(不合格)止まりなんだ。一体何が足りないというんだ?」

シャーロック・ホームズ (バイオリンの弓を置き、答案用紙を覗き込む) 「ふむ。この答案の作者は、非常に優秀な技術者だね。だが、致命的なミスを犯している。 彼は、『自分が今、どの舞台に立っているか』を分かっていないのだよ」

ワトソン 「舞台だって?」

ホームズ 「そうだ。彼は『必須科目Ⅰ』の問題なのに、現場監督のような細かい工法の話をしている。 逆に、『選択科目Ⅲ』の問題なのに、政治家のように『法整備が必要だ』と演説している。 ワトソン君、これは知識の問題ではない。『視点の混同』という名の病だ。 今日はこの、多くの受験生が陥る『必須Ⅰと選択Ⅲの書き分け』の謎を解き明かそうじゃないか」

第1の謎:構造が語る「役割」の違い

ホームズ 「まず、この2つの科目の構造的な違いを見てみたまえ。これが、試験官が求めている『役割』の決定的な証拠だ」

項目必須科目Ⅰ選択科目Ⅲ
対象範囲建設部門全体(社会インフラ全般)選択科目(施工計画、河川など専門分野)
あなたの立場技術統括者・経営層プロジェクト責任者・現場の長
設問構成(1)~(4) ※(4)で「倫理・義務」が問われる(1)~(3) ※「技術的解決」で完結する
視座(高さ)社会・経済・環境(マクロ視点)QCDSE・現場・具体性(ミクロ視点)

ワトソン 「なるほど、表にすると一目瞭然だ。 必須Ⅰには設問(4)があるが、選択Ⅲにはない。これが意味するものは何だ?」

ホームズ 「『倫理の有無』だよ。 必須Ⅰでは、『その技術を使うことが、社会や次世代にとって本当に正しいか?』という高次の判断(技術者倫理)が問われる。だからテーマも『防災』『担い手確保』など、国レベルの課題になる。 一方、選択Ⅲには倫理の設問がない。つまり、抽象論よりも『目の前の困難な現場条件を、君の専門技術でどう打破するか』という実務能力が最優先されるのだ」

【事件ファイルA】必須科目Ⅰの場合

(テーマ:建設産ワトソンの解答(B評価): 「現場の人が足りないから、ICT建機を使って自動化します」

ホームズの解答(A評価): 「視点: 私は建設業界のリーダーである。 課題: 単なる人手不足ではなく、『人口減少による産業構造の維持困難』や『技能継承の断絶』と捉える。 解決策: 個別の機械導入ではなく、『BIM/CIMを用いたデータプラットフォームの構築』や『業界横断的なサプライチェーンの最適化』という仕組みを提案する。 倫理: 『次世代への技術継承』や『持続可能な社会基盤の確保』に言及する」

【事件ファイルB】選択科目Ⅲ(施工計画)の場合

(テーマ:市街地での難工事・環境制約)

ワトソンの解答(B評価): 「国が法整備を進め、DX導入補助金を増やすべきだ」

ホームズの解答(A評価): 「視点: 私はこの現場を預かる所長だ。 課題: 『騒音・振動の抑制』『第三者災害の防止』『限られた工期』など、具体的かつ技術的な制約を挙げる。 解決策: 『ICT建機による自動施工』『プレキャスト化による現場作業低減』『リアルタイムモニタリングによる安全管理』など、具体的技術(工法)を提示する。 注意点: 『法整備』などという他力本願な策は書かない。自分がコントロールできる技術で勝負する」

ワトソン 「おお……! 同じDXでも、必須Ⅰでは『仕組みと制度』を語り、選択Ⅲでは『工法と技術』を語るわけか」

ホームズ 「その通り。キーワードの使い分けも重要だ。このリストを記憶しておきたまえ」

キーワード必須科目Ⅰ(総監的視点)選択科目Ⅲ(実務的視点)
DX・情報データプラットフォーム、社会基盤データICT施工、3次元モデル活用、センサー計測
安全レジリエンス、国土強靭化、リスク広報労働災害防止、公衆災害防止、安全設備
人・組織多様な働き方、ダイバーシティ、技術継承熟練工不足対応、省人化施工、作業効率向上

