合格率だけでは分からない「技術士 難易度」の正体
2026年8月24日改定更新
技術士試験について調べると、「難関資格」「合格率が低い」といった説明をよく目にします。
確かに、技術士第二次試験の合格率は高くありません。
しかし、技術士試験の本当の難しさは、合格率という数字だけでは説明できません。
司法試験や大学入試のように、膨大な知識を覚えなければならないから難しい、という試験でもありません。
技術士第二次試験では、実務経験を積んだ技術者が、
自分の持っている専門知識を使い、問題を分析し、課題を設定し、解決策を考え、それを限られた時間と文字数の中で論理的に説明する能力
を問われます。
つまり、
「知っていること」と「試験で評価される答案を書けること」は違う。
ここに技術士試験特有の難しさがあります。
では、具体的に何が難しいのでしょうか。
1.専門知識があれば合格できる試験ではない
技術士第二次試験を受験する人の多くは、それぞれの分野で長年実務を経験してきた技術者です。
建設。
機械。
電気電子。
上下水道。
農業。
情報工学。
環境。
それぞれの現場で専門的な仕事をしてきています。
ですから、受験者の多くは決して「技術を知らない人」ではありません。
それでも不合格になります。
なぜでしょうか。
大きな理由の一つが、
専門知識そのものではなく、その知識をどう使うかまで問われるからです。
例えば、ある社会問題について複数の課題を挙げる問題が出題されたとします。
知っているキーワードをたくさん書けばよいわけではありません。
問題文の条件を読み、
どのような観点から考えるのか。
何を課題として設定するのか。
なぜそれが課題なのか。
どの解決策が有効なのか。
実施した場合にどのような新たなリスクが生じるのか。
そこまで一貫して考える必要があります。
知識は必要です。
しかし、知識は答案を作るための「材料」にすぎません。
材料をたくさん持っていることと、料理を完成させられることは別です。
技術士試験も同じです。
2.「何を書けばよいか」ではなく「何を問われているか」を読む必要がある
技術士試験では、問題文を読む力も重要です。
受験者がよく陥るのが、
自分が知っていることを書く
という状態です。
しかし試験委員が評価するのは、
設問に答えているかどうか
です。
例えば、
「課題を挙げよ」
と求められているのに、背景説明ばかりを書く。
「最も重要な課題を選び、その理由を述べよ」
と求められているのに、三つの課題を同じ重さで説明する。
「新たに生じるリスクと対策を述べよ」
と求められているのに、もともと存在していたリスクを書く。
こうした答案は、専門知識が間違っていなくても評価されにくくなります。
技術士試験では、
問題文の要求事項を正確に読み取り、それぞれに対応した答えを書く
必要があります。
これは暗記学習だけでは身につきません。
過去問を読み、問題文を分解し、
「この設問では何を答えるのか」
を考える訓練が必要になります。
3.論文試験なので「考えを文章にする力」が必要になる
技術士第二次試験の大きな特徴は、記述式の試験であることです。
頭の中で答えが分かっていても、それを答案として表現できなければ得点にはなりません。
ここが多くの技術者にとって難しいところです。
普段の仕事では、
図面。
表。
計算書。
写真。
CAD。
プレゼン資料。
口頭説明。
などを使って意思疎通できます。
しかし試験では、限られた答案用紙の中で、自分の考えを文章として説明しなければなりません。
しかも、
結論。
理由。
因果関係。
具体策。
効果。
リスク。
などを短い文章で整理する必要があります。
文章量を増やせばよいわけでもありません。
知っている専門用語を並べても、論理がつながっていなければ評価されません。
技術士試験で必要なのは、小説のような文章力ではありません。
技術者として、考えたことを第三者が理解できる形に構造化する力
です。
4.「課題」を設定すること自体が難しい
技術士試験では、「課題」という言葉が頻繁に使われます。
ところが、この課題設定が意外に難しいのです。
例えば、
「人手不足」
「老朽化」
「DX」
「脱炭素」
と書けば、それだけで課題になるわけではありません。
これらは社会状況やテーマである場合もあります。
技術者としては、
その状況によって何が問題になっているのか。
そして、
何を改善すれば状況を変えられるのか
まで具体化する必要があります。
例えば、
「人手不足の観点」
だけでは抽象的です。
そこから、
「少人数でも安定して維持管理できる体制を構築する」
など、技術的に解決可能な形まで落とし込む必要があります。
つまり技術士試験では、
問題を与えられて解くだけでなく、解くべき問題そのものを設定する能力
も問われます。
これが一般的な知識試験とは大きく異なる点です。
5.解決策を書くだけでは終わらない
技術者であれば、課題に対する解決策を考えることには慣れているでしょう。
ところが技術士試験では、
「この技術を導入する」
