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―『学び方の学び方』を技術士二次試験に活かす―
技術士二次試験の論文対策では、多くの人が「時間をかけているのに成果が出ない」「文章力が伸びない」「書いても評価が上がらない」と悩む。だが、問題の本質は“努力の量”ではない。オークレーとシーヴェは、学習成果を決めるのは**「取り組み方」**だと明言している。つまり、「何をどうやって学ぶか」が成果を分ける。
本書『学び方の学び方』は、神経科学と認知心理学を背景に、「頭がどのように学ぶのか」を明らかにする。これを技術士試験に当てはめれば、「知識を覚える」「構成を練る」「文章を書く」その一つ一つの学習が、脳の構造に沿った合理的な方法で行えるようになる。
① 集中モードと拡散モード ―「考える」と「離れる」を往復せよ
技術士の論文学習では、集中して書く時間と、意識的に離れて考える時間の両方が欠かせない。オークレーはこれを「集中モード」と「拡散モード」と呼ぶ。集中モードは問題に没頭し、細部を詰める時間であり、拡散モードはアイデアが脳内でゆるやかにつながる時間である。
人間の脳は、常にこの2つのモードを切り替えて動いている。たとえば「課題設定」「観点と課題の構成」「答案構成図の作成」に集中したあと、いったん散歩に出たり、別の作業を挟むことで脳は情報を整理し、無意識のうちに答えを導く。試験直前に急に良いアイデアが浮かぶのは、拡散モードの成果だ。
集中と拡散の往復こそが、論文構成力を高める最大のコツである。

② ポモドーロ・テクニック ―「25分×4セット」で書く集中力を鍛える
本書の冒頭で紹介される「ポモドーロ・テクニック」は、技術士試験対策にも極めて有効だ。25分集中+5分休憩というリズムを4回繰り返すだけで、怠け癖を防ぎ、集中力を維持できる。
人の脳は「苦手なことを始める瞬間」に痛みを感じる。だが25分と区切ると、その心理的ハードルが下がり、行動に移しやすくなる。論文学習の最大の敵は「書き出せないこと」だ。ポモドーロを使えば、“とりあえず25分だけ書く”という軽いスタートで継続できる。
また、休憩時にはスマートフォンを触らず、散歩やストレッチなどで脳を休めることが推奨される。脳は休息中に記憶を整理し、アイデアを結びつけるため、休憩そのものが学習効率を高める行為となる。
③ 思い出す学習(リトリーバルプラクティス) ― 書かずに覚えるな、書いて思い出せ
技術士試験の学習では「インプット量」よりも「アウトプット頻度」が重要だ。オークレーは、記憶を定着させる最強の方法として「思い出す練習(リトリーバルプラクティス)」を挙げている。
参考書を何度も読むだけでは脳は受動的で、すぐに忘れる。だが、問題文を見て「観点・課題」「対策」「理由付け」を自分の言葉で書き出すことで、脳内の記憶ネットワークが再構築される。これは単なる暗記ではなく、“再構成”による長期記憶化である。
論文演習を「書く」だけで終わらせず、「翌日にもう一度何も見ずに思い出す」「一週間後に再度書き直す」といった周期的復習を行えば、構成パターンが自然に身体化する。
④ 内在化と直感 ―「構成を考えずに書ける」状態をつくる
熟練した受験者は、設問文を見た瞬間に「課題→対応策→効果」の筋道を直感的に描ける。この“直感”こそが、オークレーの言う「内在化」である。
内在化とは、繰り返し練習によって知識を意識せず使えるようにする過程だ。最初は「どの観点で課題を整理するか」を意識的に考えなければならないが、何十回と演習を重ねるうちに、構成が無意識に浮かぶようになる。これが「思考の自動化」であり、試験本番での即応力を生む。
彼女はこれを「神経回路の強化」と説明している。使った神経経路は太くなり、使わない経路は衰える。だから、論文練習では「書くこと」を恐れず、繰り返すことが脳の構造そのものを変える行為だと理解すべきだ。
⑤作業記憶の限界を意識せよ ― メモ化と図式化で思考を支える
オークレーは、人の作業記憶(短期的に保持できる情報量)は非常に限られていると指摘する。人は同時に7±2項目しか保持できない。つまり、設問文・キーワード・論理展開・事例を同時に頭に置こうとすると、必ず破綻する。
この限界を超えるための手段が「ノート化」や「構成図の作成」である。技術士の論文では、「設問分解→観点整理→論理構成→具体例」というプロセスを紙に可視化しながら進めると、思考の負荷を減らせる。特に答案構成図をポモドーロ1回分で仕上げる習慣をつけると、試験本番での思考スピードが劇的に上がる。

⑥ メタ認知 ―「自分の学び方」を俯瞰せよ
オークレーが最終章で強調するのが、**メタ認知(自分の学習を客観的に観察する力)**である。技術士試験でも、答案が評価されない理由を「時間が足りなかった」「表現が難しかった」で片づけてはならない。どの段階の理解が浅かったのか、どの練習法が効果を生んでいないのかを冷静に見つめることが必要だ。
メタ認知の実践とは、「計画→実行→振り返り」のPDCAを、毎回の論文練習に組み込むことだ。特に「なぜその構成で書いたか」「どの表現が採点者に伝わらなかったか」を自問し、改善サイクルを回す。この姿勢が、知識の定着だけでなく、思考の成熟をもたらす。
後編では、「自己動機づけ」「習慣化」「失敗との向き合い方」「試験本番へのメンタル戦略」など、オークレーが説く“長期的学習の心理的マネジメント”を中心に解説します。
『学び方の学び方』アチーブメント出版 (2021/2/1)