第3の謎:令和8年改訂を見据えた「+α」の証拠

ワトソン  「だいぶ見えてきたぞ。しかしホームズ、さらに高評価を狙うための『隠し味』はないのか?」

ホームズ 「ふふっ、欲張りだね。いいだろう。 現在(令和7年・6年)の試験でも、試験委員は既に『新しいコンピテンシー(令和8年適用)』を意識している。 以下の2点を盛り込めば、君の答案は輝きを増すだろう」

1.「データ活用」の明記(問題解決)

  • 必須Ⅰ: 政策決定のためにデータをどう使うか(データ駆動型行政)。
  • 選択Ⅲ: 品質のばらつきを抑えるために、どう定量的データで管理するか。
  • どちらも「勘」ではなく「データ」で語るのだ。

2.「ステークホルダー」との協働

必須Ⅰ: 国民、行政、他産業など、広い関係者との合意形成。

選択Ⅲ: 近隣住民、協力会社、職人など、現場に関わる人々との調整。

エピローグ:試験当日の「帽子」のかぶり方

ホームズ 「最後に、受験生諸君に最高のアドバイスを贈ろう。 試験会場で問題用紙を開いた瞬間、心の中で『帽子』をかぶり替えるんだ」

必須科目Ⅰを開いたら…… シルクハットをかぶり、「私は今、日本の建設部門全体を背負う技術統括責任者だ」と自分に言い聞かせろ。

選択科目Ⅲを開いたら…… ヘルメットをかぶり、「私は今、この困難なプロジェクトを完遂させる現場のプロフェッショナルだ」と覚悟を決めろ。

ワトソン 「なるほど! その『視点の切り替え』こそが、合格への鍵というわけだな」

ホームズ 「そうだ。知識量は同じでも、帽子の選び方一つで、評価はAにもBにもなる。 さあ、ワトソン君。君の添削も、まずはその『帽子』が合っているかどうかの確認から始めたまえ」

【重要】本日の捜査報告書(まとめ)

読者の皆様、ホームズの講義はいかがでしたか? 物語を楽しんだ後は、以下の「合格のための極意リスト」をスクリーンショットなどで保存し、試験直前に見返してください。

1. 役割の完全区別

必須科目Ⅰ(必須)

  • 立場: 技術統括者、経営層、行政の長
  • 視点: マクロ(国・社会・環境)
  • NGワード: 「特定の工法のみ」「現場の細かい工夫」「自分の専門外への無関心」

選択科目Ⅲ(選択)

  • 立場: プロジェクトマネージャー、現場代理人
  • 視点: ミクロ(現場・QCDSE・具体性)
  • NGワード: 「法整備が必要」「補助金の拡充」「行政への要望」(※他力本願は減点)

2. コンピテンシーの違い

必須Ⅰで問われるのは「倫理観」と「持続可能性」

技術を使うことが、未来の社会にとって正しいかを論じる。

選択Ⅲで問われるのは「問題解決能力」と「専門技術」

困難な条件下で、いかに技術を駆使して完遂させるかを論じる。

3. 合格へのアクション

必須Ⅰを書くとき:

主語を大きくする。「我が国の建設産業は~」「社会インフラ全体は~」

選択Ⅲを書くとき:

主語を具体的にする。「本工事においては~」「対象とする現場では~」

この「視点の切り替え」さえ間違えなければ、あなたの持っている知識は必ずA評価として輝きます。 自信を持って、それぞれの帽子をかぶりこなしてください。

この記事を書いた人

匠 習作

代表:匠 習作(たくみ しゅうさく・本名は菊地孝仁)
開講10年の歴史/総受講者数650名以上/web授業の先駆者

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