だけでは十分ではありません。
なぜその解決策なのか。
どう実施するのか。
どのような効果があるのか。
他の条件に悪影響はないのか。
そこまで考える必要があります。
例えばDXを進めれば、業務効率は高まるかもしれません。
しかし、
情報セキュリティ。
システム障害。
操作できる人材の不足。
初期費用。
既存システムとの互換性。
といった新たな問題が生じる可能性があります。
技術者として本当に重要なのは、
解決策の良い面だけを見るのではなく、その副作用まで考えたうえで判断すること
です。
だから技術士試験では、単純な「正解」を覚える勉強だけでは対応できません。
6.社会人が仕事をしながら受験する難しさがある
受験者の中心が社会人であることです。
学生時代の受験勉強とは条件が違います。
仕事があります。
残業があります。
出張があります。
家庭があります。
育児や介護をしている人もいます。
毎日決まった時間に勉強できるとは限りません。
しかも技術士第二次試験は、数日間勉強すれば対応できる試験ではありません。
専門知識を整理し、
過去問を分析し、
骨子を作り、
答案を書き、
修正する。
ある程度の期間、継続した学習が必要になります。
そのため、
試験内容そのものの難しさと、学習を継続する難しさが重なります。
「仕事が忙しくなって1か月ほとんど勉強できなかった」
ということも珍しくありません。
この点は、単純な合格率からは見えてこない難しさです。
7.本番では時間と疲労とも戦わなければならない
試験当日は、知識だけでなく時間管理も必要になります。
問題文を読む。
考える。
骨子を作る。
文章を書く。
見直す。
これらすべてを限られた試験時間の中で行います。
さらに、長時間にわたって手書きで答案を書き続けなければなりません。
試験前半では問題なく書けていても、後半になると集中力が落ちることがあります。
すると、
説明を省略する。
主語と述語が合わなくなる。
最初に決めた論理からずれる。
設問を読み違える。
といったミスが起こりやすくなります。
普段なら書ける答案でも、
本番で同じ品質を再現できなければ意味がありません。
したがって技術士試験では、知識や論文作成だけでなく、
試験時間の中で考え続け、書き続ける訓練
も必要です。
8.技術士試験が難しい本当の理由
ここまで整理すると、技術士試験の難しさは一つではありません。
知識を身につける。
問題文を読む。
課題を設定する。
解決策を考える。
リスクを評価する。
論理的な文章を書く。
時間内に完成させる。
そして、それらを仕事をしながら準備する。
これらを同時に求められるところに難しさがあります。
だから、
「技術士試験は難しいから、とにかくたくさん暗記しよう」
という対策では十分ではありません。
必要なのは、
知識を増やすことと、知識を使って答案を作ることの両方
です。
そしてもう一つ重要なのは、
自分がどこでつまずいているのかを知ること
です。
知識が不足している人。
課題設定が苦手な人。
解決策が具体化できない人。
文章構成が弱い人。
設問への対応を外してしまう人。
時間内に書き終わらない人。
受験者によって「難しい場所」は違います。
つまり、技術士試験の難易度を考えるとき、
単に、
「合格率が何%だから難しい」
と考えるだけでは不十分なのです。
何が難しいのかを分解し、自分の弱点に合った対策をする。
そこから、本当の試験対策が始まります。
では、実際の講師は「何が難しい」と考えているのか
ここまでは、技術士第二次試験の構造から、その難しさを整理してきました。
しかし、受験者を長く見ていると、同じ試験でも「難しい」と感じる場所は人によってかなり違うことが分かります。
そこでここからは、実際に受験指導を行っている講師が、
技術士試験のどこを難しいと考えているのか
を紹介します。
試験制度から見た難しさだけでなく、実際の受験者がどこでつまずくのか。
講師それぞれの視点から見ていきましょう。
技術士試験で躓き易いところを各講師が解説
筆記試験と口頭試験を合せると、合格率は概ね10%程度です。
つまり、10人中1人しか合格出来ない試験です。
とは言え、どんな試験でも同じですが何となく受験している方もいます。
上記の通り、申し込んでから受験しない人が20~25%もいます。
さらに、始めから諦めてなにも勉強しない方も一定数はいます。
受験する人は、二万数千人ですが、本気で勉強しているかたはその50~60%くらいではないかと思います。
Lock-On:二次試験講座でも、受講料を頂いて受講された方の30~40%程度は、添削をほとんど受けません。
通信教育ですから、添削を受けないのはなにもしないと言うことです。
動画講座は視聴していると思いますが、流石に講座を視聴するだけで、論文試験を突破するのは難しいのです。
確かに、視聴コースでも過去に数名合格されていますが、皆さん受験経験がある方です。
以下、Lock-On:二次試験講座の講師が、技術士試験の何が難しいのかをひと言ご説明します

以下、Lock-On:二次試験講座の講師が、技術士試験の何が難しいのかをひと言ご説明します

日比講師
技術士試験は、専門技術分野の知識確認をする試験ではありません。
科学技術が社会環境にどのような影響を与えるかを精緻に分析、解決課題を設定し、その解決プロセスについて受験者の経験と専門的知見を礎に解答することを要求しています。これは第三者に論理的にわかりやすく説明するコミュニケーション能力確認試験とも言えます。
技術士試験が難関試験である所以は、技術的課題解決の思考プロセスを的確かつ正確に表現するところにあります。
霜山講師
技術士試験の難しさについて
この試験の難しさは、自分自身の中にある色んなスキルを引き出せていないからだと思っています。自分の生業が何で、どんな技術を持っていて、それをどう使っているのか、自分自身で整理することが難しいからです。周囲もコンピテンシーと言って見たり、応用能力と言って見たり、課題解決能力と言ってみたり、惑わす用語ばかりです。正しいスキルの引き出し方があります。そしてそれは仕事の上で必ず活きてきます。


赤星講師
多くの受験生は技術士相応の実力なのに、技術士の称号が得られない。
それは、技術士試験への取り組みが間違っているからです。
技術士試験の難しさは、技術士の考えである技術士法の理解とその評価基準であるコンピテンシーを正しく表現する「国語力」です。
国語力は、社会や科学技術にどのように影響するかを業務の適正を図ってきた専門的学識をもって分析し、課題解決するプロセスを正しく伝えるコミュニケーション能力であり、継続した訓練が必要なのです。
広瀬講師
技術士の筆記試験になぜ合格できないのか?
筆記試験で合格できない大きな理由は、①論文執筆の練習不足、②設問で問われた内容を記述できていない、の2つだと考えます。
筆記試験では、設問に対して自分の持っている知識や考えを技術士として分かりやすく的確に文章で伝えることが求められています。そのため、論文執筆の練習により、論理的な論文構成や文章表現力を磨いてください。また、設問内容を「顧客からの要求事項」と考えると、要求事項に応えていない=実力不足となりますので、設問はしっかりと読んで解答するようにしましょう。


土屋講師
技術士2次試験はなぜ難しいか?
ポイントは3つ、1つ目は受験申込書に記載の業務内容の詳細を練らずに出願することが多く、口頭試験までにかなりの見直しが必要になること。
2つ目は筆記試験の論文作成には論理的な構成能力や題意に的確に応じる表現能力など、習得に鍛錬が必要とされること。
3つ目は口頭試験で自己の経験や能力をコンピテンシーに照らし合わせ表現することが求められるが、これも鍛錬が必要なこと。
これらのポイントを独学で、かつ短期に克服するのは容易ならざることでしよう。
信頼できる講師からアドバイスを受けることが合格の近道と考えます。

まとめ
概ね、同じような指摘になっているのが分かると思います。
私(匠)を含めてどの講師も一度は不合格の経験があります。
技術士を目指す皆さんは、上記の指摘を良く考えてください。
あなたが、技術士になるためのヒントになるはずです。
Lock-On:二次試験講座もあなたを応援します。
代表 匠習作


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